『異世界でもエロ文は力だ!天才官能作家、オリジナル詠唱で最強賢者になります』

常陸之介寛浩◆本能寺から始める信長との天

第1章『官能詠唱、世界に響け──筆を携えし賢者、旅立つ』

『官能の果て、ペンは天へ──死してなお“エロス”は滾る』

――ギリギリだった。

 いや、ギリギリどころか、完全にアウトだった。


 


「……くそ、締切、あと五分……ッ」


 


 液晶の照度を最小に落としたノートPCの前、俺は背筋を丸めて文字を叩き続けていた。


 体中が痛い。目はショボショボ、心拍は乱れ、左腕がさっきから痺れている。


 けれど、止められない。止めてはならない。


 


 俺の名は久城慧司(くじょう・けいじ)、職業、官能小説家。

 ペンネームは朱雀院セイジ。


 この業界ではちょっとは知られた名前だ。

 **「おっぱい三部作」や「蜜と乳の淫翼録」**など、バカにされがちだが、年間十冊以上刊行している。


 ──バカにされても、関係ない。俺は本気で“胸”を書いている。


 


「……くっ……最後の一行……これで、終わる……」


 


 指が止まる。

 渾身のラストシーン──恋する令嬢が、下着越しに恋人の頬を撫でる描写。


 


『わたしの胸で、あなたの不安を包めたなら──それが、わたしの幸せなの』


 


 俺は満足げに息を吐いた。


 


「……最高じゃねぇか……俺……」


 


 次の瞬間──


 世界がぐにゃりと歪んだ。


 


 胸に、熱く鋭い痛み。

 視界が白くなり、タイピングする手が震え始める。


 


「……あれ? これ、マジでヤバい感じ……?」


 


 パタリ、と俺は机に突っ伏した。

 光の向こうで、ノートPCのカーソルが一人ぽつんと点滅していた。


 


 そして──意識が、消えた。


 


 


 ◆


 


 


 ──目が覚めたとき、そこは見知らぬ空間だった。


 白でも黒でもない、奇妙に艶のある色の世界。

 花も、草も、女神像すらも、すべてが**“柔らかな丸み”**で構成されている。


 空を仰ぐと、そこには……巨大な、おっぱい。


 


「……俺、もしかして地獄に……いや、天国……いや、天乳(てんにゅう)か……?」


 


 呆然と立ち尽くしていると、ふわりと、艶めかしい声が降ってきた。


 


「ようこそ、官能の勇者よ」


 


 目の前に、神がいた。


 大理石のような白い肌、グラマラスな肢体、微笑みとともに漂う香り──完全にエロスそのもの。


 


 神の名は、エロスの神・ティティア。


 


「貴様は、真に乳を愛し、官能を描き、読者に悦びを与え続けた。死してなお、そのペンは燃えている──」


「ま、待って。なんか褒められてる気がするけど、えっ、俺死んだの?」


 


 ティティアはゆっくりと頷いた。


 


「心臓麻痺。最期の一文を書き終えたその瞬間だった。我が神界でも稀なる“筆に殉じた者”だ」


「だっせぇ死に方……けど、なんか報われた気がする……」


 


 ティティアは言った。


 


「汝に問う──再び生を得たくはないか? ただし、それは我が導く世界、詠唱の力が支配する“エロス転生界エロメリア”にて」


「エロメリア!? 名前がいやらしすぎる……」


 


「そこでは、詠唱魔法が絶対。長く、情熱的に、愛と情念を込めて紡いだ“言葉”こそが、世界を変える」


「それって……俺の十八禁小説で鍛えた描写力が、そのまま武器に……?」


 


「そう。汝は、**《言霊構文術(オリジナルスペルメイク)》**の適合者。さらに──《文字数変換》《筆力暴走》、そして……“おっぱい詠唱術”の資質がある」


「うおおおおおお!! それは完全に俺のためにある能力じゃねぇかッ!!」


 


 そして、ティティアは手を伸ばし、俺の額に指先を触れさせた。


 


「いざ、行け。筆を剣に、言葉を魔法に。お前の愛は、まだ誰かを救える」


 


 その瞬間、世界が眩く光った。

 胸いっぱいの光に包まれながら、俺は確かに聞いた。


 


「──異世界で、俺の“おっぱい文学”が、世界を救う!? よし、やったる!!」


 


 


 こうして、

 元・官能小説家・久城慧司は、“異世界おっぱい詠唱賢者”として生きる第二の人生を迎えることになる。


 


 ――最初に脱がすのは、騎士団の女団長。


 


 物語は、ここから始まる。


 


──つづく


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