第十六章:Sacrificium
光は、私を裏切った。
いや、正確に言葉を紡ぐならば、私が盲目的に信じていた「光」という概念そのものが、私という存在を最も深く、最も残酷な形で傷つける凶器であることを、私はあの瞬間、肌身に感じてしまったのだ。
かつて、幼い頃の私が疑いもなく信じていた世界において、光とは希望の隠喩であり、救済の同義語であった。 暗闇を照らし、迷える者に道を指し示し、冷え切った身体に温もりを与えるものだと、誰もが教え、誰もが信じていた。絵本の中の輝く太陽も、教室の窓から差し込む午後の柔らかな日差しも、すべては善なるものの象徴だったはずだ。
しかし、あの影の怪物に襲われ、その冷酷な現実の感触に触れた瞬間、その無邪気な信仰は、音を立てて粉々に砕け散った。
光があるからこそ、影は濃くなる。 光が強ければ強いほど、その足元に広がる闇は深く、鋭利に、そして逃れようのない牢獄となって、私を捕縛するのだと知った。 光は救済ではなく、影という怪物を生み出すための「母体」でしかなかったのだ。 光は影を焼き、その痛みが影をより凶暴なものへと変貌させる。
あの夜、影に触れられた肌に焼き付いた、凍てつくような感覚。 それは、時間の経過とともに薄れるどころか、私の表皮の神経を通り越し、血管を遡り、肉の奥底へ、そして最早、魂の皮膚とでも呼ぶべき領域にまで深く浸透していた。
それは物理的な冷たさではない。存在そのものを否定されるような、絶対零度の拒絶だった。 「お前はここにいてはいけない」「お前は異物だ」と、世界そのものから宣告されたかのような、根源的な恐怖。
椎名燈と、稲見朔。 彼らによって、私の内面にある弱さ、醜さ、そして逃避願望という名の「全て」を、白日の下に無防備に暴かれたあの瞬間。私は、自分を守るべき殻を失い、剥き出しの神経のまま、荒涼とした荒野に放り出されたようなものだった。 彼らの正しさが、鋭利なメスのように私の膿を切り裂いた。治療のためだとしても、その痛みは私を殺すのに十分だった。
見捨てられた、という感覚だけが、喉の奥で苦い鉛のように凝固している。 彼らは私を助けようとしたのかもしれない。けれど、その結果として私に残されたのは、断絶だけだった。 私はもう、完全に孤立していた。誰の手も届かない、深海の底のような孤独。
魂の通路は閉ざされた。 外界との全ての交流は断絶し、私は内側の虚無へと、螺旋を描きながら引きずり込まれていく。
現実の『器』――すなわち、私のこの肉体は、まるで海底深くに沈められ、長い時間をかけて圧倒的な水圧に押し潰された粘土細工のように、脆く、冷たく、そして醜く変質していた。 指先一つ動かすことさえ億劫な、その鉛のような重み。まばたき一つが、重い鉄の扉を開閉するような労力を伴う。
その脆さは、私自身の存在の基盤が、いかに不安定な砂上の楼閣であったかを象徴している。 肉体はもはや、生きるための躍動する機関ではない。意識をこの腐った現実に、無理やりに繋ぎ止めておくための、ただの呪わしい「重し」でしかなかった。
呼吸をするたびに、肺が軋む音がする。心臓が鼓動を打つたびに、泥のような血液が全身を巡り、私の倦怠感を更新していく。生きていることそのものが、緩やかな罰のように感じられた。
薄暗いリビングのソファの上で、私は胎児のように身体を丸めている。 膝を抱え、額を膝頭に押し付ける。こうして自身の体温を逃さないように努めても、体の芯から、骨の髄から湧き上がる寒気は止まらない。
寒い。寒い。 世界はこんなにも冷たい場所だっただろうか。
誰も、見舞いに来ない。 部屋の空気は澱み、塵一つ舞うことのない完全な静寂が支配している。壁にかかった時計の秒針の音だけが、「チク、タク」と無機質なリズムを刻み、今の私には耳障りなノイズとして鼓膜を叩き、神経を逆撫でする。それは私の寿命をカウントダウンする音のようにも聞こえた。
時間の流れさえも、この部屋だけ止まっているかのようだった。 窓の外から差し込む日差しは、遮光カーテンのわずかな隙間から床に落ちているが、それは私を温めるものではなく、私の孤立を浮き彫りにするスポットライトのように見えた。その一筋の光の中を、微細な埃が舞っているのが見える。それら一つ一つが、死んだ時間の欠片のように思えた。
階下からは、微かに両親の気配がする。 パタパタというスリッパの足音、食器が触れ合う硬質な音、そして、押し殺したような話し声。テレビの音が低く漏れてくる。日常の音。
しかし、彼らは決して、この二階のリビングには近づこうとしない。階段の下まで来ては、足音を止め、ため息をつき、そして引き返していく。その気配には、明確な「忌避」が含まれていた。
彼らは、恐怖しているのだ。 原因不明の衰弱を見せる娘に。医学的な診断がつかないまま、ただ魂が抜けたように枯れていく私という異質な存在に。 そして何より、私と直面することで、自分たちが「何もできない無力な親」であることを突きつけられる、その残酷な現実から目を背けているのだ。
恐怖と、諦めと、自己防衛。 それらの感情から、彼らは私との接触を最小限に留めている。腫れ物に触るような、あるいは、すでに死んでしまった人間を悼むような、遠巻きな扱い。彼らにとって私は、もう「生きた娘」ではなく「処理に困る現象」になりつつあった。
