次に行くダンジョンを○○で決めるロリコ・リコ【2124/07/02】

 

 ──東京都、大手町某所


 ダンジョン管理機関というものがある。

 国内に発生したダンジョンの特定、難易度の制定、配信活動におけるガイドラインの策定等。

 ダンジョンにおける面倒な部分の全てを受け持っているような機関のことを指している。

 突発的にダンジョンが出現して以降、急速に設立されたのがダンジョン管理機関であり、ここを中心に定められた案が、最終的に日本のダンジョンにおける政策の舵を切ることにもなる。

 魔力によって人間生活に幅が生まれた以上、力の使い方、運用方法を含めて統括する必要があった。でないと、持ち得る力で暴徒と化すものが現れるからだ。

 経済的な面、資源的な面、あるいは……。

 ダンジョンに関連する全てを管轄する機関とも言える。


 故に発足されたこの機関。

 その一室で二人の女性が見えていた。

 会議室だ。さながら個人面談、あるいは面接のように対面で座りあっている。

 壁際には液晶のモニターがある。電源が付いているようで、デスクトップが表示されている。


「私を呼んだ用ってなに? お姉ちゃん」


 一人は佐伯ポプラ。

 デビューしてから2年弱。主にダンジョン攻略配信や、配信上でイラストを描いたりする配信者だ。

 名が売れている現役女子大生のダンジョン配信者だ。

 個性的な詠唱を元に、特大の火力でモンスターを狩り尽くし、そしてそのモンスターを材料に料理を主に行っている。

 かつての炎上を乗り越えたこともあって再注目されたのを糧にしたこともあり、現在人気急上昇中でもある。


「久々にポプラの顔が見たかったんだ」


 片方はその姉だ。

 数年前までダンジョンを探索する冒険者兼配信者として活動していたが、現在は引退。

 その実力を買われてダンジョン管理機関に就職している経歴を持つ。

 仕事は仕事で割り切るため、本名が別にあっても活動者の名前として呼び進めるのも彼女の癖だ。

 足を組んで嘆息をつきながら、淡々と姉は会話を続けようとする。


「私もお姉ちゃんの顔が見れて嬉しいよ」


 ポプラは頬を緩める。

 姉は大学を卒業し、その傍らでダンジョン攻略に勤しんでいた。

 家族と過ごす時間も少なく、どちらかと言えばダンジョンに潜る中で共にした仲間といた時間の方が大きかったとも言える。


「でもそれだけじゃないでしょ? 用事があって呼んだんじゃないの?」


「ん、そうだ。はいこれ。昇格おめでとう」


 手渡されたのはダンジョンの冒険者として活動することのライセンスだ。

 名前の隣に輝くSの文字。現代日本において最高クラスであることを意味している。

 18歳から全国民に発行される。一番下がFで上がS。ダンジョン攻略の実績、保有スキルなどでランク付けがなされる。実力が評価されれば昇格されるし、逆もしかりだ。

 佐伯ポプラは現在21歳。活動して3年でSランクへの昇格は異例のスピードとも言える。

 才能と実力、実績に伴えばそれ相応の評価が渡される。活動を続ければその分報酬が増える。

 昇格すれば入れるダンジョンにも幅が広がる。

 未踏破のダンジョンが尚も残る中だ。活動の幅が広がれば広がるほど、注目度は上がる。

 上がれば上がるほど視聴者数は増え、その分目立つし、お金だってもらえる。

 あるいはそれ以上に、自分にとって価値あるものが見つかるかもしれない。


 余談だがロリコはロリコでそういった未踏破のダンジョンを中心に攻略している。

 探してるものがそこにあると信じているためだ。

 なお、ロリコには証明書が発行されていない。10歳だから。


「ありがとう。……え、これだけだったりする?」


「まさか。……ダンジョンの数が近年増加していることは知っているな?」


 パソコンを操作して、資料を映し出していく。

 誰かが配信している映像。

 SNSに取り上げられた話題。

