第20話 色々やったな
子供の頃は、とにかく好奇心が強かったのか、聞いて興味が沸いたらなんでもやってみた。
それこそこっくりさんだの、トイレの花子さんだの、学校の怪談というモノが非常に流行っていた時代だったからか、本当に怖いもの知らずに色々試していたと思う。
まず、怪談の王道こっくりさん。
これは鳥居の絵を真ん中に、左右に『YES』と『NO』の文字と、その下に『あかさたなはまやらわ』のあいうえお表を書いた紙と十円玉を使って行う降霊術の一種と言われている儀式だ。
なんでも答えてくれると聞き、やってみようと思ったのだが、悲しい事に人望がなかったのと、当時の友達は怖い話がそこまで好きではなかったため誰も付き合ってくれず。
なら諦めればいいのにどうしてもやってみたかった自分は、一人でそれを決行する事にした。
「こっくりさん、こっくりさん、いらっしゃいましたら鳥居の中から十円玉を動かして下さい。」
ニッコリ笑顔でそう言ってみたが、十円玉は動かない。
そのままとりあえず色々質問してみたが、やはり1ミリたりとも十円玉は動かなかった。
そのため十円は使わないと駄目らしいので、近くの駄菓子屋で十円のガムを買って帰ると、次は花子さんの噂を確かめようと思いつく。
「は〜なこさん!あっそびましょ〜!♬」
当時花子さんを呼び出すやり方は、奥から三番目のトイレのドアを叩き『花子さん遊びましょう。』というモノだった……が、なんと我が小学校は二個しかトイレがなかったので、1番奥のトイレという説もあったためそこを叩いて言ってみた。
しかし応答はなし。
一応何度か言った後、ソロソロ〜……と扉を開けたが、ただいつも通りのトイレがあっただけだった。
それから試したのは、『夜中の12時にカミソリを口に咥えたまま、浴槽の水を見ると将来の結婚相手の顔が見える』というモノ。
自分の将来のお嫁さんの顔が分かる?!
これにはかなり胸をときめかせ、早速決行してみる事にしたのだが、なにせ我家は九時になったら全部屋消灯というルールがあったため、12時に起きるというのが容易ではなかった。
なんとか起きていよう、起きていようと思っていても、目を冷ますと朝……が何度も続き、目覚ましを掛けられるわけもなく、これにはほとほと困り果てる。
結局、何かをしていれば起きていられるんじゃないか?と考え、苦肉の策にベッドにいる間、練り消しを練り続けようと考えた。
何かしていれば、眠くならない!大丈夫!
そう考えてこっそり練り消しを手に持ち、そのまま12時まで起きている事に成功したのだ。
「よ〜し!」
全員寝静まった部屋の中で、ガッツポーズを取ると、そのままこっそり……こっそり布団の中から出て、捨てられる前に回収した使用済みのカミソリを手に取って浴槽へ。
ドキドキしながらカミソリを咥え、浴槽を覗き込んだ─────ら水がない!
「あ、そうだ!今日は奇数の日っ!!」
当時の我家は、浴槽のお風呂の湯は奇数の日は使用後流し、偶数の日はそのまま次の日もそのお湯を追い焚きして使用するというルールがあった。
そのため奇数の日であったその日はお湯がなく、つまり浴槽を覗いても何も写らなかったのだ。
もちろんその場で地団駄を踏んで悔しがったが、諦めるしかないので、その日は諦めて素直に眠った。
そして次の日……また練り消し作戦で起きていた俺は、意気揚々と起きて浴槽へ向かう。
今度こそ……っ!
俺の嫁さん……俺の嫁さん……!
美人だったらいいな〜とか、当時流行っていたアニメのヒロインを思い出しながら、カミソリを咥え、浴槽の中を覗くと────……暗くて全然見えない!!
「で、電気……。あ、でも、電気つけたらこういうのって駄目なんじゃ……?」
確か本で読んだ時には月明かりで見えていた様な気がするが、我家の浴槽、月明かりなし。
詰んだ……。
もう諦めるしかないと思った瞬間、ある物の存在を思い出し、俺は出直す事にしてその日は眠った。
次の日の夕方、庭に設置してある倉庫へと走り目的のモノを探す。
家にはキャンプ好きの父のせいで沢山のキャンプグッズがあったのだが、電気でつくランタンがある事を思い出したのだ。
ランタンなら月明かりに似ているし……いける気がする!
