第8話 七歳から始めるダンジョンマスター

「逃サナイゾ」

 ゴブ眼鏡は突然走り出しました。気でも狂ったのでしょうか? マフィーは心配になり、「急にどうしたの?」と尋ねました。

「アッチ二希望ガアルンダ。絶対二逃サナイゾ」

「ほんとうなの?」

「眼鏡ヲ掛ケテイル時ノアイツノ目ハトテモ信頼デキル」

 ゴブ吉は太鼓判を押しました。

「でも希望ってなにかしら?」

「トニカク追イカケヨウ」

 ゴブマロは促しました。

 それもそうですね。マフィーたちはゴブ眼鏡を追いかけました。

 ゴブ眼鏡は台座の前におりました。台座の上には青色の球体があります。その横にはモニターがあります。もちろん以前の地下にはこんなものはありませんでした。恐らく壁が崩壊したときに顕になったのでしょう。

「これが希望なの?」

 マフィーは尋ねました。

「タブン」

「希望ハ青カッタ」

 ゴブ吉は宇宙飛行士のような言い方をしました。

「ドウヤッテ使ウノダロウ」

 ゴブマロが首を傾げる横で、好奇心旺盛なマフィーはモニターをペタペタと触り始めました。すると突然モニターから音が発したのです。

『マスター認証シマシタ』

「しゃべったわ」

「目玉ダッ」

 ゴブ吉は飛び上がりました。青い球体はひとつの大きな目玉だったのです。

「ハワワ」

「コワイヨ」

 ゴブ眼鏡とゴブマロはガタガタと震えながら抱き合いました。

 青い球体は怒った目をしました。

 そんなに怖がられたらそりゃあどんな目玉だって気を悪くしますよね。

「マズイ、怒ッテルゾ」

 ゴブ吉は分かりきったことを言いました。

「謝るのよ」

 マフィーは呼びかけました。

「ごめんなさい、大きな目玉さん。わたしたちはこれまであなた程大きな目玉を見たことがなかったから、すっかり驚いてしまったの。みんな悪気があったわけではないのよ。どうか許してくださらないかしら?」

 すると目玉は頷きました。

 マフィーの言うことはとても論理的で、目玉さんから見ても納得させられるものがありました。それにとても礼儀正しかったので、目玉さんの方でも許してあげる気になったのです。

「ゴメン」

「悪カッタヨ」

 ゴブ吉とゴブ眼鏡は謝りました。

「コレハホンノ気持チダヨ」

 ゴブマロは赤い綺麗な石を渡しました。

『魔石を消費し、ダンジョンを拡張しますか?』

 またモニターが音を発しました。目玉はマフィーをじっと見ました。

「わたしに聞いてるの?」

 目玉さんは頷きました。

「カクチョウってなに?」

「広ゲルコトサ」

 こういうときはゴブ眼鏡の面目躍如ですね。

「オ前ハ本当二物知リダ」

 ゴブ吉は感心しました。

「じゃあ使ってみるわ」

『魔石を消費します』

 大地がまた揺れ始めました。さっきのような荒々しい揺れ方ではありません。浮上するような感覚がありました。それでもみんなは慌てました。でも揺れたのはほんの少しの間だけで、ぽっかりと開いた出口から光が差しました。

 外と繫がったのです。

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