プロジェクト・アサガオ〜とあるジャーナリストの告発〜

火之元 ノヒト

「アサガオ」の残滓

【資料001:ジャーナリスト・相沢航の取材メモ(音声入力)】

日付: 2075年7月12日


件名:「アサガオ」の残滓


これは、半世紀近く前に闇に葬られた、ある教育記録の物語だ。


きっかけは、旧文部科学省のサーバー移行時に偶然発見された、破損データ群だった。その中に、ただ一つ『Project_ASAGAO_log』と名付けられたフォルダが、奇跡的に復元可能だったのだ。


公式記録では、202X年、武蔵野市立第八小学校の3年1組は「インフルエンザの集団感染」を理由に、年度末を待たずに学級閉鎖されたことになっている。だが、復元された断片的なデータは、全く別の様相を語りかけてきた。不自然なほど統率の取れた児童たちの映像、意味不明なカウンセリング記録、そして、ある教員が恐怖を綴った個人日誌――。


これから提示するのは、私が各所から集めた記録の断片である。そこには明確な犯人も、派手な事件も存在しない。ただ、ごく普通の小学校という日常空間が、静かに狂気に侵食されていく過程だけが、生々しく記録されている。これは、その実験の始まりから破綻までを、残された記録のみで再構成した物語である。

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