そう考え、ゴソゴソと探し回り、なんとかランタンを見つけた時は思わず小躍りとしてしまった程喜んだ。
さぁ、後は偶数の日に決行するだけだ!
また練り消し作戦で12時まで起きていた俺は、部屋の押し入れに隠しておいたランタンとカミソリを持って浴槽へ向かう。
そしてドキドキしながら浴槽にランタンを置き、薄ぼんやりした空間を作り出す事に成功した。
「よ、よし……!これで後はカミソリを加えて浴槽を覗くだけ……。」
俺は何度か深呼吸をして、カミソリをしっかり噛み締める。
ここで注意しないといけないのは、絶対に口に咥えたカミソリを落とさない事。
自分が読んだ怖い話によると、なんとここでカミソリを水面に落としてしまうと、浴槽が血まみれになるそうだ。
そして月日は流れ、将来の結婚相手に出会った時、そのパートナーの顔にはカミソリで切った様な大きな傷跡が……。
これは様々なバリエーションがあって、他にもいつもマスクをしているパートナーに『そのマスク取ってよ。』と言うと、マスクを取ったパートナーは隠されていた大きな傷跡を晒す。
『どうしてこんな大きな傷跡があるの?』
恐る恐るそう尋ねると、パートナーは大きく歪んだ顔で叫んだ。
『お前にやられたんだ!!!』
────とまぁ、こんな感じで、とにかくカミソリは落としては駄目だと言われている。
ドキドキしながらカミソリを咥え、俺はゆっくりゆっくりと、浴槽の水面に顔を近づけた。
できれば可愛い子……可愛い子……。
ドキドキ……ドキドキ……。
緊張しながら水面を見つめ、そこに写っていたのは────俺だね。
カミソリ加えて鼻の穴を広げている間抜け顔の俺の顔!
なんにも写ってねぇじゃ〜ん!
この時はとにかくがっかりしていて、怖いとかそういった恐怖心より悲しさや悔しさの方が強かったかもしれない。
その後も13日の金曜日に鏡を合わせると、悪魔を捕まえられるとか、願いが叶うとかもやったし、夕方の学校の中に忍び込んで、音楽室やら美術室やらに侵入しては噂になっている儀式を行ってみたりもした。
後は昔大好きだった、水木◯◯◯さんの作品、悪魔◯の真似をして、母親にねだりまくってオカリナを買ってもらい、風呂敷を肩に掛けて魔法陣を書いては悪魔を呼び出そうとしたり……本当に今思い出しても頭が痛い。
そのせいか今の子供たちの可愛い事可愛い事!
大人しすぎて心配になる程だ。
こうして変わった体験を沢山してきたが、ただやっぱり未だに何だったんだろう?と思う体験も結構あって、一応思い出せる限り書き出してみると……。
1番はお墓で遊んでお墓とば(お墓に立っている細がない棒)を持ち上げて剣代わりにして戦いごっこをした時。
今考えれば震える程罰当たりな事をしていたが、当時は普通にやっていて、もちろんお墓にいるお坊さんに物凄く怒られたわけだが、その直後、なんと高熱に侵され2日くらい意識朦朧とした日を過ごした。
母親は俺の前日のお墓の件を聞いて誤りに行っていたので「神様のゲンコツだね、それ。熱下がったら誤りにいきな。」と言って呆れていたが、俺は本気でビビる。。
『神様、神様!ごめんなさい!もうしません!』
ヒーヒー泣きながら寝ていたら、不思議な事に三日目はアッサリ熱が引き、直ぐにお墓とお坊さんに謝りに行った。
するとお坊さんは「謝ったから許してくれると言っているよ。だから次はもうこんな事しちゃだめだぞ。」と言ってくれて、また泣いて帰った記憶がある。
まぁ、一応お化け達も子供だからと赦してくれたのかもしれない。
ちなみにカミソリの儀式の件は、話のネタに弟に話した際、「それって一生独身って事じゃね?」と言われて、当時撃沈した。
しかし、今にして思えば、あれも『お前は死ぬ気で頑張らないとお嫁さん来ないよ?』というメッセージだったのかも?と思うとちょっと感謝する気持ちがあったりもする
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