B

 視界には、一面の宇宙。辺りには細かい草が、薄く光るような色をして生えている。無音がその世界の全てで、耳元で聞こえる自分の息だけが、確かな音だった。

 体が重い。何故だろう。故郷を発ったときは、もっとずっと軽かったのに。今はそれよりもっともっと軽くていいはずだ。試しに立ち上がって跳んでみれば、地球よりずっと高く跳べるだろう。

 だが今の彼には、立ち上がる気力さえない。


 何を間違えたんだろう。

 ——間違えたのは、すべてだったのだろうか。


 ずっと、頭の中で駆け巡る。生まれ育った地や、両親、弟。

 ただ楽園を夢見て学んでいた学生時代。


 何故気付かなかったんだろう。自分が生きた今までの人生の中で、絶望するほど苦しみが続いたのか? そんなことはない——楽しかった。

 友と通った学舎も、ずっと面倒を見てくれたあの家庭も、幼い頃たくさん遊んだ林や、公園や、

 それだけでどうして満足できなかったんだろう。


「青い…」


 目の前に、見えるのに。もう届きはしない。


 彼は自分の手をゆっくりとその星に伸ばした。

 そして気付く。


(ああ…"E"arth……)


「楽園、だ……」


 静かにその頬を雫が伝う。そして願うのだ、恐らくここに来た他の全てのカテューラの人間と同じように。

 どうかあの美しい世界の人々が、この星に囚われぬように、と。

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