第6話: フロント・ダブルバイセップス!!!
──という掛け声と共に糞デカアホポポポ筋肉女がポーズを決めたら。
衝撃で資料室の床が砕け、その下のコンクリートが砕け、さらにその下に敷き詰められていた分厚い板も破壊された。
まさに、『大☆参☆事』、というやつである。
なんでポーズを取っただけで床どころかその下のコンクリまで砕けるのか……それを気にしても仕方がないことである。
『ポポポ……あの、本当に悪いと思っているから、本気パンチは止めてね……』
「ん? 拳じゃなくて、このお仕置きランマー(名無子パワー注入済み)で良い子になるまでプレスされたいって?」
『いえ、すみません、私が全面的に悪いのです、だからその分厚い工事機械を振り上げないでください、ごめんなさい』
そう、仕方がないことである。
別に、壊した事は問題では──いや、非常に大問題だが、不幸中の幸いというべきか。
今日は、日曜日なのだ。
加えて、連日の心霊現象で生徒たちが怖がってしまい、校内はとても静かだ。
教師たちも心霊現象を怖がって仕事を持ち帰っている。ちなみに、理事長も実はかなり怖がっていて、学校にはいない。
つまり、ドカンと派手な音を立てても、明日の月曜日までになんとかしてしまえば、バレる心配はないのである。
唯一の例外は守衛さんだが……あの人には、事前に校内でなんか物音がしても、気にせず入らないようにと厳命している。
というか、厳命しなくても、怖くて入らないだろう。
せいぜい、グルリと校内を外から見回して、窓ガラスとか割れていなかったら、それで問題無しである。
……業務放棄ではないか、と?
万が一、校内で不審な怪我人なり死者なりが出てみろ。
下手しなくても廃校まで導火線着火みたいな話になるぐらいなら、明らかに不審者の類が潜入したという方がまだ、マシなのだ。
なので、ひとまず、念押しするが、明日までは安心である。
言い換えれば、明日までになんとかしなければ、損害賠償一直線である。当然ながら、彼女に払える懐の温かさは無い。
いちおう、直す手段はあるのだ。
伊達に、『古き神』と融合したわけではない。スーパー神様的パワーにより、なんかこう良い感じの超常現象の果てに、元通りにする事は可能である。
……ただし、滅茶苦茶疲れる。
そして、そんな滅茶苦茶疲れる事をさせられるとなれば……彼女は、まさに般若のような形相になるのも、仕方がなかった。
額に血管をビキビキ浮き上がらせながら、重さが50kgにもなる転圧機を振り上げ、握力のせいでメキメキと持ち手が軋むのも、仕方ないことだし。
2m40cmにも達する長身ポポポ女が、ビクビクと肩を震わせながらも箒やら何やらで飛び散った瓦礫などの掃除を行うも仕方なく。
その横顔が、傍目にも分かるぐらい腫れ上がっているのも、致し方ない。まだ、首から上が繋がっているだけ、マシだと考えるべきである。
間違っても、ここで不満顔を見せてはならないから、糞デカポポポ女は真剣であった。
なんでかって、彼女……名無子という女(元・男)は、ヤル時はヤル。古き神すらドン引きしてしまうようなお仕置きを、普通にする。
たとえば、以前彼女が行ったお仕置きの一つとして、『安息』というものがある。
これは文字通り、強制的に安静な姿勢を取らせ、そのまま彼女の許可が下りるまで一切の身動きを封じる……というものだが。
これの何が恐ろしいって、本当にまったく何も出来なくなる。
そして、指一本まともに動かせず、必要でもないのに安静な体勢を取らせるということは……それすなわち、鍛え抜かれた筋肉を削ぎ落すということ。
そう、ポポポ女に対して特攻の、自らの筋肉が失われるという絶望。
己の命よりも愛おしい、鍛え抜いた筋肉が衰えていく様を、強く、強く、それはもう強く認識させ続けるという、対ポポポ女のためだけの拷問である。
曰く、『ポポポ……手足を落とされるよりも、臓腑をえぐられるよりも辛く、苦しい……人の心、無いの?』とこぼすぐらいなのだから、如何に恐れられているかが窺い知れるだろう。
同様に、『祠』に対しても本当にガチギレした時は、『古き神』が『も、もう少し、手心というものを……』と仲裁に入るぐらいに、えげつない事をする。
たとえば、祠に術を掛け、祠の生きがい(?)でもある、TSを奪ったりする。
つまり、祠がどれだけ頑張って男→女へのTSでニチャァしようにも、その度に術が発動し……男に戻ってしまう。
ただ防ぐのではない。
術が発動した途端、上書きする形で彼女の術が発動するから、祠がどれだけ頑張ろうと、どうにもならない。
しかも、時々だが、術が半端に成功して股間の生殖器だけが変化してそれ以外男とかいう、『ち、違う、我はそんな……!!』といった解釈違いを強制的に発生させられるという罠が仕込まれている。
これには、祠も戦々恐々。
なので、彼女が本気でキレかけている時は完全に空気に徹し、絶対服従とは言い過ぎだが、それでも過言ではないぐらいに……嵐が過ぎ去るのを待つのであった。
……。
……。
…………ちなみに、だ。
サラッと流されているが、どうして彼女は転圧機(ランマー)なんて所持している……というか、どうやって持って来たのかと言うと。
それは、アレだ。
霊能力的な不思議パワーによる、アイテムボックスとかいう能力を彼女は持っているから……で、なんで持っているのかと言うと、彼女が本気で除霊する時に使用するからだ。
──Q.ランマーを?
