[ThreadStory] 絶対に出てはいけない着信~ミズキからのLINE通話~

風光

Thread 01|ミズキって誰?

SNSで広がるある都市伝説――

「深夜2:44に、“ミズキ”という名前でLINE通話が来たら、絶対に出てはいけない」

遊び半分でかけ直した高校生のグループに、何が起きたのか。


****


──を俺が初めて聞いたのは、3限が終わったあとの廊下だった。


「『ミズキ』って、知ってる?」

教室へ戻る途中でタカシがふと思い出したように言った。

昨日からアヤカが休んでるのが気になったらしい。


「一昨日、アヤカが”LINEで変な着信があった”って話しててさ。『ミズキ』って名前だったと思うんだけど。」

ミズキ──知らない名前だった。クラスにもそんなやつはいない。

「誰それ」と返すと、タカシは曖昧に肩をすくめた。


その日の昼休みに屋上でいつものメンバーと合流した。

俺とタカシ、ユイ、そしてお調子者のケンジ。

いつもはここに、アヤカもいる。


「あの後ちょっと調べてみたんだけど…」

タカシが菓子パンをかじりながら言った。

「怪談だったよ。『ミズキの通話』ってやつ。都市伝説みたいなものかもしれない。」


同じコンビニのパンをかじった俺とケンジが目を合わせる。

(都市伝説ってのは、暇な誰かの妄想が…)

(暇な誰かの不安を煽っただけのものだろう…)

という無言の会話が成り立った。


だが、タカシの目はどこか真剣で、冗談めかしている様子はまったくなかった。

「友達ができずに孤独に耐えかねて自殺した『ミズキ』っていう名前の少女の話らしいんだけど、彼女がスマホにLINE電話をかけてきて、もし、その電話に出たら、その人は忽然と消える…って。」

どう反応していいか分からず、僕は少し笑った。

「そんなの、ただの作り話だろ?怖い話とかオカルト系のやつだろ。」

ケンジがタカシを肘で小突き、声を上げて笑った。

そうだよな、とタカシもつられて笑った。

「未登録でかかってくるとか、怖いよな。」

「でもそれ、通話に出たらヤバいってやつだよね。」ユイが少しだけ真顔になった。

「けどさ、実際にそんな着信あったら、お前ら出る?」

タカシは笑いながらスマホをこっちに向ける。

LINEのオープンチャットで、“実際にあった心霊電話まとめ”なんてスレを見せてきた。

「2:44の着信」「名前だけ表示される」「勝手に起動するインカメ」「通話中に誰かの影が映る」──

テンプレみたいな怪談ばかり。

でも、なぜか胸の奥に、重たいざらつきが残る。


「でも…」再び真顔になったタカシが言った。

「実はさ」

さらにその声をひそめた。

「アヤカはその電話を受けたのかもしれない。」

「え、マジ?」

「あ、それ…私も聞いた。」ユイが小さく反応した。


その瞬間、風が吹いた。

屋上の入り口のドアが、バタンと大きな音を立てて閉じた。

全員が一瞬、黙った。


そしてケンジが笑って空気を戻す。

「幽霊もSNSやる時代なんだな」

いつもなら、ただの悪ノリで終わる話だった。


その夜──『ミズキ』と表示されるまでは。

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