第9話 ヴィンドセルム王国の悲劇

 テリシア・ヴィンドセルムは唯々茫然と眼の前で意気消沈としているデルフドを見ていた。

 黒竜騎士団の団長は見るも無残に、ニチホン街を攻略できずに敗北して戻ってきたとマーカスが言っていたが。


 元大将軍のマーカスの話によると、ニチホン街には【災厄】が存在していたとの事。


「つまり、その【災厄】の1つが起きたという事ですね? デルフド卿」


「はい、災厄の1つだと思います。異世界人、魔王、勇者、そう言った類の話に近いと思います」


「そうですかー出来れば配下にしたいですね」


「それは無理です」


「なぜ?」


「姫はあれを見れば絶望しか頭になくなります」


「これ、姫に無礼だぞ」


 テリシア姫の周りには10人くらいの家臣達が立っていた。

 彼等は10個ある領地の領主であり、ヴィンドセルム王国の支えとなっている人物達。

 その上には国王がいる訳だが、現在国王は病気になっている。


 テリシア姫は10人の家臣に支えられているのだが。


「姫、ここは我がニチホン街を制圧してこよう」


 そう呟いたのは、ギャスラル領地のギャルフラル卿であったのだが。

 それを笑って一蹴したのが。


「はて? 黒竜騎士団が全滅してなぜあなたが勝てると?」


 その冷徹な声の持ち主は元大将軍のマーカスであった。


「ま、マーカス、落ち着いてください」


 テリシア姫がなだめるのだが。


「まず、黒竜なのですが1人の装備の操り人形に食われました」


「は?」


 その場が静まり帰った。


「装備の操り人形とは、どういう意味なんだ?」


「名前の通り、装備が動いていたのです、まるで生きているように話して語って笑ってです」


「何かしらのスキルではないか!」


「だから、言っています。相手は普通ではありませんと」


「だが、それくらいなら数の暴力で」


「こう言って良いでしょうか、堅物グレンジャーがいました、あと、ドラゴンアッシャーの剣が動いていました。わしはあの動きが偽物だとは思えん、まず本物の動きは見た事が無いんだがのう」


「だとしてもだ。こちらは100万の兵士がいるんだぞ!」


「全員を殺したいなら好きにせよ」


 マーカスが冷静に呟いた。


「わしの力でも倒せるとは思えんかったし、まず2人を倒せる自信はない、後、その上には装備の王と今呼ばれている人物がおってな、そやつが一番強い、だがそれよりも強い少女がおる、もはや倒せるわけがない」


「ならどうすればいいんだ」


「まぁ、落ち着いてくださいな」


 それは現在大将軍であるダーカーザックだった。

 若造でありながら、黒いシャツと黒いズボン。

 ロン毛の髪形。

 眼はトカゲのようになっており、ドラゴンスレイヤーの力を持っている。

 ドラゴンを無数に殺して来たのだろうとマーカスがよく言っていた。


「まず、ドラゴンアッシャーなら、遠い師となるはずであった人物、とても興味深いです」


 ダーカーザックがそう呟くと。


「じゃあ、どうすれば良いか考えましょう」


 テリシア姫が皆に椅子に座るように即すと、デルフド卿だけが膝を屈して震え続けていた。


「い、一番怖いのは、巨大な銅像です!」


「なんだって?」


「あれはもはや装備の域をはずれています!」


「それは同意する」


 マーカスがも呟く。


「それが、30体もいるんです。あと1体だけ隊長らしく巨大で恐ろしいんです」


 デルフドの目が震えていた。

 今にも泣き出しそうだとテリシア姫が悟ると。

 1人の老齢の男性が笑っていた。


「まさかな、あれか、装備の王とはあの伝承から来てるのか?」


「それはどういう意味ですか、イエロード卿」


「ふむ、説明したいのだが、ここに1冊の本を召喚しよう」


 手の平に1冊の本が出現する。

 そして、本を巨大化させると。


「この絵を見て欲しい」


 そこには30体の巨大銅像が1人の青年王に膝ま付く姿があった。

 その青年王の隣には1人の白銀の美少女が笑顔で隣に立っている。


「これが、遥か昔に起きた装備の王の世界統一の話です」


「どういう事なんですか?」


 テリシア姫が呟くと。


「世界は一度装備の王によって統一され、後に勇者と魔王の戦争で分断されただけなんです。このヴィンドセルム王国も元は装備の王の属国、いや植民地です!グルスタン王国も、ベイジアナ王国も、その他の国全てが植民地だったんです!」


「だが、あの伝承の起源はこの大地ではなく、別な島だと聞いたことがあるんじゃがのう」


 マーカスが呟くのだが。


「いえ、ニチホン街は元々島です。大陸の変動によってこの大陸に融合したんです。そうか、それに気付かなかったんだわしらは、ただの街だとばかりに」


「つまり、あそこの周りにある川は」


「そうです、元々は海だったんですよ」

「えーと」


 テリシア姫の脳裏が混乱にまみれている中。


「つまり、姫、これは侵略が始まるという事です。彼等を探しましょう」


「誰でしたっけ?」


「姫お忘れですか? 忘却の彼方に忘れ去られた伝説の3人ですぞ」


「ああ、あの3人ですね!」


 テリシア姫の脳裏に浮かぶのは、国王が彼等を異常者と認定して追放した事。

 彼等とは、異世界人。

 異世界からやってきた彼等にはチート級の力が宿っており、それはスキルとか魔法では表す事の出来ない力。

 彼等はそれを超能力と読んでいたが。


「彼等はどこにいますか!」


 そうテリシア姫が叫んだのであった。


















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