──A.幽霊だってパワーで勝つんだよ
どうやるかって、単純明快。
隠れ潜んでいるところから引きずり出した悪霊を、霊力を込めたランマーにてプレスしまくって押し潰すだけである。
この除霊方法、見た目がアレだが、効果は抜群である。
なにせ、どれほど凶悪な悪霊でも、どれだけ陰湿な怪異でも、初見時は『──えっ!?』と驚いて硬直し。
実際に除霊の段階に入れば、『う、嘘でしょ!? こんな除霊のしか──ぎゃあぁあああ!!』という具合なのだ。
これに比べたら、短刀で除霊するなんてのは優しさであり舐めプでしかなく。
今では、彼女がランマーなどを取り出した時点で、彼女を知る悪霊や怪異は一目散に逃げ出すぐらいに……っと、話が逸れたので戻そう。
『ポポポ……ねえ、この学校って地下とかあるの?』
「ん? いや、そんな話は聞いてないし、前任者の資料にも無かったけど……?」
とりあえず、散らばっていたゴミを一通り片付け、ある程度は分別してまとめた後。
作業の邪魔になるモノを廊下に出したり、あるいは必要なモノを室内に戻したり……そうしている時に、ふと、糞デカ大馬鹿ポポポ女は気付いた。
──アレ? なんか、地下へと通路が続いてんじゃね……っと。
最初は、瓦礫とか土砂とか木の床がまとめて落ちたうえに、鬼神の如くブチキレモードの彼女にビクビクしっぱなしで気付かなかったが……確かに、そこには階段があって。
その階段は地下へと確かに続いており……少なくとも、かなり深くまで続いているそれは、物置とかそういう類のスペースには見えなかった。
……。
……。
…………どうしよっか?
自然と、彼女たちは互いに顔(?)を見合わせた。
彼女としては、だ。
なんとなくだが、通路の向こうから『風』が出てくる感じがする。ふわふわと、溢れ出た……そんな感じで、緩やかに出てきているような。
正直、なんでよりにもよって、ここに……という気持ちが、ちょっとある。
解決の目途が立ちそうな気配がしてくるのはありがたいが、これで何も無かったら、その分だけここの修繕に時間が掛かり……最悪、徹夜を覚悟せねばならない。
まあ、放置して塞ぐわけにはいかないから、どちらにせよ徹夜せねばならないのだろうけど、だ。
糞デカポポポ女は、別にこの仕事がどうなろうが知った事ではなく、自らの筋肉を高みに導くためだけなので、彼女の指示に全面的に従う。
祠も、ただニチャァ……をするためだけに付いて来ただけで、ニチャァを邪魔するならば加勢するが、そうでないなら……という程度の認識でしかない。
……つまり、だ。
「よし、祠」
『は、はい……』
可及的速やかに仕事を完遂すれば、その分だけ早く修繕作業に取り掛かれる。
そう判断した彼女は、祠を掴み……ソレを、力いっぱい通路の向こう……暗闇の先へと投げたのであった。
ちなみに、現在の『祠』は適当にコピー用紙にて丸く作った感じなので、万が一当たっても怪我しない特別仕様である。
まあ、こんな通路に人が居る方がおかしいが、それも含めて万が一。
昨今は、隙あらば裁判沙汰にして金をせしめようとするヤツが多くて困り物である(名無子・主観)。
……。
……。
…………で、まあ、そうして、祠が戻って来るのを待つわけだが。
「……なんか、遅くね?」
『ポポポ……そうね、けっこう遅いわね』
「そんなに力いっぱい投げたつもりはないのだけど……」
『ポポポ……とんでもない剛速球だったけど?』
何時まで経っても戻ってくる気配がないので、次はコイツを投げるべきかなと彼女から見上げられた糞デカポポポ女が、ビクビク背筋を震わせた……その辺りで、ようやく祠が戻ってきた。
……だが、しかし。
祠は、無事ではなかった!
