第四節:対決! 封印の記録と生徒会の秘密会議!!

 翌日。

 放課後の綾木学園。

 探検隊部の部室に、一通の茶封筒が滑り込んできた。


「“生徒会庶務”、お、ついに来たか」


 田中口が封を切る。

 中には「特別監視指定通知」。

 そしてもう一枚、手書きのメモが添えられていた。


 『ご注意ください。“あそこ”は、まだ閉じられてはいません』


「いやいやいや、これ完全にホラー映画の冒頭に出てくる警告文でしょ!?」


 菜奈が封筒ごと机に置いて叫ぶ。

 しかし、麗佳の目は、逆に輝いていた。


「見て! これ、“生徒会公印入り”よ!? つまり、われら探検隊部が、“学園ミステリーの公式戦”に突入したってこと!」


「待って。“公式戦”って言い方おかしいでしょ!? これどう見ても不穏書類なんだけど!」


 栂池はぬるい缶コーヒーを開けながらつぶやく。


「でも……つまり、あそこの存在を知ってる人間が、生徒会側にいるってことだよな」


「もしくは、“向こう側”の何かが、生徒会を操ってる……」


 蔵王の一言に、部室が一瞬だけ静まり返った。

 だが、その沈黙は長く続かなかった。


「よし、行きましょう!」


「どこに!?」


「生徒会室! 正々堂々、対話と交渉よ!」


 麗佳がスケッチブックを抱えて立ち上がる。

 開かれたページには、「プレゼン資料(予定)」の文字と共に、“亡霊と思しき影の写真”、“謎の刻印”、“蔵王による異様にリアルなスケッチ”が貼られていた。


「……すごい、本当にテレビ番組の構成案みたい……」


 菜奈は呆れつつ、頭を抱える。

 そのとき、部室のドアがノックされた。


「失礼します。生徒会よりご連絡を……」


 現れたのは、清楚せいそな二年女子。

 冷たい眼差しと事務的な口調、どう見ても“探検隊部とは絶対に相容れなさそうなタイプ”だった。


「本日十七時、探検隊部より三名、生徒会室までお越しください。特別監視指定に関する説明、および、“行動記録”の開示を求めます」


「行動記録って……まさか、あの映像のこと!?」


「もちろん、提出は任意です。ですが……ご提出いただけない場合、今後の活動に制限がかかる可能性があります」


 そう言い残し、彼女は冷ややかに微笑んだ。


「それと、“封印扉”については、それ以上深入りなさらぬよう。“あなたたちの代”の問題ではありませんから」


“あなたたちの代”。その言葉が、探検隊部の面々の胸に、じわじわと波紋を広げていった。


 ついに、生徒会室での直接対決が始まる。

 スケッチブック片手にプレゼンを構える麗佳。

 ツッコミ用メモをこっそり仕込む田中口。

 背中でカメラを回す蔵王。

 菜奈は、深く深呼吸をして思った。


(わたし、いつの間にこんな“役割分担”に馴染んでしまったんだろう……。)

 

 生徒会との謎の対峙――ついに、始動する。

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