衝撃遮断装甲服開発秘話 とある女学生の記録
味噌煮込みポン酢
プロローグ
現在、全文明圏の災害現場、その第一線で使われている
「Shock-Absorption Armor Suit(衝撃遮断装甲服)」。
通称、SAスーツ。
その開発から、すでに二世紀が経とうとしています。
にもかかわらず、このスーツを超える防護技術は未だ存在せず、
卓越した衝撃吸収性能と、生体適応性の高さは、
あらゆる極限状況下において数えきれない命を救い、
災害対応の常識を塗り替え続けてきました。
しかし──
その誕生の陰には、ある女子学生の「体を張った実験」があったことを、
現代に知る者は、ほとんどいません。
それもそのはず。
事件の詳細は、当の本人──橘こなつ博士の厳命により、
すべての記録が徹底的に処分されたからです。
彼女は生涯、この記録を歴史から消すことを望んでいました。
……ですが、一つだけ。
防衛省の極秘データベースに、唯一残された映像ログ。
本来、二度と開かれるはずのなかったそのファイルが、
近年の技術によって、ついに復号されました。
残されていたのは──
たった一人の女子学生が、試作スーツの中で、
「人としての尊厳」をかけて戦った、たった2時間の記録。
のちに東進大の女帝と呼ばれ、
数多の技術者を指導し、世界を変える発明を生み出した彼女が、
まだ何者でもなかった時代──
その原点にして、誰よりも過酷で、誰よりも人間らしい戦場。
これは、彼女の──そして人類の──
「始まりの一歩」の裏に隠された、誰にも語られなかった真実です。
では、どうぞ。
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