天使を打ち倒す【銀灰の細身剣】――⑤

 モニカが放ったのは、ただのこぶしによる殴打おうだだった。


 だがそれはきっと、【天使をかたどった土類生命ゴーレム】にも予想できなかっただろう現実を引き起こした。


 滅茶苦茶としか言い様のない、力の奔流ほんりゅうの解放。


 それは無差別に、【天使をかたどった土類生命ゴーレム】にさえ計り知れないダメージを与えた。――ただし、巨大な石槌いしづちの幻影は降り降ろされたが。


 なんとか、ボクは、人間の形は保っていたが――右腕と、左足の先が吹き飛んだ。


【天使をかたどった土類生命ゴーレム】はもう気にしなくていい、左手で握った【銀灰の細身剣】の【竜の眼】の飾りが熱を失った。【魔王の夢コア】をどこに、どれだけ増やしていようと……モニカの一撃により全てに致命がもたらされた。今度こそ本当に、終わりの時だ。


 ただし。


 幻影の魔法は解けなかった。


「アアアア!! ウウゥウ……!!!!」


「モニカ、落ち着いて。コッチだ!! 目を覚まして……」


「お前は、私が……討伐する」



「――――悪夢に還れ!! 【属性転換マジックコンバート】――《意思》⇒《物理攻撃力》!!!!」



 駄目だ、――避けきれない!





「【星骸せいがい律動りつどう】」





「ハッ――ハッ――……ハッ――――……?」


 目を覚ましたモニカが、攻撃態勢のまま固まって、矢次やつぎの息を肩でしている。


 ボクは――地に転がったまま、身体からだを硬直させていた。


「――――まったく、もう少しでも【星骸せいがい律動りつどう】の展開が遅かったら、重篤じゅうとくの傷はどうにもならなかったわ。無事かしら?」


「クロちゃん……」


「――――クラリスさん」


「色々言いたいことや聞きたいことはあるけれど……とりあえず、まずは、二人で話しなさい」


 クラリスさんは言って、一歩、二歩と、後ろに下がってくれた。


「――――……兄貴アニキ、どうなって――死んじゃった、はず――……。――私、私もしかして、幻覚を――――見てた……?」


「モニカ、良かった。目が覚めたね」


「――――兄貴アニキ。どうにもならなかったって…………正直に答えて。私は――兄貴アニキに、何をした……?」


「モニカ」


 立ち上がって。


 歩み寄り、その身体を抱き寄せた。


「良かった。お互いまだまだ、だ。これから研鑽けんさんしていこう、今日よりもずっと」


「――――うん。……兄貴アニキ――良かった……」


 だって、ボクたちは生きてる。


 フッと、クラリスさんがんだことが分かった。


「――おっと。エーデルワイスの馬鹿バカが、最後の【土類生命ゴーレム】のかくを破壊したようね。辺りから強い波長が消えていく……」


「――兄貴アニキ


「うん?」


「カッコ悪い妹でゴメン……」


「そんなことないよ。二人でなければどうにもならなかったし、モニカは世界で一番カッコいい妹だ」


「うぅ……」


「本当だよ」とモニカの頭を撫でながら、【ランベレス領域】の景色を眺める。ボクたちは再び、この場所へ足を踏み入れるだろう。



――-----§§§-----――



 ――【天使をかたどった土類生命ゴーレム】の討伐。


 使用武器・【銀灰の細身剣】、【銀灰の大金槌クラッシュハンマー


 採取素材・【天使の肉片】


 Clear・『コルトハーツの仇討』



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