 インターネットの掲示板にアップロードされた画像。

 ダンジョン管理機関は名前の通りにダンジョンを管理する機関だ。

 このダンジョンならば、このランクの冒険者は入ってもいいと判断するのが彼らの仕事の一部。

 一連を定めるために日々躍起となってはいるが、数が多くなればなるほど人手が足りなくなる。

 ダンジョンの実地調査はSランクの冒険者しかできない。実力が証明されているからだ。


 最後まで攻略できなくても残された映像を基に再挑戦の糧とする。

 一番良いのは初見で攻略しきることであるが、映像を残すことの利点がそこにある。

 安全面の確保にゆくゆくは繋がるし、映像の解析が進めばモンスターの生態についても把握が出来る。

 情報の価値が最も高い時代。配信というコンテンツはエンターテインメントを交えながらもダンジョンについても把握が出来る側面を有することになった。


 例を挙げれば、ロリコが先日攻略した横土ダンジョンは難易度はAランクと判断された。

 100層近く階層がある中、道中に出てくる敵がデータとしてすでに残っていたりすればその分難易度は落ちる。

 攻略法が分かればそれだけ難易度は下がる。

 唯一サイクロプスはデータ上に存在してなかった。

 だから未踏破のダンジョンとして放置されていた。

 そこをロリコが攻略しただけだ。

 ロリコの映像からモンスターの情報解析した機関は、すでに横土ダンジョンをAランクのダンジョンとして難易度を落としている。

 公に、ロリコに活動させる気はないが、記録として残すことで後々に役立てようとする。

 だから自らが管理している切り抜きチャンネルは消されていないし、本人がアカウントを作ろうとした瞬間には削除されている。


「まさか私にどこかを攻略させようとしてる?」


「直属の依頼なんだ。攻略してほしいのはここ。斜海しゃかいダンジョン」


「……攻略不可能って聞いてるけど、そこ」


 斜海ダンジョンの難易度はS。

 観測されて以降、生きて帰ってこれた冒険者はいない。理由は単純で、海の中にあるから。

 ぽっかりと、一部分だけに生まれる渦潮の中にそれはある。

 映像記録として残されていたのは、海に潜った冒険者と、その入口らしき建物の様子。

 周りは強い勢いで渦が巻かれている。電源を入れた洗濯機以上に回るそれは侵入が不可能とも言われていた。


「佐伯ポプラならばこのダンジョンを攻略できる力を持っているはずだって言うのが上からの意見だ」


 淡々と話す姿は、姉というよりも仕事に真面目な人間にしか映らなかった。

 指示されたことを淡々と、上から下に向かったものを先に流しているだけ。


「正直、あたしとしては断ってほしいくらいだが」


 本音を言えばそうなる。

 自衛できる力を持たせるまではいい。

 誰もが危険と言うようなダンジョンに行かせたくないのは、思って当然と言える。


「…………」


 ポプラは思案する。

 攻略可否ではなく、攻略配信を始めた後のことを。

 佐伯ポプラが重んじるのは配信の雰囲気。

 自分にとって居心地の良い空間が形成されているか否かだ。

 初心者向けの講座配信もするし、難易度が高いダンジョンだって攻略をする。

 土台に理解しやすさを置いて、好戦的なコメントから指示されるようなコメントを排斥し切ったような雰囲気。


 お嬢様口調の配信者のコメント欄の口調がお嬢様口調で統一されているようなものともいえるし、ゲーム配信でネタバレコメントの、展開の匂わせを禁止しているようなものだ。

 自分を称賛してくれるコメントが多ければそれに越したことがなく、幾重に流れれば承認欲求が満たされて、気分が良くなるだろう。


 故に難易度の高いダンジョンの攻略に尽くすこともあった。

 見ている人がわかりやすく、盛り上がればそれでよし。

 自分の外見を褒めてくれてもよし、鮮やかにモンスターを殲滅する姿を褒められてもよし。

