俺は怖かった

 俺は怖かった。

 教師として、人として、恐かった。

 なに、してるんだろうな。

 なに、がしたかったんだろうか。

 分からないまま、俺は生きていくしかないのだろうか。

 生徒が死のうとしてる。

 ニュースでそれを知ったとき、動けない自分の顔が赤くなってしまった。

 周りの大人がなにもしないからだ。

 観衆は声をあげるだけあげる。

 警察はなにもせずにただ呆然と立ってる。

 どうして、どうして?

 分からない。

 分かりたくない。

 この世界に生きていく身としてまだ、失望したくない。

 なにもできやしない。

 なにもする気になれない。

 今行っても遅い。

 なんで気づかなかったんだろう。

 なんで、なんで、なんで。

 頭のなかはそれでいっぱいだった。

 明けない夜はない。

 それは知っているから言える言葉だ。

 俺の言葉じゃない。

 俺の言葉はどこにあるのだろうか。

 恐かった。

 怖かった。

 強ばった。

 ニュースは時間切れとなった。

 夜空には三日月が堂々といた。

 あの子は死のうとしてる。

 その事実だけが俺の脳内を支配していた。

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