第18話:水辺のドキドキと、武術での救出劇、そして桜の苦悩と決意

旅行二日目。

家族全員で、海へ向かった。

透き通るような青い空が広がり。

輝く白い砂浜が、どこまでも続く。

波の音が、心地よく耳に響く。

悠真は、皆が快適に過ごせるよう。

完璧な準備を進めていた。

日差しを遮る大きなパラソルを。

砂浜の最適な位置に立てる。

冷たい飲み物や、軽食の準備も怠らない。

彼の動きは、まるで熟練のビーチスタッフだ。

その手際よさに、皆が感嘆の声を上げる。


桜は、新しい水着姿を悠真に見せようと。

はしゃいでいた。

「お兄ちゃん、見て見て!新しい水着だよ!」

桜は、くるりと一回転し、笑顔を見せる。

瑞々しい水着姿の桜に、悠真はドキリとする。

顔を赤らめる悠真の姿に、桜は首を傾げる。

「お兄ちゃん、顔赤いよ?熱でもあるの?」

桜は、心配そうに悠真の額に手を当てる。

その優しい触れ合いに、悠真の心臓は高鳴る。

悠真の心には、昨夜の真実が重くのしかかる。

(桜は…本当に、俺の妹じゃないのか…?)

桜もまた、悠真の顔色に、微かな影を感じる。

彼女の心の中には、依然として。

理事長の言葉が、小さな棘のように刺さっていた。

(もし、本当に…お兄ちゃんと私、血が繋がってなかったら…?)


葵はプールサイドで本を読んでいると。

悠真がタオルを差し出す。

「葵さん、体を冷やさないように」

水着姿の葵の、濡れた髪から滴る水滴が。

悠真の指先に触れる。

その一瞬の触れ合いに、葵は顔を赤らめる。

(悠真先輩の優しさは、いつも変わらない…)

彼女の心には、温かい感情が広がる。

プールから上がってきた理事長が。

悠真の視線に気づき、微笑む。

「悠真くんも、一緒に泳ぎましょうか?」

その言葉に、悠真は慌てて首を振る。

「いえ、俺は、あの、その…」

理事長の優しい誘いに、悠真は言葉に詰まる。


紗耶がビーチボールで遊んでいると。

ボールが悠真の方向へ飛んでくる。

悠真はボールを受け取ろうとして。

バランスを崩し、水着姿の紗耶の上に。

倒れ込んでしまう。

「きゃっ!悠真!?」

二人の体が密着し、顔が近づく。

紗耶の顔は、真っ赤に染まる。

(こんな時に…あんたは本当に…!)

これもまた、悠真の無自覚な超人ぶりだ。

彼の周りでは、いつもハプニングが起こる。


そんな賑やかなビーチに、不穏な影が忍び寄る。

地元で有名な不良グループだ。

彼らは、紗耶の妹たちが遊んでいるのを見つけ。

声を荒げて絡み始める。

「おい、可愛いお嬢ちゃんたち。

ちょっと遊んでいかねぇか?」

紗耶の妹たちは、恐怖で顔をこわばらせる。

その声に気づいた紗耶が、慌てて駆け寄る。

しかし、不良グループに囲まれてしまう。

「姉ちゃんに、手出すな!」

紗耶の妹たちが、勇敢にも不良に立ち向かう。

「何だ、てめぇら!やんのか、コラ!」

不良グループのリーダーが、紗耶を睨みつける。


その時、悠真がさりげなく近づく。

悠真は、不良グループのリーダーの背後に回り込み。

彼が気づかないうちに、彼の動きを封じてしまう。

気配だけで不良を退散させたり。

無意識のうちに相手を動けなくしたりと。

その圧倒的な武術の腕前が発揮される。

(紗耶「え…? 今、何が…?」)