 視聴者の期待に応えられればなおよし。

 ここ最近の活動はその三点を念頭に置いていた。


 今回は偉いところから直接の依頼で、誰も攻略していないダンジョンに行くことになったというだけ。

 普段の配信と、いつもと同じなのだ。


 欲求がここ最近満たされていない以外は。


「……行きます」


 なればこそ、今回の配信でならそれが満たされるかもしれない。

 視聴者に尽くし、ついでにお金を得て、将来的にはダンジョンを攻略する冒険者として地位を得ていく。

 珍しい話でもない、よくあるプランニング。

 そのレールにただ乗っているだけ。


「私が行きたいと思うから行く。お姉ちゃんは何も心配しなくていいから」


「……そうか。上に伝えておくよ」


 声を落としながら彼女はそう言った。

 不服ではあるが、姉として家族の安全を願うのは当然のことだ。

 ポプラが判断した答えには納得はできるし、納得はしたくない。それだけのことだ。


 一方で、佐伯ポプラという妹に攻略できるかという点を見るならば、姉は攻略することができると考えている。

 ダンジョン探索において、斜海ダンジョンが未開の地であったとしてもだ。

 佐伯ポプラは初見での攻略において常に最適解を叩き出すことができると考えている。


 ひとえに、それは彼女の魔力の運用に由来する。

 魔力はイメージの世界だ。頭の中で、心の中で思い描いたものを目の前に投影して、物質化させることが出来る。

 手に取ることが出来るし、手に取れないものを創出することができる。

 火をイメージすれば火が放たれて、水を描けば水が湧き出て、風を浮かべればそれが吹くだろう。


 割と何でもありなのだ。

 だが人には適性がある。

 魔力をぶつけるより、魔力を固めてぶつけることに向いている人がいる。

 ロリコ・リコもその一人だ。


 ロリコは物質を生成することを得意とするスキルを持つ。

 運用の仕方にも向き不向きがあり、ロリコは特段何かを放つよりも手に取って叩く方が好みだった。

 好みだし、何より戦いやすい。

 だから魔力を凝固し、一つの形として生み出して手に取る。

 斧にしている理由すら好みだ。やろうと思えば剣だろうが鎌だろうがモーニングスターだろうが何でも出せる。


 佐伯ポプラはその逆を行く。イメージできる世界の中で、持ちうる魔力で柔軟に対応ができる。


 パワーで何とかするのがロリコなら、頭の中で解を常に出そうとするのがポプラなのだ。

 だから、初見適性が高いという認識が、ダンジョン管理機関の中で持たれている。

 当然、ポプラ自身にもだ。


「お姉ちゃんはさ」


 話題を変えるようにポプラが切り出した。


「ん?」


「もうダンジョンに潜ったりしないの?」


「しない」


 にべもなく。

 淡々と、決まっている事柄を口にしている。

 姉は表情一つ変えることなく、妹はその姿に不満そうな顔をして、この場はお開きとなった。



「こんばんは〜! みんな元気にしてたー?」


 帰宅後、諸々済ましてからの配信。

 雑談配信の頻度は高く、視聴者の同時接続数のアベレージは15000人前後をキープ。

 今波に乗っている配信者だからこその注目度。


 :ばんわ〜

 :こんばんは

 :お疲れ〜


 雰囲気は柔らかい。

 コメントしやすい雰囲気が保たれている。

 有料コミュニティに属するファンも多い。コメントの一部を見てみると、それらに属してない視聴者のコメントよりも多く投げられている。


 変わらない配信。

 達成した目標。まずは、と。数時間前に手に入れた証明書をカメラの前に持っていく。


「じゃーん! Sランクになりました〜! これでいつでも好きなところに行けますよっ!」


 :おめでとうございます! 

 :強い

 :まぁ俺はポテンシャルがあると思ってたけどナ……

 :俺も思ってたが? 

