第2話 エルガラード

 何もない草原。

 地平線の向こうには大きな建物が見える。

 それはよくMMOで見たファンタジー的な城の形をとっている。

 ケンシンは腰にロングソードと革の盾が装備されている事を知る。

 

「まさかな」


 なんとなく、MMOに似ていたので、ステータスオープンと呟いてみた。

 すると、本当にステータスが表示された。

 眼の前に黒い板のようなものが出現した。

 そこに表記されているステータスはMMOで育てたゲームプレイヤーとまったく同じステータスだった。

 レベルは???と表記されている。

 ジョブは空想剣士。

 スキルは空想の創造。


 右手と左手をグーパーさせる。

 ちゃんと動く。

 現実世界の肉体はなよっとしていて筋肉などついていない。

 だが、現在、異世界のケンシンの体は細マッチョになっている。

 衣服は黒いシャツと黒いジーンズのような長いズボンだ。


 試しに走ってみると、体が思うように動く。

 頭の中で、MMOで動かしたような感覚とだぶる。


 マウスとキーボードで動かしたMMOの行動スタイルがこの異世界に投影されている。


「つまり、あのゲームと同じ動きが出来るのか!」


 その時、お腹がグーっとなった。

 

「MMOと違うのはお腹が空くという事か」


 ステータスの空腹ケージが減り続けている。


「だが、草原しかないな、MOBすら見えない、木々すらない、虫ならいそうだけど、さすがに食べる気はしないな、そうか、空想の創造だったな」


 頭の中に何かを展開している気がする。

 それはPCモニターのような映像。

 頭の中だと思っていたそれは、眼の前に表示されていた。

 眼の前にpcモニターのようなものが表示される。

 マウスが出現しキーボードも出現する。

 半透明であり、浮いている。

 だが、しっかりと固定されているようだ。


「これって、もしかして、3Dモデリングと同じじゃ」


 まず、メッシュ【形を創造】ベベル【形を丸っこくさせる】スケール【形を整える】


「出来た。リンゴだ」


 リンゴが出来上がる。

 次にシェーダーを使ってマテリアルを追加していく。


「ふむ、ただの赤色よりもっと複雑にしたい」


 本物に近づける。

 そうして、出来上がったリンゴを。


 File項目を発見する。

 まさかとは思いつつ、外部データに出すという項目をマウスでクリックすると。

 眼の前にリンゴが出現した。


「まじか」


 そうして、おそるおそる齧りつくと、口の中に本物のリンゴの味が広がる。


「うめええええ」


 空腹ケージが満腹になっていく。


「これなら、あの城まで到達できそうだ」


 ケンシンはエルガラードの世界を楽しもうと決意する。

 コミュ障がどのように作用して、またトラブルが発生するかは、やってみてから考えた方が良い事をケンシンは知っている。

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