第16話 女の戦い(話し合い)

 沙莉ちゃんと偶然遭ってから1週間程経った。私は麗杜君の妻、彼女は麗杜君の後輩で彼に好意を寄せているようだ。しかし、彼女の本音を知らなければならない。そうしなければいけないと、思っている。私のこういうときの勘はよく当たるので今回も自分の勘を信じよう。

 そして、あのデートからちょうど1週間。私は沙莉ちゃんと会って話すと約束し、今日その日を迎えた。麗杜君にはそのことを伝えると「自分は何もできないけど…それは申し訳ない。けど、男の前だけでは話せないことをしっかりと話してきて」とのことだった。

 そうして、今現在私は待ち合わせ先の公園に向けて歩を進めている。緊張する。なにせ、初対面で喧嘩したような感じだ。本当に気まずい。

 公園に着いたら、ベンチに座っていた。ここの公園は人家からも少し遠く、ほとんど人も来ない。そのため、土日でも静かなのである。

「お、お待たせ…した、よね?」

「いえ、そこまで待っていません。」

 沙莉ちゃんは、そっけない態度で接して来たので、多分あの時のことを根に持っているんだろう。

「う、うん…そ、そっか…」

「それで、さっそく本題に入るんですけど、智華さんと麗杜先輩の関係ってどういう関係なんですか?」

 私が公園に着いてから30秒。いきなり本題を聞かれて驚いたが、一瞬にして冷静になり答えた。

「この話ね、学校の人達には内緒にしてて欲しいの」

「そういうことなら、言いませんよ」

私と麗杜君は先輩と後輩の関係性だった。そんなある日、私は親に大学の内定を取り消された。」

「えっ…、そんなことが…」

「で、私は行く宛もないのに家を出た。雨の日にね、それで川に身を投げてもう楽になろうって思ってた。そこで、麗杜君に救われた。そうして、今は…ここから先が本当に黙っていてほしいところなんだけど、それで助けられた私は両親と縁を切って彼と……け、結婚…したの」

「ふぁ!?え?ちょ!どうして…!」

 話し終えたときには沙莉ちゃんはとても驚いていた。

「それは…あの当時、私は楽になれるんだったら、どこでもいいって思ってた。でも、私は麗杜君のことが好きだった。それに彼も私のことが好きだったから、そのことも相まって結婚することになったっていうのが事の顛末かな?」

「そ、そんなことが…ほ、本当に…すみませんでした!」

 私を聞き終えた、沙莉ちゃんは私に謝ってきた。

「ううん、気にしないで沙莉ちゃんも私達の事情を知らなかった訳だし…」

「で、でも…先日の数々のご無礼を謝りたかったので…」

「そういうことなら…、それで沙莉ちゃん。麗杜君のどこが好きになったの?」

「そうですね…やっぱり…」

 こうして、私達の蟠(わだかま)りはなくなり、仲良くなったと思う。そして、話がまとまった後に何を話したかと言うと…

「そうですよね〜!やっぱりそうでしたか!」

「うん!うん!そうなのよ!麗杜君って見た目に見合わずね…!」

 そう、麗杜君の話だった。私達は麗杜君のことが好きなので自然と話があってきた。それに、私達の趣味、好きなものが同じだったこともあり更に仲良くなり、友だちになった。

 一方で、その頃の麗杜君は…

「は、ハクションッ!!これって、花粉症か?」

 麗杜君は私達の関係が良くなったことを聞いたら喜んでくれるのだろうか。私は気分が良くなってルンルンで家に帰って、今日のことを話そう。

 今日は話すネタが多いから、今晩は食卓が楽しくなりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る