第13話「暁闇」
魔獣の巣の入り口へ辿り着いた僕達。
ここからは僕とベルファゼートの二人のみで行かねばならない。
僕は暗黒剣ラグナ……は正体露見の危険があるので、オルランド家所有のそこそこ名のある名剣を召喚し、腰に携えた。
「では行ってきます」
「行ってまいりますわお父様」
「むぅ、二人とも気をつけてな」
ブリザリオ伯に見送られ、僕らは洞窟へと歩を進めた。
洞窟内は黒の大紋章の力によるものか、割と明るく薄ぼんやりとしている。
「ルシヴァ様、怖い」
僕の服の袖を掴んで震えるベルファゼート。
くっ、可愛い……じゃなくて、可哀想にこんなに怯えて、僕がしっかり守らないと。
「キィ!」
突如天井から魔獣の襲撃。
蝙蝠の様な翼を背に生やした鼠の魔獣。
2M程の巨体が落下する様に飛来。
対空技"濡烏(ぬれがらす)"
上からの襲撃を羽の様にかわしつつ、僕は落下方向へと刃を流し、敵を斬り落とした。
重力の重みと落下のエネルギー、それが乗った斬撃に絶命する魔獣。
はじめからこのレベル。そこまで強敵ではないが、先を考えると……
「ベルファゼート様、この試練は予想よりも過酷かも知れません。僕から絶対に離れない様に」
「……宜しければ、ベルと呼び捨てにしてくださいませんか?」
「え?呼び捨て?失礼じゃないかな?」
「そんな事ありませんわ、私達は婚約者同士ですもの。失礼なんて言う奴がいたら、ぶち殺して……」
んん?
「ああん、もう!ベルって呼んでくださらないなら、もう先には行きませんの!」
「えぇ?うーん……わかった!じゃあ、行くよ……ベル」
「うふふ、かしこまりましたわ、ルシヴァ様❤︎」
なんか、凄い上機嫌になったベル。
まあ良かったのかな?
それはさて置き、気を引き締めないと。油断は禁物だ。
そう決意を新たに先に進む僕は、この時は気付いていなかった。
僕の後ろを恐々と健気に付いてくる、いたいけな少女の本性に……
-時を同じくして洞窟入り口-
「うむぅ、今頃は魔獣とあいまみえている頃だろうか……ルシヴァ殿、本当の敵は貴方のすぐ側におりますぞ。お気をつけくだされ」
ブリザリオ伯はそう呟いた。
-洞窟内部-
洞窟内は思っていたより広く、僕は念の為、目印となるよう手帳のページを千切り、数メートル毎に落として進む。
すでに僕らが入ってきて800mほど来ただろうか。
突如、地面を駆ける音が聞こえ、角の生えたうさぎ、二足歩行の鹿、空飛ぶ犀と言った複数の魔物が、洞窟の奥から押し寄せてきた。
「ベル、少し離れてて」
「嫌ですわ!」
「うん……うぇえ⁉︎」
「わたくし、先程ルシヴァ様から絶対離れないでとお願いされちゃったんですもの、うふふ」
まずい、余計な事言ったかも……
仕方ない。
僕は剣を鞘に納め、三体をギリギリまで引き付けて、横一文字に刃を薙いだ。
対多数用暗黒剣技 "斬影"
荒く薙いだ居合いの一閃が、三体の首や頭の付近をチョンパする。
精密さに欠けるが、他勢を相手取るには最適の技だ。
しかし、奥からまだまだ魔獣が湧いて出てくる。
その殆どが大型の魔獣。
このままでは埒が開かない。
「仕方ない、紋章を使うか」
紋章は基本的には所有者の身体に刻まれている。
殆どはレイトの様に腕が多いが、僕の紋章は少し特殊な場所にある。
身体から迸る黒いオーラ。
「ルシヴァ様?」
「ベル、離れてて」
「は、はい……」
そう言って振り返った僕のオーラを見て、彼女は驚きの表情を浮かべ、今度は言う事を聞いてくれた。
僕の紋章は発動する事で暗黒ヂカラを生み出す。
どのみちこの洞窟攻略の為には紋章の力が不可欠。
なら、ベルファゼートには見せても問題ない。
……暗黒ヂカラまでなら……
僕は黒いオーラを纏った斬撃で大型魔獣を薙ぎ倒して進んで行く。
「黒の大紋章まであとどれくらいだい?」
僕の問いかけにベルファゼートは答える。
「洞窟の明かりがどんどん薄れていきます、あともう少しかと!」
彼女が答えたのと同時に、これまでの比ではない巨大なピンク色した熊の魔獣が襲いかかってきた。
「わかった!ごめんよベル」
「きゃっ、ルシヴァ様⁉︎」
僕はベルファゼートを抱えて、足に溜めていた暗黒ヂカラを解放!
漆黒の甲冑無しなので狙った場所への跳躍は無理だが、目の前の熊の魔獣を飛び越えるくらいは全然大丈夫。
「ルシヴァ様、あそこですわ!」
ベルファゼートの指差すのは、いかにも貴重な何かがありますよって、祭壇の様な建物。
あそこに大紋章が祀られているのか。
あとは、そのままの体勢で下降するだけ……なのだが。
「あ、ヤバっ」
「へ?きゃああああああ」
暗黒ヂカラの勢いが強過ぎて、下降の最中で回転が掛かってしまう。
やっぱり暗黒騎士の甲冑無しじゃ制御が不完全だった。
勢いはそのままに、僕とベルファゼートはきりもみ状態で突っこみ、轟音と共に崩れ行く祭壇。
「痛ぁ……」
「……」
瓦礫を掻き分け、崩れた元祭壇から這い出る僕とベルファゼート。
「大丈夫かい?ベル。ごめん僕が未熟なせいで」
「気にしないでルシヴァ。それよりあれをみて」
あれ?なんか……
ベルファゼートが指差す方を見ると、そこには煌めく真っ黒な紋章が浮かんでいた。
「これは……」
「我がロックス家の先祖、漆黒の魔女と呼ばれたマリアンナ様が、偉大なる王より授かった黒の大紋章"暁闇(あかつきやみ)"よ」
その説明を終えたあと、ベルファゼートが大紋章に向かって進み出て僕に振り返ると、妖艶な微笑みを浮かべながらこう言った。
「あたしの紋章……素敵でしょ?」
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