 :佐伯ポプラは俺が育てた


 俺が、いや俺がと。

 視聴者が我先にと主張するが、気になる程でもない。

 コメントと共にスーパーチャットが送られている。

 赤一色。それも複数。

 何割かは運営元のホイチューブが利益を得るが、それでも佐伯ポプラの懐に集まる金額は大きい。ダンジョン攻略後の報酬まで含めれば、向こうしばらくは働かなくても暮らしていけるだろう。


「記念配信を別で開こうと思ったんだけど、その前に次行くダンジョンが決まってね。それの報告も兼ねてるんだ」


 画面に映し出す。

 数時間前にも見た斜海ダンジョンの文字。

 詳細も映る。自分が描いたイラストを交えながら視聴者に細かく説明していく。

 深海に位置するそれに侵入するにも条件がある。

 海水の表面、その真ん中に勢いのある渦があるということ。

 その中心から入っていくことで全貌が見えるということ。

 ただ、その渦は勢いがあり、半端な身体だと切り刻まれてしまうこと。

 そして、未開の地であるためどれほどそれが大きく、仮に攻略した後はどのように戻ればいいかさえ不明。


 :ポプラなら余裕でしょ


 安易なコメントではあるが、ダンジョン管理機関は同じことを考えている。

 本人も思考を巡らせてはいる。対策準備を込みにして、翌日には行けるほどに。


 :てかそのダンジョンって

 :あっ

 :まずい


「ん?」


 コメントの流れが一変する。

「あ」、だの、「まずい」だの。同じひらがなのコメントが流れ始めた。

 記憶にあるものだ。自分でも知っているような有名な配信者がやらかした時に流れてくるようなコメント群。

 とはいえ、知らないうちに話題を上げてしまうことだってある。

 だが斜海ダンジョンという話題で雰囲気が一変させられるようなことを、佐伯ポプラは思い浮かばない。


 マウスカーソルでそれらを止めて読みつつ、「何か他にあるっけ?」と、注意点を頭の中で振り返りながら視聴者に問うた。

 流れてきたコメントは予想もしてないものだった。


 :違法ロリもそこに行くらしい


「え」



 次に行くダンジョンを○○で決めるロリコ・リコ【2124/07/02】


『大体見終えたね』


 自分の過去の配信、切り抜きを見終えての言葉だった。

 息を吐いて、椅子に背もたれをついたロリコはそのまま天井に目を向けていた。

 画面上ではボケーっと上方向を見ているだけ。


『次どこ行くかな』


 口に漏らす。

 その言葉に反応した視聴者があれこれとダンジョンの名前を挙げている。

 誰もが知っている名前、知らない名前、難易度が高いことで有名な名前。

 候補は幾つもあるが、どれから行くかは決められない。


『いいこと思いついたっ!』


 唸っていたところで、頭の中で走る一筋の光。

 ある意味、神からの啓示。


『次行くダンジョン安価で決めるぞ〜〜!』


 :草

 :舐めすぎw

 :難易度Sきたらどうすんの? 


『なんとかなるでしょ! 16時ぴったりに下矢印のコメントするからお前らよろしく!』


 妙案を思いつきウキウキテンション。

 びしっとカメラをの前を人差し指を向ける。

 好きなアニメのグッズをお母さんに買ってもらう時の気分のようだった。

『どこでもいいよ〜』と呑気な言葉を残しながら鼻歌を添えてその時を待ち始める。


 15時59分。コメントは加速する。

 流れ始めるダンジョン名。冒険者なら誰もが知るダンジョンの名前。

 難易度が高く、攻略の目処が立たないところから、女子小学生が行かせるには到底ありえない場所の名が挙げられる。

 本物の幼女に対して与える提案ではない。

 ただ目の前の幼女は本物にも関わらず、なまじ実力者であるため、こいつならどこ行ってもいけるだろう、という期待とそれ以外の思惑を交えてのコメントが流れる。


 :斜海ダンジョン

 :桜火ダンジョン

 :新宿ディメンション

 :宙空ダンジョン

 :横土

 :初心者向けのどっか

 :海外のダンジョン

 :新宿

 :Shoreline Horizon

 :↓

 :斜海ダンジョン

 :なんか難易度の高いやつ

 :蓬莱ダンじょん

 :横浜ディメンション

 :甘森


 決まる。

 ご存知攻略難易度Sダンジョン。

『ここか〜っ』と歓喜の笑みを上げながら、後頭部をぽりぽりと掻く。


 :斜海はマズイ


『そうだよな。流石に準備するか……』


 :今まで勢いだけで突貫してたロリコが準備を……? 


『スク水』


 :そっち? 

