5話


 ドクターに扉の向こうへ行きたいと言ってから数日経った。検査の用意が出来たらしく、ドクターの後に続いて扉の向こうへ歩いていく。

 

 初めて、初めて扉の向こうへ行く。どんなところなんだろう。楽しいところなのかな、それとも静かなところ? ナツハはいい所じゃないって言うけど、もしかしたらいい所かもしれないし!


 期待とドキドキを胸に進んでいくと、真っ白な部屋に通された。中央に大きな1人がけの椅子があって、そこへ座るように促される。


「まぁ、ただの検査だからそんなに緊張しなくて大丈夫だよ。少し採血……あー、注射したりするけど、怖くないからね」


 注射……。チクッと痛いやつ。あれかぁ……。そんな表情が出ていたのか、ドクターは飴をくれた。


「これを舐めると気分が落ち着くよ」


 小さな包装紙を引き、中からコロリとオレンジ色の飴玉が出てくる。口に含むと少しの酸っぱさとあとから来る甘みがちょうどいい。


 口の中でコロコロと転がしているうちに、注射が終わり、扉の中から元いた部屋へ返された。

 飴を舐めていると、なんだかふわふわとした心地になる。甘くてふわふわしてなんにも考えられなくなるような……。


「ミ……セ?! なんで……から出……たの? ……夫? ……も……れな……た?」


 あたまがふわふわして、ぜんぜんききとれない。

 ナツハはなんていっているんだろう?


「ナツハ、なにいってるかきこえないよ? さっきドクターにあめもらってね。それたべてからふわふわしてるの」

「ナツハももらってきたら〜? 」


 ? ナツハはなんでかなしそうなかおしてるのかな。

 ごめん、ごめんってあやまってる。なんでなんだろう?

 

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