『Wherever you are』──ロックが囁く愛のうた

 ONE OK ROCK は、言うまでもなくロックバンドの代表格。

 激しさ、衝動、感情の爆発──

 彼らの音楽にはいつも、強烈なエネルギーが宿っています。


 だからこそ、初めて『Wherever you are』を聴いたとき、

 その静けさに、私は驚きました。


 これはシャウトも激しいバンドサウンドもない、

 ただただ感情が静かに積み重なるバラードです。


 Takaの力強くも澄んだ声が、少しずつ心に染み込み、

 気づけばすっかり包まれていました。


 この曲は結婚式の定番ソングとしても有名で、

 多くの人が涙を流したラブソングでもあります。



 英語のフレーズはとてもシンプル。

 でも、そのシンプルさが心に響くのです。


「どんな時でも笑顔にしたい」

「どこにいても君のそばにいる」


 ──そんなまっすぐな約束が、難しい言葉ではないからこそ、胸に届きます。


 でも、私が一番好きなのは、やっぱり日本語のパート。

 出逢った日と、今日という日。どちらも二人にとって「記念日」だと歌うその歌詞は、まるで詩のようで、声に出しても心地よく響きます。


 そして何より──

「心」と書いて「きみ」と読む、その言葉の重なりが本当に美しいのです。


 直接的に「あなた」と言わず、「僕の愛の中心にはいつも“心”がいる」と表現することで、大切に想う気持ちそのものが、そっと手渡されるような感覚が生まれます。


 さらに、この曲には違うバージョンの魅力もあります。


 原曲では、抑えられた感情が少しずつ高まり、

 最後にはまるで波のように溢れ出す。

 その情熱に心を打たれます。


 一方、アコースティックギターでの演奏になると、

 ぐっとパーソナルで、柔らかな雰囲気に変わります。

 まるで、二人だけの空間で静かに語りかけられているような時間。


 そして何より、

 Takaはどちらの表現でも、完璧にその世界を描き切っている。


「ロックバンドが、こんなに繊細なラブソングを歌うなんて」

 そう思わせてくれる一曲。


 ロックは叫ぶだけじゃない。

 時に、「そっと隣にいる」と囁くこともできる。

 そんなことを、改めて感じさせてくれる曲でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る