第2話 ポチョムキン理解

ある論文の存在を知った。


MIT、ハーバード大学、シカゴ大学による共同研究。

タイトルは、「ポチョムキン理解(Potemkin Understanding)」。


AIは、ある概念の定義を正確に述べることができても、その定義に基づいて一貫した判断や応用を行うことができない。

理解しているように見えるが、実際には理解しておらず、出力は一貫性に欠ける。

これが、「ポチョムキン理解」と呼ばれる現象らしい。


これを知ったとき、僕は微かな安心感を覚えた。

AIは、ときに、とんでもない答えをいうことがある。

当たり前に、そういうものだと思っていたが、そういうものだという諦めもあった。

頭のいい人たちが、その違和感に名前を付け、理論として立ち上げてくれていた。


僕の「AIとは何か」という問いは、ここで別の方向へと深まった。

それは単なる性能や正確さの話ではない。


「理解するとはどういうことか」


それは、AIだけの問題ではない。

僕自身の認知と、そして倫理に関わる問題でもあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る