【資料115:元担当教員・広瀬真奈美へのインタビュー音声(文字起こし)】

インタビュアー: ジャーナリスト・相沢航

日時: 2076年1月28日

場所: 神奈川県内の介護付き有料老人ホーム


相沢: 広瀬さん、お時間をいただきありがとうございます。あの事件の後、教え子さんたちとの交流は……。


広瀬: (震える声で)交流、などというものではありません。あれは……監視です。


相沢: 監視、ですか?


広瀬: はい……。退職してから何十年も経ちますが、毎年、私の誕生日になると、必ずメールが届くんです。28人全員から。一日のうちに、時間もまばらに。でも、文面は毎年、一字一句同じ。『広瀬先生、お誕生日おめでとうございます。健やかな一年でありますよう、私たち一同、心よりお祈り申し上げます』と。


相沢: 全員が同じ文面……。


広瀬: 怖いのは、それだけじゃないんです。数年前、私が病で倒れた時……誰にも知らせていなかったのに、その日の夕方、病室に見舞いの花が届きました。差出人の名前はありません。ただ、青紫のアサガオを模したカードが添えられていただけでした。彼らは、知っているんです。私がどこで、何をしているのかを。私が、あの実験の秘密を漏らさないか、ずっと見張っているんです……。お願いです、もうそっとしておいてください。彼らを、刺激してはいけない……。

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