不良たちは、何が起こったのか理解できず。

恐怖で顔を青ざめさせ、逃げ出してしまう。

ヒロインたちが内心ピリつく場面も。

「悠真先輩、すごい…!」

葵が、悠真の姿に改めて感動する。

新しい母である理事長もその一部始終を目撃し。

悠真の隠された才能に改めて驚き、頼もしさを感じる。

「やはり、あの流派の…」

理事長の瞳は、鋭く光っていた。


この旅行中に、悠真親衛隊が送り込んだ刺客(?)が。

水難事故を装って悠真に接近しようとする。

彼らは、悠真をヒロインたちから引き離し。

自分たちのものにしようと画策する。

例えば、悠真の近くで溺れたふりをしたり。

悠真が通りかかるところに、落とし穴を掘ったり。

だが、悠真の武術スキルや、義妹連合。

そしてメイド隊の連携によって失敗に終わる。

親衛隊とメイド隊が直接対決し。

プロのメイドスキルと素人親衛隊の攻防が。

コミカルに描かれる。

メイド隊長・橘凛が、親衛隊の動きを冷静に分析し。

的確な指示を出す。「坊ちゃまに近づけるな!」

若手メイド・星野ひかりは、親衛隊の目を眩ませるため。

ビーチボールを投げつけたり、砂を巻き上げたりと。

可愛らしくも巧妙な妨害工作を行う。

分析メイド・綾小路楓は、親衛隊の動きを。

タブレットで記録し、彼らの弱点を分析する。

悠真の父は、悠真が娘たちや女性たちに囲まれ。

時に守られている様子を微笑ましく思いながらも。

何やら裏で起こっている不穏な動きに。

わずかながらも気づき始めていた。


夜。皆が寝静まった後。

桜は一人、こっそり露天風呂へと向かう。

星空の下、湯に浸かりながら。

桜はひっそりと涙を流す。

(お兄ちゃんは、本当の私を知ったら、どう思うの…?)

(私は、お兄ちゃんにとって、どんな存在になるの?)

(「本当の家族」って、何…?)

「本当の家族とは何か」という問いが。

彼女の心を締め付ける。

冷たい夜風が、桜の頬を撫でる。

その時、偶然、湯上りの葵が通りかかり。

桜の異変に気づく。

葵は、静かに桜の隣に座り。

何も言わずにただ寄り添う。

桜は、葵の優しさに触れ、少しだけ心を開き。

かすかに言葉を漏らす。

「私…お兄ちゃんの、妹じゃなくなるのかな…?」

葵は、桜の言葉に驚きつつも。

優しく彼女の手を握る。

(桜さん…)

葵の心には、桜への共感と。

悠真への秘めたる想いが交錯する。

二人の間には、温かい絆が生まれた。


悠真の父は、悠真と桜の間に。

以前にはなかった微妙な距離を感じ取っていた。

彼は、悠真の部屋の窓から、庭を見下ろす。

庭の片隅で、悠真が一人、武術の鍛錬をしている。

その動きは、迷いなく、完璧だ。

(悠真…桜…お前たちに、真実を伝える時が。

刻一刻と迫っている…)

父の心には、重い決意が宿る。


桜は、悠真のそばにいることが幸せである一方。

自分の出生の秘密がいつか悠真に知られてしまう。

のではないかという不安に苛まれていた。

彼女の心は、悠真への深い愛情と。

秘密への恐怖の間で揺れ動く。

その夜、桜は一人、静かに涙を流しながらも。

どんな形であれ、悠真のそばにいたいと強く願った。

彼女は、拳を握りしめ、心に誓う。

(私がお兄ちゃんの妹じゃなくても、お兄ちゃんを…守りたい!

私の家族は、お兄ちゃんなんだ!

そして、いつか…お兄ちゃんの隣に、私がいられるように…!)

桜の瞳に、強い光が宿った。

これはもう、遠慮なんかしてられない!

物語は、それぞれの思惑を乗せて。

フルスロットルで加速していく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る