義妹フルスロットル ――遠慮なんかしてられない――

第21話：新学期、新たな波乱の予感と、それぞれの決意

長い夏休みが終わり、

新学期が始まった。

学園には、夏休みを終えた生徒たちの。

活気ある声が響き渡る。

悠真の心には、夏休みの出来事、特に。

紗耶の「家族になる」という宣言が。

深く刻み込まれていた。

彼の完璧な日常は、少しずつ。

しかし確実に、変化し始めていた。

新学期最初の登校日。

下駄箱には、相変わらずラブレターの山が。

悠真を待ち受けていた。

その数は、夏休み前よりも増えているようだ。

悠真は、戸惑いながらも。

丁寧にそれらを回収し、鞄にしまう。

（一体、いつになったら、この状況は…）

彼は、ため息を一つ漏らした。

教室に入ると、クラスメイトたちが。

夏休みの思い出話に花を咲かせている。

悠真は、その輪に加わりながらも。

どこか上の空だった。

桜は、新学期が始まり。

悠真と再び学校で過ごせることを喜んでいた。

しかし、彼女の心には、夏休みの夜に感じた。

不安が、依然として影を落としている。

（お兄ちゃんは…本当に、私のこと。

妹だと思ってくれてるのかな…）

彼女は、悠真の隣にいることが幸せである一方。

いつか真実が明らかになるのではないかと。

怯えていた。

その不安が、彼女の悠真への執着を。

さらに強める。

悠真が他の女子生徒と話しているのを見ると。

桜は、すぐに彼の隣に駆け寄り。

腕を組んだり、袖を掴んだりする。

その行動は、以前よりも露骨になっていた。

葵は、新学期を迎え、悠真への想いを。

改めて強く意識していた。

彼女は、悠真の抱える苦悩を理解し。

彼を支えたいと強く願う。

（悠真先輩の完璧さは、時に。

彼自身を孤独にしている…）

葵は、悠真の些細な変化にも気づき。

彼に寄り添う機会を伺っていた。

授業中、悠真が難しい問題で悩んでいると。

葵は、さりげなくヒントを書き込んだメモを。

彼の机に置く。

放課後、悠真が部活動の準備をしていると。

葵は、そっと飲み物を差し出す。

彼女の行動は、控えめながらも。

悠真への深い愛情が込められていた。

紗耶は、夏休みの宣言通り。

「悠真の義妹」としてのポジションを。

確立しようと奮闘していた。

彼女は、悠真の幼馴染という特権を最大限に活用し。

積極的に悠真に絡んでいく。

「悠真、今日の昼飯、一緒に食おうぜ！」

「あんた、また寝癖ついてるぞ！直してやる！」

紗耶の行動は、以前にも増して大胆になっていた。

彼女は、桜や葵の存在を意識しつつも。

自分の気持ちに正直に、悠真にアプローチする。

その姿は、まるで「義妹戦争」の火蓋を切ったようだ。

彼女の心には、悠真への深い愛情と。

「幼馴染」という関係性を。

「家族」へと昇華させたいという強い願望が。

渦巻いていた。

悠真親衛隊は、夏休み中の「悠真争奪戦」での。

敗北を喫し、その戦術を練り直していた。

彼らのリーダー、白石麗華は。

悠真の「家事演武」に心を奪われつつも。

彼の「純潔」を守るという使命を。

改めて強く意識していた。

彼女は、新学期早々、親衛隊のメンバーを招集し。

新たな作戦会議を開く。

「いいかい、みんな。悠真先輩は、私たちの神聖な存在よ。

あの義妹たちから、先輩を守り抜くのよ！」

彼女の瞳には、強い決意の光が宿っていた。

親衛隊の動きは、以前にも増して組織的になり。

悠真の周囲を監視する体制を強化する。

新しい母である理事長は、悠真の成長を。

温かく見守っていた。

彼女は、悠真が真実を知った後も。

変わらず「完璧な息子」であろうとしていることに。

安堵しつつも、彼の心の奥底にある。

孤独を感じ取っていた。

（悠真くん…あなたは、一人で抱え込みすぎているわ…）

理事長は、悠真と桜、そして夫との関係性を。

どう修復していくべきか、深く考えていた。

彼女の心には、家族への深い愛情と。

過去の秘密への葛藤が渦巻いている。

悠真の父は、悠真と桜の間に漂う。

微妙な変化に気づいていた。

彼は、悠真の完璧な行動の裏に隠された。

苦悩を感じ取り、心を痛める。

（悠真…桜…いつか、全てを話さなければならない…）

父は、家族の未来のために。

何をすべきか、深く悩んでいた。

彼の顔には、疲労の色が濃く浮かぶ。

放課後、悠真が部活動の準備をしていると。

桜が、少しだけ声を震わせながら。

悠真に話しかけた。

「お兄ちゃん…あのね…」

桜の瞳は、不安と、そして。

何かを伝えたいという強い気持ちで揺れている。

悠真は、桜の様子に気づき。

優しく彼女の頭を撫でた。

「どうした、桜？何かあったのか？」

悠真の優しい声に、桜は言葉に詰まる。

彼女の心には、真実を打ち明けるべきか。

それとも、このまま秘密を抱え続けるべきか。

激しい葛藤が渦巻いていた。

これはもう、遠慮なんかしてられない！

新学期、それぞれの決意を胸に。

物語は、新たな波乱の予感をはらみながら。

フルスロットルで加速していく。