閑話・【アンリアルウィッチ】のための髪飾り――③

 そして事件(?)が起こった。


 イチコドールさんへ想いを寄せた男性が、一度は通る現実試練だ。


「今日はちょっと……お店に顔を出してみようかしら」


【イチコドール魔法具店】へ顔を出しても、クラリスさんは「…………」と店のすみたたずんでいるのだけれど、いつもイチコさんのほうから話しかけてくれるのだ。


 けれどその日は、いつもとは少し状況が違った。


 いわゆる「イチコさんお目当てのお客」の一人と、イチコさんは先に話していて、今日は愛想よく会釈するにとどめた対応だったのだ。


 問題は、その「イチコさんお目当てのお客」へ、彼女が接する態度である。



 …………あれ?


 この対応……表情、というか、距離感は……。


 どこかで…………見たことがあるような…………。



 ――――しかしここがイチコさんの、失礼ながら恐ろしいところで、イチコさんへ想いを寄せた男性の十割は、ここで、想いからめない。


 どうしてか、その後も、熱量の絶対値は変化しないのだ。


 クラリスさんも例にたがわずそうだったのだろう。


「あれー……? おかしいなぁ…………」と人間情緒がグチャグチャに入り混じる表情で【イチコドール魔法具店】をあとにしたクラリスさんの、哀愁あいしゅうを越えた何かがただよう後ろ姿に、モニカは今にも瞳から涙を浮かせそうになっていた。ボクも同じような表情になっているかもしれない。


 この人に、こんな表情を浮かべる事はあっちゃいけない。


 ボクたちがなんとかしてみせる。


 自然と湧いた思いは、完全に一緒のものだった。

 そんなわけでボクたちは、クラリスさんに贈る、装身具そうしんぐの制作に取り掛かり始めたのだった。



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