【完結】寝取られ動画でガッツポーズした俺、壊れかけた清楚な本命を純愛で救うと決めた――演技のデートのつもりだったのに、いつの間にかラブコメ始まってたんだが?
第41話 “好きになってくれてありがとう”――その言葉だけで十分だった。
第41話 “好きになってくれてありがとう”――その言葉だけで十分だった。
夕焼けが、街を赤く染めていた。
駅までの帰り道。歩道の脇に並ぶビルの窓が、まるで金色に燃えているみたいに輝いて見える。
詩乃は、俺の少し前を歩いていた。
さっきまでは笑ってたけど、今はちょっとだけ、黙ってる。
でもその背中がなんとなく、俺と同じような気持ちなんじゃないかって、思わせてくる。
俺たちは明日、神崎と向き合う。……だから、その前に言っておきたかった。
全部が終わってからじゃ、遅い気がしたんだ。
キスもした関係なのに、ずっと言ってこなかった言葉を。
いや、してるくせに言えてない俺どうなんだ? って自分でも思ってた。
でも、どこか怖くて。タイミングを見てるふりして、逃げてたんだと思う。
「……詩乃」
足を止めた彼女が、ゆっくりと振り返る。
夕日が差して、彼女の横顔がオレンジ色に染まっていた。
「その……さっき渡したプレゼント。
鏡とか写真とか、いろいろ頑張って選んだけど」
手のひらが少し汗ばんでるのが分かった。
どんなに準備しても、人生初めての告白は緊張しかなかった。
「ほんとは、今日いちばん渡したかったの、別にあるんだ」
詩乃が小さく目を見開く。
俺は、ほんの少しだけ息を飲んでから、覚悟を込めて、言葉を続けた。
「俺さ。ずっと、どう言えばいいか考えてたんだけど……。結局、言い方とか、回りくどくするのやめたわ」
いまさら照れても仕方ない。
だから、まっすぐに。
「詩乃。好きだ」
言葉が落ちた瞬間、心臓がドクンと鳴った。
自分で言って、怖さと嬉しさが一緒に胸を揺らしてくる。
まさか、こんなに勇気がいるとは思わなかった。
でも、すぐに――
「ずるい」
詩乃が、ちょっとだけ唇を尖らせて言った。
「私、いま、言おうとしてたのに……先に言われた」
えっ、と思って詩乃を見たら、彼女は頬を少し染めながら笑ってた。
なんだよその反則級の笑顔。心臓に悪い。
「私も、好きだよ。……直哉くんのこと」
その一言だけで、全身の力が抜けるくらい安心した。
いや、嬉しいって感情のはずなのに、なんでこんなに脱力してんだ俺。
「……ふふっ」
詩乃がくすっと笑う。
「なに?」
「ううん。直哉くん、今ちょっと、肩の力抜けすぎてる顔してました」
「そりゃ抜けるだろ……。
こっちは内心、“断られたら地球ごと爆発してくれ!”って祈りながら言ったんだぞ?」
詩乃がもう一歩近づいてくる。
そして、そっと俺の胸に手を置いた。
「でも……ありがとう。今日、言ってくれて」
「……前はさ」
俺は少し笑って言う。
「初めて手、繋いで歩こうって言ったの。あの時は詩乃からだっただろ?」
「うん。水族館へ行く途中」
「今度は、ちゃんと俺から言えた訳だし。成長したってことで……まあ、そう思ってほしいんですけど」
「……ん、そだね」
詩乃が、恥ずかしそうに言った。
思えば、一か月前のあの日の俺はまだ半信半疑だった。
あいつから詩乃を救うなんて出来るのか、と。
でも、今なら胸を張って言える。
これは恋で、これは決意だったって。
「あの……えっと、伝えたい事があるけど……。なんて言えばいいのか分からないけど……その……」
詩乃が視線を泳がせる。
言葉に詰まりながら、それでも何かを伝えようとしているのが伝わってくる。
恥ずかしさ、ためらい、そして、それでも伝えたいという想い。
「――好きになってくれて、ありがとう」
再び顔を上げて、まっすぐこちらを見てそう伝えてくれた。
その瞳に迷いはなく、けれどどこか照れくさそうで、愛おしくて。
「……っていうのは、変ですか?」
少しだけ首をかしげて、でもその瞳はまっすぐ俺を見ていた。
「変じゃないな。
詩乃がそう想ってくれたなら、全然おかしくない」
彼女は安堵したように目を細めて、小さく笑った。
まるで、『言ってよかった』って顔をして。
そして詩乃は、少しだけ迷ったように目を伏せたあと、俺にそっと両腕を伸ばしてきた。
俺も、そのまま彼女の体を抱きしめる。
彼女の華奢な身体が、すっと腕の中におさまった。
鼓動が重なって、静かな幸福が広がっていく。
ただ、それだけでよかった。
本当に詩乃と恋人になったんだと実感する。
彼氏がいる女の子と恋人になった。だけど、不思議とキスした時のような背徳感はなかった。
それは、彼女に口付けした時に、詩乃が俺に『これは罪でも、背徳でもない』、そう言葉でなく行動で伝えてくれたからだろう。
明日、すべてに決着がつく。
でも、今だけはこうしていたい。
それだけで、今日という日が、もう十分すぎるほど意味のある一日になった気がした。
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※ここまでお読みくださりありがとうございました。
次話から、いよいよ神崎光との最終決戦です。
これまでで最も濃い内容の、三話構成になります。
神崎との決戦への期待、告白や詩乃とのやり取りで少しでも感じるものがあれば、☆評価や感想をいただけると嬉しいです。
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