14:風向き
「あまりキレイな手段で手に入れたものじゃないからな、早く手放したくてオークションに出したんだが、君のような奴の目に留まるとは。私もしくじったな」
いかにも悪徳政治家という顔でヴィンセントは皮肉げに笑う。
「残念だが、あの3枚以上に価値のある品はないよ。ここに飾ってる物もいい絵だが流石にそこまでじゃあないさ」
駅構内じゃ警備員も付けられないからね、と付け足す。
「チッ」
苛立ちを隠せないかのようにクロウが舌打ちをした。
落ち着き払ったヴィンセントとルシアンを睨みつけるクロウ。
三者はそのまま動かない。
アレックスの背に隠れてミラはそっと息を吐いた。
『大丈夫、ソーレンはきっともうクロウがこちらに来たのに気がついているはず。落ち着いて、状況を把握しなきゃ』
周りを見回す。一番近い出入り口は後ろにある従業員扉だが、少し距離がありミラの足ではクロウに気付かれず逃げ出す事はできないだろう。
クロウは広場に入ってから一度もこちらを見ていない。
女が2人いても何もできないと高をくくっているのだろうか。
アレックスは体勢を保ったまま動かない。
――ルシアンの合図を待っているの?
ヴィンセントとルシアンからは微かな嘘の匂い。
『市長は嘘をついてる?⋯⋯違う!演技をして時間稼ぎをしてるのね!』
そして夜風にのってミラが待っていた匂いが近付いてきた。
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