第9話:器への転落と孤独な日々──見えない鎖

周りの者たちは私を葵と呼んだ。

白き髪の戦乙女。

季節は、初夏へと移り変わっていた。

私は、霊域の奥深くで、

「声なき娘」として

孤独な日々を送っていた。

神前合戦の舞台に立たなくなって久しい。

私の魂は、以前のような

高揚を求めることはなく、

ただ、静かに時が流れるのを

感じていた。

監視されているという現実は

変わらないが、

定められた区域内での自由は、

以前と変わらず許されている。

広い放牧地で、私は風を感じ、

大地を踏みしめることができた。

限られた中での自由。

それでも、私の心は、

将軍景虎への思いで満たされていた。

もう一度、彼に会いたい。

その渇望は、日を追うごとに

募っていった。

この閉じられた空間で、

彼だけが私の唯一の光だった。

夜空の星を眺めるたび、

遠く離れた彼もまた、

同じ空を見上げているのだろうかと、

言葉にならない問いを抱いた。

私の魂は、彼を求めてやまなかった。

その思いは、まるで私の身体を

内側から燃やす炎のようだった。

眠りにつこうとするたび、

彼の残像が瞳の奥に焼き付く。

私には、ただ会いたいという

純粋な願いだけがあった。


そんなある日、

私の耳に、仲間内のざわめきが届いた。

それは、言葉にはならない。

しかし、確かに心に響く感情の波。

興奮と、好奇心と、そして

どこか羨望のようなものが混じり合った

奇妙な波動だった。


将軍景虎が、他の霊蹄と「逢瀬」をしたという、

自慢話めいた興奮の波動が、

私の魂に直接流れ込んできた。

私にはその詳細を理解できない。

だけど、その感情の響きは、痛いほど伝わった。

「なんで、私には……」

言葉にならない問いが、

私の内面に生まれた。

他の者たちは、彼との「逢瀬」を

許されているのだろうか。

その思いが、私の魂を締め付けた。

嫉妬のような、

しかしもっと深い、

理解を超えた苦悩。

私だけが、なぜ、

彼に近づけないのか。

私の魂は、激しく渦巻いた。

私と同じように、彼もまた

運命の鎖に繋がれている。

その鎖は、見えないけれど、

私たちを縛り付けている。

しかし、その鎖は、同時に

私たちを繋ぐものでもある。

彼の苦悩が、私の苦悩と重なり、

彼の孤独が、私の孤独を癒やす。

私の中で、将軍景虎への思いは、

単なる憧れや渇望を超え、

深い共感と、そして

抗いがたい運命の絆へと変わっていった。

この絆こそが、

この孤独な霊域の中で、

私に残された、唯一の温かい光だった。

彼の存在が、私を支えてくれた。

私の魂は、彼を求めることで、

新たな意味を見出した。

それは、私自身の存在を

再び肯定してくれるものだった。


将軍景虎が連れて行かれる様子を見るたび、

私の心は締め付けられた。

彼の霊的波動から、

彼が他の者と「逢瀬」をしているという

事実を、私は漠然と「知る」。

それは、彼が「血統」のために、

その「自由」を制限されている姿だった。

私と同じように、彼もまた

運命の鎖に繋がれている。

その鎖は、見えないけれど、

私たちを縛り付けている。

彼を連れて行く者たちの視線は、

ただ「作業」として彼を見ていた。

そこには、将軍景虎への畏敬の念も、

彼が持つ輝きへの称賛もない。

ただ、役割を全うさせるための行為。

その冷たい視線が、私の心を

深く傷つけた。

私もまた、かつて同じ視線に晒された。

しかし、その鎖は、同時に

私たちを繋ぐものでもある。

彼の苦悩が、私の苦悩と重なり、

彼の孤独が、私の孤独を癒やす。

私の中で、将軍景虎への思いは、

単なる憧れや渇望を超え、

深い共感と、そして

抗いがたい運命の絆へと変わっていった。

この絆こそが、

この孤独な霊域の中で、

私に残された、唯一の温かい光だった。

彼の存在が、私を支えてくれた。

私の魂は、彼を求めることで、

新たな意味を見出した。

それは、私自身の存在を

再び肯定してくれるものだった。


この共感を通じて、私は

将軍景虎に、そして彼との間に

生まれるであろう子に、

新たな希望を見出した。

私の魂は、その希望の光に

静かに導かれていく。

それは、私自身の生の意味を、

再び見つけるための道だった。

この、見えない鎖の中で、

私は新たな未来を夢見る。

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