第26話 ペニシリンの製造
数日間は調べたメモを頼りにペニシリンを製造していく。
まずは、青カビの処理体が、これが結構手間のかかる作業だった。
青カビの生えているみかんの皮から青カビの胞子の部分だけを水に溶かしていくわけだが、まずは水から用意していかないとまずそうだ。
一応、水道水がこの屋敷まで来ているので、そこから使おうかと考えていたのだが、純粋な水のはずはない。
まあ、令和の諸外国にありがちな濁りや、これ飲んでも大丈夫かと言った感じの匂いなどはなく、実際に飲んでみても普通においしかったのだが、それでも何が溶けているかわからないにで、一旦沸騰してから冷まして使うようにした。
その水を使って胞子を溶かしていくわけだが、これはみかんの皮を手でこすれば簡単に胞子はみかんの皮からは剥がれるが、剥がれた胞子は水に溶けるどころか俺の手にべっとりなんて事もザラにあった。
とにかく作業が進まない。
メモには水に溶かした青カビから、ペニシリンを抽出していくことに成っているが、とにかく作業が多い。
始めはメモを取る際に読み飛ばしたために失敗したのだが、今欲しいのは水溶性のペニシリンと言われるもので、先の作業で青カビ入りの水溶液から、目的のものを分ける必要がある。
これは漫画から知れた手法なのだが、油、今回の場合菜種油が簡単に手に入ったので、それを使ってよく混ぜてから分離するまで待った。
脂の部分はいらないので、そのまま流しに捨てたのだが、これってはっきり言って問題なのではと捨ててから思った。
こういう場合の処理はきちんと業者にって、明冶にはそういう業者ってまだなさそうだし、少なくとも俺は見ていない。
後で処理方法も考えよう。
今はいいけど大量に作るように成ったときには絶対に問題にされるはずだ。
分離した水溶液から油だけを捨てて、更に先ほどすり鉢で用意した炭を砕いたものを入れてよくかき回して、ペニシリンを炭に付着させる。
どうもペニシリンって炭と相性がいいらしい。
そこから炭に付託したペニシリンから、炭を取り除く作業に入るが、まずは炭のままでも良いから、前に培養中の梅毒菌に試してみる。
試行錯誤を繰り返すこと数回だけだが、この数回が大変だった。
とにかく作業が面倒で、一つひとつの作業に時間がかかる。
待ち時間も多く出るから、並行してできる作業はしているが、それでも大変だった。
前に長野で買ってきた漫画のようには行かないな。
あ、漫画でも結構このあたり苦労していたことが書かれているが、コマにして数個、ページで数えると1ページもならないから、俺は舐めていただけだった。
成り上がるのもけっこう大変なんだなと、俺は地道に作業を繰り返して、使えそうなレベルのペニシリンの着いた炭の粉を入手した。
ここからは酸とアルカリを使って炭を取り除き、初めてペニシリンができるが、これまたここでも苦労する羽目になる。
いくら調べても具体的な数値がないので、目分量から酸やアルカリを加えていくので一回で成功などしない。
苦労したがその甲斐あって、俺はペニシリンを作ることに成功した。
最後の方は明日香さんやイルサさんにも協力してもらいながらだが、ペニシリンを量にして30mlくらいか、料理で使うあの大さじとかいう表現で大さじ二杯くらいの水溶液が目の前にある。
だが、この水溶液のペニシリンの含量は不明なので実際どれくらいの量を使えば良いのかこればかりはこれから試していくしか無い。
まずは安全性の検証からか。
ペニシリンのストックが大さじ二杯位しかないので、この後のことも考えて青カビの培養から、順次同じ要領でペニシリンを作っていく。
それと並行しての安全性の検証だが、どうしよう。
まずは少し俺が舐めてみた。
毒も量が少なければ大したことにはならないと以前聞いたことがあるが、これは絶対に『良い子は真似をしてはダメ』というやつだな。
一応、製造段階で、危険な物質が入り込むことはないので、どうこうなるはずもないが、少量でもあるし危険ではない……というか、薬を作っているので危険なはずはないが、一応けじめというかこの先動物を使っての実験となるが、近所の猫でも見つけてくるかな。
俺が探偵時代に何度か猫を抗生物質を注射で投与して救ったことがあるが、あれってはっきり言って違法だよな。
動物に対して医療行為は違法かどうかは知らないが、いくら治療と言っても獣医でもない俺が猫に注射をすれば虐待行為に問われかねない。
動物保護法とか言ったやつの違反になるが、流石にこの時代ではない。
でも、少なくとも本当に気まぐれなあの猫、俺をこの世界につれてきた猫以外に俺はまだ猫を見つけていない。
ネズミも、いるはずだが、見ていないし、何よりネズミを捕まえられるとも思えない。
猫が捕まえてこないかとも考えたのだが、困った。
まあ、今は増産するしか無いか。
と言っても、漫画でもあった話だが、俺の作ったペニシリンの薬効成分が有効な時間は短そうなのだ。
少なくとも、使う前には培養している梅毒菌を使って試験をしてからになるが、それほどの時間は許されないだろう。
そんな事を考えながら数日、ペニシリンの製造の方に注力していった。
ある日明日香さんから娼妓楼の店主が俺に会いたがっているという情報を得た。
さんざん世話になっていることもあることだし、俺はすぐに明日香さんを連れて娼妓楼に向かった。
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