第22話
「ジェンソン君。報告書はこれだけかね」
マキソン国務長官の眼は冷たかった。
日本で魔石とダンジョンによる発電が発表されて長官の命により日本政府に質問状を送ったり、現地の発電所での調査も行われた。しかし、その内容はかんばしくないものだった。
政府に質問しても民間への介入はコンプライアンスとして望ましくないので、とか言われる。
まったく日本政府はこの後に及んでこの事態を軽く考えているのだろうか。
それとも、エネルギーを自給出来ない日本がこれを護ろうとしている結果だろうか。
「とにかく、我々のエネルギー政策にも重大な影響を及ぼす事になるのは明白だ。
この技術の詳細と出所をより調査せねば」
「それが、この技術ですが公開特許として出願されています」
は、公開特許?これがどれほどの価値を生むのか判ってるのか。
「ただ、その内容が我々には理解不能なのです」
「理解不能とは?」
「蒸気ボイラー事態はありふれたものなのですが、この魔方陣と魔石の効果を我々が再現しようとしても出来ないのです。
しかも、宗教らしきお祓いをするとか、ダンジョンにお参りするとか。
科学的に意味の無い事が特許手順に載っているのです」
「宗教がなんの関わりを持つんだ!」
「それがこの発端になったのが、岩手北部に信徒を持つ民間信仰の研究によるものらしいのですが、それも宗教とも言えない形の無い信仰らしいのです。
どうも日本の神道の流れを組む信仰らしいのですが、この神道と言うのもその土地その土地で祀っている神が違ってたりで我々の常識では判らず、その信仰している者達についても昨今の過疎化や高齢化で各地に移っていたりで良く判らないんです。
信仰そのものも数年に一度お祓いの儀式があるらしいだけで、それに参加している者も別に信徒でなくてもかまわないらしく、正式な組織とかも無いようなんです。
だいたい、日本人はほぼ無信仰とか言いながらクリスマスやってて葬式は仏教、結婚は神道かキリスト教なんていう我々にはさっぱり判らない社会ですから」
石油メジャーから突き上げが来てるこちらとしては一刻も早くその中身を知りたいところなのだが。
「ただ、今回提供された魔方陣だかはたまたま出来たもので再現はあちらでも難しく、年内にあと一機適用できるかもとアナウンスがありました」
一度出来たのなら幾らでも出来るだろうに。もしかしてあちらでも石油メジャーとの軋轢を懸念しての発表かも知れないな。
エネルギーを石油に頼っていて、自国生産の出来ない日本としては国をあげてこれを護るつもりだろうし、他国干渉は拒否するだろう。
「とにかく、その民間信仰だかに潜入するなり他かの国に先駆けて情報を探るんだ」
そう言われたが、なにしろ実態らしきものも無いしその民間信仰のあると言う辺りは過疎地で我々のような容姿の者が行っても目立つだけなんだが。
バックパッカーにでもなりすましてうろつくのか?
日本も警戒してるだろうし何人も送り込むには難しい地域だ。それを一人や二人で探すにはかなりの広さである。
私は頭を抱えるのだった。
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