13話

◆海で

 翌日、勇は愛の自宅前にいた。


「よっし」


 玄関の呼び鈴を鳴らす勇。すると、愛の母親が出てきた。


「あら、勇くんじゃない」

「あの、愛ちゃんいる?」

「ちょっと待ってね?」


 1人取り残された勇の耳に、愛の母親と愛のやり取りがわずかに聞こえる。


「勇くん、来てるよ?」

「えっ?嘘!」


 更に、恭の声も聞こえた。


「勇兄ちゃん?俺も行く!」


 待つ勇は、呟いた。


「恭くんもいたんだ」


 近づく足音。それは、2人分のようだった。そして、勇は愛と恭の姿を目に映す。恭が満面の笑みを浮かべ、言った。


「勇兄ちゃん!」

「恭くん!元気そうだね?よかったよー」


 奥から、愛と恭の母親の声が。


「会えてよかったわねー、恭」


 そんな言葉にニコニコする恭。それを優しげに見る愛。勇は、その愛に本題を切り出した。


「ね!愛ちゃん!映画、無事に観れたよ!!愛ちゃんのおかげだよー。楽しかった!ありがとう!!」


 愛は、底なしの明るい笑顔を勇に見せた。


「そう!よかった!!」


 勇は、その返答を受け言った。


「お礼したいから、近いうちに遊びに行かない?愛ちゃんの好きな所にさ!」


 愛は、驚いた表情を見せたが、すぐに思案して返答した。


「海、行きたいなぁ」

「海!いいねっ!行こ!!」


 愛の横から恭が言った。


「俺も行きたい!」

「うん!行こう!!」


 そして、後日一番近くの海に勇、愛、恭が集まった。小さな雲が所々流れる空の下、他の海水浴客も大勢いた。そんな光景を見つつ、勇は言った。


「今日は楽しもう!!」


 そして、貝殻拾いや、砂遊びを砂浜で存分に楽しんだ後、海に足を浸す3人。恭が勇に水をかけてきた。


「うぉっ!やったなー?恭くん!!」


 そして、お返しとばかりに勇は恭に水をかける。


「わー!勇兄ちゃん冷た!!」


 水のかけあいは熱を帯びるが、和やかな雰囲気が流れる。愛は、それを穏やかに見守っていたが、次第に勇と恭からの水がかかってきた。


「やだ、もう!勇くん!!恭!!」


 そして、愛からも水が勇と恭にかけられた。


 そんな水かけの楽しい喧嘩は、しばらくすると終わる。愛が言った。


「ああ、楽しかった!服びしょ濡れだね?でも、涼しい」


 勇は笑った。


「そうだねっ」


 その勇の視線の先には、下着がわずかに透けるティーシャツ姿の愛が。顔が紅潮しかける勇。しかし、その目の前に激しく点滅するセイブ・ストーンが。勇は我にかえり、こう言った。


「どこかで、プラネットクラッシャーが?」


 周囲を見渡しても、バイオレットまたは充、オレンジまたは彩の姿は見えない。勇は再び口を開く。


「近くなのかも!探して、戦わなきゃ!!」


 そして、愛と恭に手を合わせながらこう続ける。


「最後まで遊べなくてごめん!いつか、埋め合わせするから!!じゃあね!無事に帰ってね!!」


 そうして、愛と恭の返答を聞かずに勇は自らの自転車に走り、乗り込んだ後、海を後にした。その小さくなっていく背中を見つめ、愛は言った。


「埋め合わせって、もう十分遊んでもらったよ。勇くんこそ、無事にお家に帰れますように」


 そして、恭の方を見て続けた。


「恭、帰ろ?」

「うん」


◆痛みを受ける

 勇は、セイブ・ストーンの導く先まで自転車を走らせた。すると、視線の先に涼と晴の姿が。


「涼!晴!2人もわかったんだね?」

「うん!」

「ああ!」


 そして、2人の視線の先にいたバイオレットとオレンジを2人と共に見た。勇は叫ぶように言った。


「変な事はさせない!いくよ!!」


 そして、勇、涼、晴の揃った声が響く。


「解き放て!守りの力!!」


 そして、お決まりとなってきた名乗りも辺りに響く。


「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」

「流るる水は大いなる癒し。アースセイバーウォーター」

「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」


 更に、この3人の揃った声は、3人に気合いを入れた。


「レッツ!セイブ!!」


 戦場は、初めて来た公園であった。勇の近所の公園より広い公園だったが、住民の憩いの場という事が見て取れる雰囲気に、ウイングは、ここを壊されてはならないと、強く思った。


 オレンジは言った。


「まったく、好きにやらせてよ!」


 ウイングは返した。


「悪いけど、そうはさせない!!」


 そして、ウイングは翼を最大限に開く。そして、羽根を散らす。散らされた羽根は盾となり遊具やベンチ、植木などを包む。


 バイオレットは、それを見て嘲り笑う。


「おい、それを守るのか?」

「そうだよ!みんなの大事な物でしょ?」

「はっ!」


 更に笑い、バイオレットは上空高く飛び上がり、急降下してくる。ウイングは言った。


「な、何を?」


 ファイアは言った。


「地面を壊す気だ!」


 ウォーターも言った。


「間違いないよ!!」


 ウイングは叫ぶ。


「駄目ー!!」


 そして、バイオレットが着地すると思われる所まで急ぐと、ウイングは仰向けになった。


 ウォーターは言った。


「なるほど!ウイング自身が地面の盾に!!」


 それを聞いたオレンジは言った。


「邪魔されてたまるもんですか!!」


 そして、ウイングの元に行こうとする。それを見たファイアは言った。


「そうはさせねぇぜ!」


 そして、ファイアはウォーターと共にオレンジの前に立ちはだかる。オレンジは言った。


「あんたら!邪魔よ!!」


 一方、バイオレットは叫ぶ。


「アースセイバーウイング!俺様に壊されたいらしいな!!お前諸共、地面を壊してやる!!」


 そして、ウイングめがけて落下の勢いも借りたパンチをバイオレットは見舞った。そのバイオレットのパンチをウイングは右手で受け止める。更に左手を添え、叫んだ。


「壊させはしないよ!!うおおおおっ!!」


 バイオレットは、逆立ち状態になり、体重をその拳に乗せる。そして、バイオレット自身の悪しき力を集中させる。ウイングは、右腕の痛みに顔を歪めた。しかし、こう声を上げた。


「痛い!けど、この痛みは、僕が引き受ける!僕の守りの力!バイオレットを押し返して!お願い!!」


 その声でウイングは光に包まれる。その光は、バイオレットの悪しき力を中和していく。バイオレットが今度は顔を歪める。


「くそぉ!力が抜けていく!!」


 バイオレットはウイングの隣に倒れた。その様子を見たオレンジは声を上げる。


「カラミティ!バイオレットの力になれ!!」


 カラミティはバイオレットの所へ行き、吸収されていく。バイオレットは言った。


「力が戻って来る!やれるぜ!!」


 バイオレットは立ち上がる。ウイングは言った。


「カラミティを。そんな事もするのっ?」


 ファイアは言う。


「きりがねぇ!!」


 ウォーターは言う。


「一気に片付けるしかないんだよ!!」


 その声に、ウイングも立ち上がる。そして、言った。


「ウォーター!ファイア!僕の盾使って!そして、必殺技をっ!!」

「うん!」

「ああ!!」


 そして、盾を得たウォーターとファイアは同時に言った。


「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!」

「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」


 バイオレットとオレンジは、膝をついた。そして、充と彩へと姿が変わった。

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