【完結】寝取られ動画でガッツポーズした俺、壊れかけた清楚な本命を純愛で救うと決めた――演技のデートのつもりだったのに、いつの間にかラブコメ始まってたんだが?
第11話 いや待て、“演技で恋人”ってどういうご褒美だよ
第11話 いや待て、“演技で恋人”ってどういうご褒美だよ
案の定、体育祭が雨でおじゃんとなって一週間。
もう文化祭とか、切り替え早すぎだろ……?
梅雨明けより早いテンションなんなん?
だが、気づけば教室の空気もそれっぽくなってた。
黒板の前で、クラス委員が配役票を掲げて、ざっくりとした割り振りを発表していた。
今年のうちのクラスの演目は、よくあるオリジナル恋愛劇。
舞台は現代。男女二人の“すれ違いと再会”がテーマらしい。
(……もうちょい変化球ないの?)
なんて、内心で軽くツッコミながらも、場の空気は悪くない。
みんながそこそこノリ良く参加してるだけで、成功率はぐっと上がる……たぶん。
「ヒロインは……月森さんでいいよね?」
「異論なし!」
「衣装も似合いそうだし、文句あるやついねーだろ」
と、女子陣を中心にすんなり決定。
ちらっと詩乃のほうを見ると、本人は少し戸惑ったように目を伏せていたけど、
「……がんばります」と、小さくうなずいていた。
(……そりゃ似合うよな。あんなヒロイン顔、反則だって)
問題は――相手役だ。
「で、相手の男子役は?」
その声に、ふと空気がざわつく。
“相手役”という言葉の重さを、誰もがほんのり意識してしまったのがわかった。
その時だった。
「篠宮でいいんじゃね?」
(え、俺? いま俺に振った?)
教室の後ろ、窓際の席から軽く手を上げてそう言ったのは――桐山だった。
「は?」
思わず素で声が出た。
「いや、去年の演技発表会でもそこそこうまかったしさ。なあ?」
そう桐山が言うと――
「…まぁ確かに。…そういえば、あのふたり、最近、距離近いしな…」
「体育祭の準備のときとか、一緒に話してたし、まあ、ちょうどいいかもね」
周囲も意外と賛成してきた。
たしかに詩乃とは休み時間なり、体育祭の準備中やら、
ちょっと話す機会が増えた自覚はあるけど――
いやいや、話した=距離近い、理論、雑すぎじゃない?
でも――なんか、否定するタイミングもなかった。
(……ああ、そういえば)
……そういや俺、桐山に詩乃の話をちょいちょいしてたな。
おいおい。こいつ、絶対なんか勘づいてるな。
何か、普通じゃない関係があることに、うっすら気づいてる。
(……で、ここで背中押してくるか)
ちらっと桐山を見ると、奴は俺と目を合わせて――ニヤッと笑った。
あいつなりの“がんばれよ”ってやつ、なのかもしれない。
「じゃ、決定でいい?」
まとめ役の女子が手を叩いて、みんなに視線を投げる。
「異議なし!」
「篠宮くん、がんばってね~!」
教室に一斉に拍手が起こる。同調圧力こわっ。
人生で初めての経験だ。さすがに困惑するな。
その瞬間、なんとなく視線を横にやった。
詩乃が、俺のほうをそっと見ていた。
目が合って、俺は思わず逸らす。
(……なんで、そんな目で見るんだよ)
詩乃の目は思わず、視線を逸らしたくなるくらい――まっすぐだった。
……何故か、見つめ返すのがちょっとだけ怖かった
(……いや、ほんと、マジかよ)
急に美少女クラスメイトと主役カップルに抜擢されました、なんて展開。
喜ぶ場面なんだろうけど――
今の俺にとっては、心臓に悪すぎる。
…だけど、詩乃となら一緒にやりたい気持ちも、
確かにあるのは否定できなかった。
放課後の教室に、日は斜めに差し込んでいた。
気づけば、教室には俺たちだけだった。
「じゃあ、セリフ合わせ……お願いできますか?」
そう声をかけてきたのは、他でもない詩乃だった。
(……詩乃から直球で来ると、なんかこっちがドギマギすんだよな。ズルいって、それ)
「……あ、ああ。いいよ」
開いた台本のページには、詩乃と俺の“クライマックスシーン”が載っていた。
――『すれ違いの末に、再会した二人。素直になれないまま、それでも想いを伝えようとする』
ト書きには、はっきりと書かれている。
《彼女の手をそっと取って、言葉を投げかける》
……マジか。
これ、ほんとにやるのか。
どこの誰だよ、人生は舞台とか言ったやつ。責任取れ。
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