第3話
「!!?」
気づくと僕は部屋にいた。
ベッドで寝ていた。
額と身体はすごい汗だった。
(夢?)
ふと、自分の手の甲を見やる。そこには見たこと無い紋様が入っていた。
擦っても消えない。
(これはなに?)
すると風も吹かないのに本が勝手に開きページがどんどん捲れていく。
ある場所まで捲れていくとそこで止まり本は浮かび僕の所まで来て
僕のお腹付近にゆっくりと降りてくる。
僕は文章を見る。
【ようやく反魂の魔術師の資格、素養も持った人物と出会えた。お主にはその資格がある】
という文章であった。
僕は目を見開いた。
夢ではなかった――あの泉で起こったことは、現実だったのだ。手の甲の紋様がじんわりと淡く光り、本の文章がゆっくりと形を変えていく。まるで、僕に語りかけているようだった。
【汝の魂に刻まれし記憶は、過去より受け継がれし“鍵”である】
「鍵……?」
意味は分からない。けれど、心のどこかで“知っている”という感覚があった。まるで、遠い昔に自分がそれを使ったことがあるかのように。
ふと、部屋の窓の外を見ると、夜が明けかけていた。
静かな街の風景の中で、なぜか世界が少し違って見える。自分が“知らない何か”の中心に立たされているような不思議な感覚。
「反魂の魔術師は……実在した。そして、僕は……その継承者?」
胸の奥がざわめく。
それは恐れでも戸惑いでもなく、むしろ燃えるような衝動。何かを知りたい、確かめたい、そして自分が選ばれた理由を知りたいという強い想い。
本が静かに再び閉じた。
それが、全ての始まりだった。
翌朝、僕は意を決して父と母にすべてを話した。
泉で見た光、浮かび上がった紋様、そして自分の手の甲に現れた印のこと。本がひとりでに動き、語りかけてきたことも包み隠さず伝えた。
しかし、話し終えた僕を見て、父は困ったような笑みを浮かべ、母は心配そうに眉をひそめた。
「……夢を見たんだろう。最近、古書ばかり読んでいたから、頭が混乱したのかもしれん」
「無理もないわ。お店の手伝いも多かったし、疲れてるんじゃない? 今日は少し休みなさい」
僕は必死に手の甲の紋様を見せた。
だが、それすら「ただの怪我か痣だ」と一蹴された。
信じてもらえなかった。僕の中で確かに起こった“始まり”は、大人たちには“空想”でしかなかった。
でも、僕はもう知っている。
あの光も、本の言葉も、紋様の熱も――すべてが現実だった。
ならば、自分で確かめるしかない。
反魂の魔術師の真実を、そして自分の運命を。
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