Quirky Quentin

akrka

プロローグ

「街の中で有名な奴っているだろ。モデルとか俳優とかじゃなく、そいつが街を歩けば皆が、あぁ、あいつかって振り向くようなさ。良くも悪くも目立つんだよな。なんかこう、普通じゃないっていうかさ。」

 車が行き交う大通り。歴史ある石造りの建物を活かした通りはカフェやパブなど飲食店が多く軒を連ねる。

 人気の店のテラスでちょうどカップから紅茶の香りを吸い込んだところだった。そんな話が聞こえてきたのは。

 隣の席の男の声に無意識に耳を傾け、この街にそんな人物がいただろうかと思案する。

「ほら、噂をすれば、この街の有名人だ。」

 男が連れにかけた言葉であったが、ついそれに反応して顔を上げる。ちらりと男を横目に見て、彼が顎でしゃくる先に目を向けた。

 向いの通りに横付けされた高級車から降りたった二人の男に視線が奪われた。

 紫頭の青年は長身で、カラースーツにサングラスをかけ、一目で派手好きだとわかるような格好なのになぜだか下品さは感じない。

 そしてその青年よりもさらに飛びぬけて背が高いオレンジブラウンの長髪の男。服装はシックな落ち着いた色のスーツなのにその背の高さと体格の良さゆえに誰よりも存在感がある。

「あんまり見てっとあぶねーぞ。」

 その言葉にドキッと心臓が跳ねる。

 自分にかけられた言葉ではなかったが、一度跳ねた鼓動はまだ速くドキドキとおさまらない。落ち着こうと手に持ったままだったカップに口をつける。紅茶は少しぬるくなっていた。

隣の席の男たちもいつの間にか別の話題に移っている。

 気になってもう一度向かいの通りに目を向けたが、すでに二人は店の中に消えてしまったようだった。


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