いったい、何者の手によるものなのか、コピー用紙で構成された丸い祠はベコベコに凹み、一部や破けていて、まるで何百回と壁に叩きつけられたかのような有様であった。
「ほ、祠……いったい、誰に壊されたんだ!?」
思わず、彼女は声を荒げる。
彼女の横で、『えっ!?』となんかビックリしている糞デカ筋肉長身女を尻目に、祠(というか、核)は……しみじみと、答えた。
『むむむ……あの先には、よく分からないやつがいた』
「よく分からないやつ?」
『男でもなく、女でもない……生き物なのかすら、分からなかった』
「それって、強いの?」
『よく分からない……ただ、どっちなのかが分からなかったので、撤退するしかなかった……』
「なるほど……とりあえず、ナニカが潜んでいるというのはわかった。少なくとも、こいつをボコボコにできるようなやつが……!」
『いや、それは投げられて壁とか床とか──』
「こういう時には、パワーで攻めるに限る!」
ごちゃごちゃうるさい祠をポイッと放り捨てた彼女は、アイテムボックスより……ガソリン携行缶を取り出した。
『ポポポ……え、初手でいきなり?』
「先手必勝! 交渉は上下関係を叩きつけてから行うに限る!」
その言葉と共に、からららら……っと蓋を外した彼女は、ガタンと傾け……独特の異臭を放つ可燃性の液体が、階段を伝って地下の暗闇の向こうへと流し込まれてゆく。
いったい何を……答えは簡単、燃やすのである。
『炎』というのは、古来より畏れられながらも、魔を祓う神聖な力として扱われていた、由緒正しき浄化の力である。
古今東西、邪悪な者が炎に焼かれて終わるという話は数多くあり、教訓として多くの命を奪うなんて話も数知れない。
炎というのはそれだけの力を秘めており、時には神すらも焼き殺すというのだから、けして馬鹿にしてはいけないのだ。
……こいつ、霊能力使わんのか?
もしも、この場に第三者が居たとしたら、そんな疑問を抱く人が出てくるやもしれない……だが、待ってほしい。
冷静に考えて、あの筋肉長身ポポポ腹筋シックスパック女や、女は絶対殺す祠が、悪戯こそするが命令に逆らわないような相手だということを忘れてはいけない。
そうして、じょろじょろ~っと。
1缶、2缶、3缶……合計100L分のガソリンを暗闇の向こうへと流し込んだ彼女は、次いで、神秘的パワーでガッチリとガードする。
この『ガード』は、物理的な防御だけではない。
神様的なアレでもあるので、ガソリンの爆発ぐらいはどうってことはない、炎は彼女にとってエネルギーなのである。
そうして、そうして、そうして、神秘的パワーによって、気化したガソリンごと地下通路の向こうへ行くよう誘導する。
途中、なんか白い人型のモヤっぽいのが暗闇の向こうから出てきたけど、蹴りを叩き込んで暗闇の向こうへ戻してやる。
『ポポポ……なんか、変なの居なかった?』
「知らん!」
それから、5分程。
その間、何度も白い人型のモヤが出てきたが、全て蹴りを叩き込んで地下通路の奥へと戻した後で……彼女は、無言のままにマッチに火をつけると。
大きく開いた地下の向こうへ、ポイッと投げ入れ──同時に、バリアを張って蓋をした。
──。
──。
────その、瞬間。
ビリビリビリ、と。
まるで、校舎全体が身震いしたかのように震えると共に……どこか遠いところより、精神に不調をきたしそうな悲鳴が聞こえた……が。
「……ヨシ! 行くぞ、おまえら!」
構うことなく、50kgを超えるランマーを掲げた彼女が、さっさと仕事を終わらせるために突撃する。
その後に、ムキッとポーズを決めたまま後に続く糞デカ筋肉女と、誰かに壊されてベコベコになった祠が、スーッと後に続いたのであった。
―――――――――――――――――
名無子 → パワータイプ
ポポポ → パワータイプ
祠 → 実はパワータイプ
なんてバランスが取れたチームなんだぁ……
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