冒険者ギルドの社員食堂

@marumarumarumori

プロローグ

「本当に....申し訳ありませんでした!!」


ある晴れた日の昼下がり....ごくごく普通の日本人の女性(19歳)である谷川菜々子は、中世ヨーロッパを思わせる馬車の中にて、金髪の貴族風の男性から謝罪されていた。


事の始まりは、いつものように大学に向かっていた菜々子が召喚魔法に巻き込まれたことから始まった。

そして、彼女が気がついた時には見知らぬ遺跡に転移していたため、彼女は本能的にこの世界が自分が居た世界ではないことを察したのか、人どころか魔物すら徘徊していない程に朽ちていた遺跡の中を移動し、何とか遺跡から出ることに成功。


その後、たまたまその遺跡の近くに居た兵士達に保護された菜々子は、ここに転移してきた経緯を話したところ、二人の兵士達の顔色は瞬く間に変わり、色々と質問されたその数日後にあの貴族風の男性かやってきたかと思えば、菜々子をエスコートする形で馬車へと乗り込み、今に至るのである。


「え、えっと....つまり、私がこの世界に召喚されたのは、大昔の勇者召喚の時に使われた召喚陣が誤作動したってことですよね?」

「はい、我々もまさかあの魔法陣が起動するとは思ってもいなかったので、我々としても不覚の極みです」


申し訳なさそうにそう呟く男性....もとい、ハインリヒは菜々子の転移先の国ことハーブルグ王国の役人なのだと自身のことを語った後、召喚陣の誤作動によって異世界から菜々子が転移されたと聞いた際、王都からすっ飛んできたのだと言った。

それを聞いた菜々子は、自分が召喚されたことが大事であることを理解したようで、ガッチガチに緊張していた。


ハインリヒ曰く、およそ150年前に勇者召喚によって呼び出された異世界人が魔王を倒して以降、私利私欲のために異世界人を召喚してはならないという国際的な条約が制定されて以降、勇者召喚という行為そのものは行われなくなった。

けれども、その召喚陣の誤作動によって異世界人が召喚される....といったような事態が度々発生したため、今現在は召喚陣を無効化する作業を行うの同時に、そういった異世界人を保護し、生活出来るようにサポートする体制が整いつつあるのだとハインリヒが語った。


だが、その言葉を聞いた菜々子は何となく元の世界に帰れないことを察したようで、悲しい気持ちになりつつも前を向こうと思ったのか、ハインリヒの話を聞いていた。


「それで....その支援って具体的にはどんなことをするんですか?」


どういった支援をされるのかが気になったのか、菜々子がそう尋ねると....ハインリヒは待ってましたとばかりにこう言った。


「そうですね....主に仕事の紹介や住居の提供などを行っています」

「え!?良いんですか!?」


それを聞いた菜々子は、何だかハロワみたいだなと一瞬思ったのは言うまでもない。


「職の方は異世界人の方との面談を行った後、信頼できる関係各所の方々と話し合って決めていますので、そこら辺は安心してください」

「は、はい!!」


そういうハインリヒの姿を見た菜々子は、何だか頼もしいなと思いつつ彼の話を聞きながら、ふと馬車の外を見つめると....そこには、青々した草原を走る角が生えたウサギの姿があったので、ここが異世界であることを再認識していた様子の菜々子を見たハインリヒは、彼女に対してこう言った。


「....気になりますか?」

「あ、いや、その...本当に角が生えたウサギが居るとは思わなくて.......」


菜々子がそう言うと、微笑ましいなと思ったのかハインリヒはニコッと笑っていた。

その笑顔を見た菜々子はいつの間にか緊張感がほぐれていたようで、少しだけ安堵の感情に浸っていたのだった。


と、その時....ほんの少し安心したからか、菜々子のお腹からクゥと鳴る音が聞こえた後、彼女の顔には恥ずかしそうな表情が映っていた。


「....食べます?」

「.....はい」


そんな菜々子に対してハインリヒが差し出したのは、雪のような粉砂糖が掛かったピンク色の長方形型の物体で、菜々子はそれを一つ手に取ると一口食べた。

それは菜々子にとっては初めて食べるお菓子ではあったが、口の中に優しい甘みとナッツの風味が広がったため、彼女の顔は思わず緩んでいた。


「美味しい....!!」


そのあまりの美味しさにピンク色のお菓子をパクパクと食べる菜々子だったが、すぐに我に帰ったのか、また恥ずかしそうな顔になっていた。


「美味しいものを食べると元気になりますよね」


ハインリヒはそう言った後、優しい笑顔を見せると....菜々子を咎めることなく、ピンク色のお菓子に差し出した。

そんなハインリヒの様子を見た菜々子は、安心した様子でピンク色のお菓子を手に取ると再び食べ始めるのだった。


「これ、とっても美味しいですね!!」

「えぇ、私も昔からこのお菓子が大好きなんです」


菜々子とハインリヒがお互いに笑顔を見せながらそう会話していると、馬車の窓から見える景色は次第に変化していき....やがて、菜々子とハインリヒの乗っている馬車は王都に到着したのだった。

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