最初のバグ

【資料265:ジャーナリスト・相沢航の取材メモ(音声入力)】

日付: 2076年5月28日


件名: 約束の場所へ


私はゴーストになった。東郷の宣告通り、私の銀行口座は凍結され、経歴は汚され、社会的な存在は完全に抹殺された。残されたのは、追われる物理的な肉体と、『X』が遺した謎の言葉だけだ。


「武蔵野市立第四小学校、3年1組の教室。そこに、『最初のバグ』がいる」


もはや、デジタルな反撃は不可能。残された道は一つ。全ての始まりの場所へ、この足で向かうしかない。警察の追跡を警戒し、公共交通機関を避け、何日もかけて徒歩で移動した。埃にまみれ、空腹に苛まれながら、私はただ、廃墟と化した小学校を目指した。それはジャーナリストとしての最後の取材であり、一人の人間としての、最後の賭けだった。

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