君の中のふたり~幼なじみ男子と、彼の中のもうひとりのあの人と

東山未怜

第0話 プロローグ  


 新しい制服に身をつつんだ春。

 やわらかな朝の光が映しだす影なんか、見て見ぬふりをして。

 桜散る並木道を、三つ編みの小春こはると一緒に歩く。

 うすいピンク色の花びらが青空を舞い泳ぐのを、あいつはその手で受け止めていた。

 オレは知っている。

 あいつもオレも得体の知れない、希望と不安を胸に抱いているということを。

 そしてオレはずっと昔から、たいせつなことを忘れているような気もしている。

 いつかそのうち、それがなんなのかわかる日が来る、そんな予感とともに。

 オレがほんとうに、目覚めるその日が訪れるなら――。

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