無名英剣伝説
ronboruto/乙川せつ
第1話 英雄(レイウス)
「さぁさぁ、演じようではないか! 愛を守る英雄と、それを奪う獣を!」
少年は、大きな声で叫ぶ。
見る観客全てに告げるように。――――――いや、世界全土に届くように。
白髪で蒼い瞳の男の子。人によっては女子に見えてしまう華奢な身体で、どう見ても強そうには見えない。
彼にとってコンプレックスかも知れないが、可愛い。
美人より好かれやすいのではなかろうか。
しかし今、そんなことを考える民はいなかった。
「私の名前はレイウス。……〝英雄〟になる男だ!」
誰もが笑うだろう。叶うはずがない夢を。
だけど、笑わない。
少年の前に立ちはだかるのは都市の猛者たちを薙ぎ払った「化物」なのだから。
この都市「アースリア」の英雄たちは百戦錬磨。一人で勝てなくとも多くの戦士たちが協力すれば勝てない敵はいない。
今まで、ずっとそうだった。
だけど、コイツは違う。
全ての英雄たちは、敗れ去った。
「私が最後の希望だと言うのなら、叶えて見せよう。サァ、ハッピーエンドといこうか!」
〝英雄〟が握るのは、たった一振りの短剣。
黄金の装飾が施された両刃のそれは、至高の権威をチラつかせる。
「叶えて見せますとも。姫、ミモザ……たとえこの命潰えても」
〝英雄〟は歩き出す。そして、走り出す。
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