空き

 ぼくは、なにをしてたんだろうね。

 でもね。

 不思議と教えてほしくないんだ。

 どうしてだろうね。

 確かに世界は煌めいていて。

 確かに世界はどこかで泣いていて。

 確かに世界は五月蝿くも静かでもある。

 そのなかでぼくは一人。

 無理に笑うぼくが一人。

 お腹の音だけが響く部屋で一人。

 明日も見えない世界で、孤独なぼくが一人外を歩く。

 目指すはビル。

 そこにはビル。

 廃墟のビル。

 壊されるのが決まってるビル。

 誰の居場所でもないビル。

 ぼくは、なにがしたかったんだろうね?

 ぼくは、なにをしてたんだろうね?

 ぼくは、いちゃいけないんだろうね。

 否定は要らない。

 ぼくには、要らない。

 ぼくは今。

 ビルを昇る。

 上へ。

 上へ。

 上へ。

 上る。

 答えは分からぬまま。

 解がないまま。

 ふらふらと。

 歩くのもやっとな足で。

 歩くのは好きだ。

 だってこの行為には、お金も、車も、自転車も、鉛筆も、消ゴムも、学校も、居場所すら、要らない。

 ここには要らない。

 ぼくは今。

 歩いてる。

 歩いて、歩いてる。

 もう、なにも、考えられないや。

 天国にはまだ、空きはあるのかな?

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