25:TDW 大討伐ゲーム
「フミよね?」
「いや、気のせいだが?」
私はネコ仮面の仮面の下の瞳をまじまじと見つめる。仮面の下からでもはっきり見えるバチバチのギャルメイクに泳ぐ大きな瞳。柑橘系の香水。そして、この豊かな胸。フミで間違いないと思うんだけど......。
「あの、どちら様っすかね? お呼び立てしたつもりはないっすけど......」
「だから、本日デビューと言っている!」
ネコ仮面の登場に、みんなが固まっているとどこからともなく音もなく、小椋さんが彼女の肩に手を置いた。
「まあ、いいじゃないか。人は多い方がいい。それに、ダンジョン業界再興のきざしじゃないか。新人配信者だなんて。僕が歓迎しよう!」
小椋さんがいつの間にか運営側のようにふるまってネコ仮面を歓迎していて、木下さんは迷惑そうに見つめるも、相手は同じく業界を盛り上げようとしてくれている功労者。口出しできないんだろう。
「名月さんが言うなら、仕方ないっすね。許可しましょう......。 じゃあ、改めてダンジョン配信会社『Dtube』公式企画 東京ダンジョンワールド貸し切りツアーへようこそ! これから、みなさんには3つの企画に挑戦してもらいます! では、始めの企画!」
そういうと、木下さんがドローンを浮かして映像を映し出した。そこには企画名であろう「大討伐ゲーム」の文字が現出した。
「まず初めは、モンスターを狩って狩って狩りまくれ! 最強ハンターは誰だ! 大討伐ゲームだ! 名の通り、ダンジョン内のモンスターを多く狩った者が勝者っす。だけど、ただ雑魚を狩るだけではおもしろくありませんよね? 雑魚、中ボス、ボス......。それぞれにポイントが存在し、雑魚から1点、5点、10点と振り分けております」
じゃあ、ボスを沢山倒せばいいじゃない。いや、でもダンジョンにボスがうじゃうじゃいるわけじゃないもんね......。しかも、そんな軽い気持ちで倒せたらボスとは言えない。点数に見合った難易度ってことね......。
「制限時間は3時間といきましょうか。 それまでに、ここに戻って来て下さいね? では、ミッションスタート!」
大勢の配信者たちが遊園地を駆け巡る。私達も遅れまいと走り出す。みんな思い思いのダンジョンに入っていく。たしかにダンジョンの指定はない。私は人気のないダンジョンに入ろうとした。その手前には二人の影が
「あのネコ仮面...ていうかフミと、あのパステルシャツ見覚えが......」
「あ! お姉さん!」
「たしか、ヨハンくん」
「覚えててくれたんですね! 嬉しいです! 沢山狩って、いっぱい盛り上げましょうね」
可愛らしい童顔に見惚れていると、ネコ仮面が走って割り込んできた。なんか、嫉妬?のようなむくれたような表情をしている。
「一番になるのは、このネコ仮面様よ! では、先に失礼!」
「ちょ、ちょっとあんた!!」
あの子、突っ走ると先が見えなくなるときあるんだよな......。大丈夫かな?
心配だけど、ダンジョン配信のしんどさはあの子だってわかってる。きっとそれなりに練習はしてきているはず。私だって、負けてらんない!
「ようし、こうなったらなんとでもなれだ! ダンジョンへレッツゴー!」
無人改札をハードルのように飛び越え、私たちはダンジョンの中へと入窟していった。その中は、スライムやゴブリンといった雑魚敵が潜む音がよく聞こえる迷宮が広がっていた。典型的な迷宮型のダンジョンか。迷宮を探ると、ひときわ目立つのは石像だ。所々の隅に配置されていて、私達を監視しているようなその目つきに私は少し物怖じしてしまう。
「ただのガーゴイルだろ? 徘徊者に比べたら、よく見るだろ」
「そうだけど私、こういう動く石像系苦手なのよね......。動く奴とそうじゃない奴の見分けがつかないっていうか......。不気味って言うか......」
「なら、僕に任せてよ。こういうのはね......」
そう言うと、なぜか付いて来ていたヨハンくんが、クマのポーチから入るはずもない大きなチェーンソーを取り出し始めた。
「全部ぶっ壊せばいいんだ!」
可愛らしい顔から想像もつかない狂気的な顔と言動に、茫然としていると彼は軽やかなステップでチェーンソーを振り回して石像を壊し始めた。そのせいか、石像のガーゴイルが動き始めて、ヨハンくんはもとい、私達さえも襲い始めた。
「なんで私も襲われてんのよ!」
とはいえ、点数を稼ぐにはガーゴイルを倒すしかない。私は自慢の鞭で、ガーゴイルを破壊していき、1点、また1点と点数を稼いでいく。
「他の配信者たちは!?」
:ネコ仮面は3点
:ふうりんちゃんもう10点?
;だいたい3~5点が多いかな?
:1人ボス5体も倒してるぞ! てことは、50点!?
:誰? もしかして京たん?
京、ってあのスーツの女の子!?
あの子、雑魚には目もくれずにダンジョンボスを5体も!?
「私は、今のでようやく6点か......。これは、負けてらんないわね」
「よーし、僕も京に負けずに頑張ろうっと! じゃあ、また会いましょうね! つばっちゃん先輩!」
そう言うと、ヨハンくんはチェーンソーを振り回し石像をぶっ壊しながら嵐のように去っていった。私に迷惑だけかけてどっか行っちゃったよ......。
「やっと面倒事が減ったか。つばっちゃん、先を急ぐぞ」
「え、ええ」
私達はガーゴイルをよそに、ダンジョンの深部へ向かっていく。狙うは、京ちゃんと同じように、ダンジョンのボス。きっと、地下にいるはずだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます