混沌に沈む世界で、今を守る第四界層の覚醒者——エラリスとリラニア、魂契で結ばれた絆
暁森イサ
シーズン1
ランス・クエスト・ゲーム館
第1話 その声は僕の中から
「ピピピピ……ピピピピ……」
またもや容赦なく夢から引きずり出される。心臓がドクンと跳ね、まるで電流が走ったようだった。
ふと思った――俺は本当に、まだ目覚ましが必要なのだろうか。
いや、正確に言えば、こんなふうに無理やり夢から引き裂かれるような目覚めは、もう今の俺には合っていないのかもしれない。
意識がまだ浮かびきらないうちに、現実の重みが胸にのしかかる。
午前七時十三分。
わずか九秒の間に、スマホが十七件の通知を飲み込む。株価、ニュース速報、見覚えのないアカウントからの広告動画……
互いに無関係なそれらが、同じ瞬間に爆発のように俺の生活へ押し寄せてくる。
空気の周波数は、今日も濁っている。
うるさい――まるで脳内の全チャンネルのつまみを同時に最大まで回されたようだ。
思わず耳を塞ぐが、その「声」は鼓膜を通ってきたものではない。
無駄だとわかっていても、せめてもの心理的な防御にはなる。
❤︎「……今、崩壊が始まっている。」
誰だ? 誰が話している? 幻聴か? 眉をひそめ、息を止める。
だが、その声が再び響いたとき、俺はすぐに理解した。
それは聴覚を通じてではなく――
時間の隙間から染み出し、水漏れのように一滴一滴、意識の奥深くへと落ちてきたのだと。
❤︎「聞き間違いじゃない。
“今”を守ってください。
さもなくば、君は迷いの中に沈むだろう。」
その言葉の意味は、まだわからない。
だが俺は、確かに迷っていた。
自分の未来がどうなるのか、まるで想像もできない。
外界からの情報は、なおも泥のように押し寄せ、層を成して脳内の秩序を覆い隠す。
このまま積み重なれば、内なる世界は古びた堤防のように一瞬で決壊するだろう。
その前に、この世界の振動を組み替えなければならない。
だが――
俺はまだ、この生活にまったく慣れていない。
すべてがあまりにも急すぎた。
この能力はようやく目覚めたばかりで、耳に届くすべての音があまりに生々しく、
そのせいで自分の存在感すら揺らいでしまう。
しかもそれらの音は、外から入ってくるのではなく、脳の奥底から外へと広がっていく。これは普通なのか?
この「開口」に耐えられるかどうか、わからない。
確かなのは、“今”に迷い込んではならないということだけだ。
枕元の窓から、白く濁った朝の光が差し込む。
遠くの街路では、電子看板が天気予報や金融データを点滅させ、
光の粒が瞬きのように明滅する。
隣家のラジオから微かに音楽が流れてくるが、その旋律には本来のチャンネルにはない低い唸りが混じっている――あれは雑音じゃない。
それは何かの規則に従って呼吸し、俺の心拍と交差して共鳴していた。
❤︎「……起きろ。」
命令というよりは、そっと背中を押すような響きだった。
一瞬、霧の向こうから誰かがこちらを見ている気がしたが、その顔は見えない。
その声はそれ以上何も告げず、意図的に空白を残したかのようだ。
そして、なぜか確信していた――これが最初でも最後でもない、と。
俺は手を伸ばして目覚ましを止めようとし、指先がスマホに触れた瞬間、画面の数字がふるりと震えた。
それは暗号のような合図――見えない何かの機構が静かに動き出したことを示していた。
数字が瞬くあいだ、別の旋律が聞こえた気がした。
それはかすかで、懐かしいのに、同時にまったく知らない響きだった。
それは隣家のラジオのものではないし、俺の記憶にあるどんな曲でもなかった。
その中には何かが隠されている――長く忘れていた言語のようでもあり、かつて呼びかけられた名前のようでもあった。
つかもうとしたが、それはすぐに雑音に飲まれ、名残だけを脳裏に残した。
それが誰のもので、どこへ導くのか、俺にはわからない。
だが胸の奥で、静かすぎる声が確かに告げていた――
俺はきっと、またそれを聞くことになる。
──────
✦次回予告
耳に残るあの旋律が、予想もしない“導き”をもたらす。
見知らぬ出会いが、現実の境界を静かに揺らし始める。
そして、その一歩が物語のすべてを変えていく。
──────
この話を読み終えたら、目を閉じて、下にある音声記録を再生することをおすすめします。
「長い間失われていた音」だと言われています。
🎧 SoundCloud 試聴:
https://soundcloud.com/stennisspace/main-theme
【創作声明】
本作は「音楽の国」に生まれ、第三界層と第四界層の間を行き来しています。
第三密度では、私たちは物語とそのインスピレーションの純粋な姿を大切にし、無断での模倣、盗用、改変を避けています。
第四密度では、音楽の国は静かに物語の流れを見守り、出会うすべてのインスピレーションが自然に正しい道へ戻るよう導きます。
もし核心となるインスピレーションを奪い取ろう、または再現しようとする思いが芽生えても、それは朝霧のように静かに消え、跡形もなくなります。
この旅が、あらゆる時間線とすべての界層において、真実のままに続いていきますように。
バージョン更新日: 2025年8月2日 20:15
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