 :草

 :そこなんだ


『やっぱ自前じゃないとダメだよな……どうせなら一式作るか……』


 行く気満々なロリコの言葉に困惑するコメント欄。それをよそに、『スク水選ぶべ』とウキウキテンションで言いながら、画面上は通販サイトが開かれて、動画は終了。



「えぇ……」


 配信終了後、投稿されていたロリコ・リコの切り抜きを視聴した。

 今日投稿されたばかりの出来立ての切り抜きだった。

 コメント欄は舐めすぎだろと罵倒のコメントが多い。当たり前だ。子どもなのだから。

 おまけに、自身の配信終了後にダンジョン管理機関からメッセージが届いていた。

 姉とはまた違う人からのメッセージだ。内容は簡潔なものだったがポプラにとっては気乗りしないものであった。

 それとして、目の前の動画内容にして思考を凝らす。


(突発的でやりたい放題、まさしく子供らしさ全開。後先を考えて無さすぎる。そこが好きですけども)


 ロリコ・リコの未踏破ダンジョンの攻略による影響は大きい。

 ダンジョン配信は子供向けコンテンツではない。挑むものに限定して視聴が許されるコンテンツなのだ。ゆえにこそ、血みどろな戦いがエンターテイメントとして消費されることが許される場が整っている。

 ホイチューブ上におけるロリコの扱いは目には見えないというもの。二酸化炭素のように存在はするけど目には映らない、話題にならないようなもの。

 名前があっても口にはしない。口にすることがNGワード。話題に上げても隠語が混じる。


 違法ロリ。名前を出してはいけない人。幼女(本物)。実力だけは立派。バカ。アホ。ガキ。ミノタウロス。異世界からの帰還者。チート。異世界人。友達がいない子供。実は男。某国開発の人造人間。実はモンスター。俺たちが見ている夢。


 あの人って言うだけで伝わるようなもの。

 実力が伴うことが実に厄介。

 話題性が取られれば取られるほど、同じ時間に配信すれば視聴者はその時の好み次第で移動を開始する。

 ロリコは何件も、未踏破のダンジョンをクリアしている環境の破壊者だ。

 視聴者を取るついでに報酬は山取り。話題まで取られれば活動の縮小は避けられない。

 攻略されていないダンジョンは数あれど、中でもとびきり難しいものはやはり注目度が高まる。

 斜海ダンジョンもその一つだ。

 現にSNSではロリコの話題とポプラの話題で埋まっている。

 どちらが先に攻略するかとアンケート形式で勝手に競わされたりもしている。

 ポプラの方が6割ほど優勢に立っているが、4割の人間がロリコが先を往くと期待している。


(行くなら明日か明後日か。準備は済ませてある。少し時間をかけたかった気もするけど……)


 準備は整っている。

 ダンジョン管理機関から支給された道具と手持ちの道具を合わせれば数ヶ月は滞在できるだろう。

 時間をかける気はないがデータのない場所になると備えたくなるものだ。


 ロリコ・リコのアカウントをのぞいてみた。

 何時ごろ行くのか気になったからだ。


 ロリコ・リコ(本物) @honmononorori

 明日は買い物に行くから斜海は明後日から行くわ! 


「呑気だなこの人……うわ、引用コメで叩かれてるよ。容赦ないな。ロリコさんの方が強そうなのによく言える」


 2日後にロリコが攻略を始める。

 ……明日から行くか。と決意を固めてみると、すんなりと心に言葉が落ちた。

 負けず嫌いのきらいがあると言えばそう。

 対抗心があると言えばそう。

 子供に危ないところだと理解らせたいのもそう。


 純粋に早く行きたいというのがそう。


 彼女はダンジョンを攻略する冒険者として、あるいは一人のエンターテイナーとして。

 自分よりも面白く映るかもしれない人に対して負けたくないという気持ちを振るわせるだけなのだ。


 宣戦布告として自分もコメントを出す、なんてことはしないが。

 ゲリラ配信で驚かせるそこも悪くはない。


「私が先に攻略して──そうすれば」


 自分の心を満たすことはできるだろうか。

 思い、彼女は支度を整えた。

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