「……ずるい」
乾ききってひび割れた唇から、砂のような声が漏れた。 彼らのその無関心こそが、私をこの「まどろみ」へと誘った、最初の原因だったのではないか。
幼い頃から感じていた、透明な壁。 衣食住は満たされていた。教育も受けさせてくれた。誕生日にはプレゼントもあった。 けれど、魂の飢餓感には、彼らは決して気づこうとしなかった。私が何を恐れ、何に傷つき、何を求めているのか。彼らは私の内面を見ようとはせず、ただ「良い子」であるという表面だけを撫でていた。「手のかからない子」というレッテルは、私を縛る鎖だった。
その責任逃れとも言える態度は、今、この極限状態においても変わらない。 彼らの無関心は、私を赦しへと向かわせない。むしろ、私の絶望を正当化するための、最良の燃料となっていた。 「ほら、やっぱり誰も私を見ていない」「私が消えても、彼らは困惑するだけで悲しまないかもしれない」という確信が、私をより深く、殻の中へと閉じ込めさせる。
そして、椎名燈。 彼女は、あれ以来、顔を見せない。
あんなにも、「琴葉ちゃん、琴葉ちゃん」と、まるで春の陽だまりのような笑顔で、強引に私の領域に踏み込んできた彼女が。私の拒絶をものともせず、手を差し伸べ続けてきた彼女が、今はぷっつりと糸が切れたように沈黙している。
携帯電話は鳴らない。インターホンも鳴らない。SNSの通知も来ない。 きっと、稲見朔と共に、私を「救う」ための裏工作に勤しんでいるのだろう。図書館の閉架書庫か、あるいは朔の神社の薄暗い社務所か。そこで私の知らない真実を探し、私を今の状態から無理やり引きずり出す算段を立てているに違いない。
吐き気がした。 胃の中には何もないのに、酸っぱい胃液だけが逆流してくる。 その「救い」が、今の私にとってどれほどの暴力であるか、彼らは分かっていない。 彼らの善意は、私の自己決定権を侵す猛毒でしかないのだ。
「あなたのためを思って」「元の世界に戻ろう」「一緒に頑張ろう」。 そんな、光に満ちた、正しすぎる言葉たち。
それらは、影の中でしか呼吸できないようになった私にとっては、肺を焼き尽くす熱風と同じだ。彼らの正しさが、私の歪さを際立たせる。彼らの健やかさが、私の病みを断罪する。 私は、彼らの愛という名の檻に、善意という名の鎖で、閉じ込められようとしていた。
(私はただ、静かに朽ちたかっただけなのに)
心の中で、誰に届くともしれない嘆願を、壊れたレコードのように繰り返す。 誰にも邪魔されない、完璧な終焉。 それは、誰かの記憶に残るようなドラマチックな死ではない。悲劇のヒロインのような最期でもない。 ただ、古い書物が図書館の隅で、誰にも読まれずに、虫に食われ、湿気を含み、やがて紙の繊維が崩れて塵になっていくような、静謐な消滅だ。
自己の消滅こそが、私にとっての究極の安息だった。意識という呪いから解放され、思考という苦痛から逃れ、ただの物質へと還元されること。それだけを望んでいたのに。なぜ、世界は私を放っておいてくれないのか。
瞼を閉じれば、あの恐ろしい影の残像と、響の裏切りの笑顔が、交互に、フラッシュバックのように浮かんでくる。 それは、光と闇の永遠の輪舞だった。
響の完璧な美しさ、あのアメジストのような瞳の輝き、甘美な声、優雅な仕草。それらはすべて、あの影の怪物が持つ絶対的な恐怖、暴力性、冷酷さと、表裏一体だったのだ。 美しい花には致死性の毒があるように、甘い夢の裏側には、魂を食らう鋭い牙が隠されていた。
どこへも、行けない。 もう、あの「まどろみの世界」は、安息の地ではないと知ってしまった。 あれはただの逃避場所ではなく、魂を貪り、養分として吸い上げるための、巨大で精緻なシステムだった。響は、そのシステムの管理者であり、優雅な捕食者だった。
しかし、この冷たい現実の部屋に留まっていれば、私はこのまま枯れて消えてしまう。 食事も喉を通らず、睡眠も浅く、悪夢にうなされ、ただ生命力をやすりの上で摩耗させていくだけ。 生への未練は、もはや死への恐怖へと変貌していた。 私は、緩やかな死を待つだけの、美しい標本になりかけていた。ガラスケースの中で、ピンで留められ、色褪せていく蝶のように。
生きることも、死ぬことも、どちらも恐ろしい。 進むことも、退くこともできない。 前門の虎、後門の狼。いや、光の刃と、闇の顎。
その閉塞感の中で、私は一つの覚悟を決めた。 それは消極的な抵抗であり、臆病な私が選び取れる唯一の「第三の道」だった。
もう二度と、あの影の奥深く、響の支配する領域へは行かない。逃避の道を自ら断つ。 だが、この冷たい現実に身を捧げ、燈たちの「救い」を甘んじて受け入れることもしない。
私は、世界の境界線に留まる。 あの並木道や、鳥居の周辺。 現実と異界が混じり合い、物理法則と精神法則がせめぎ合う、どこにも属さないその曖昧な場所。 中間領域。中立地帯。 現実の論理も、夢の誘惑も、どちらも及ばない狭間。
どこにも行かないことで、どこにも属さないことで、私は私を守ろうとした。 それは、誰にも理解されないであろう、最後のささやかな抵抗であり、自己の独立をかけた、孤独で静かな戦いだった。
意識を、研ぎ澄ませる。 これはもう、何度も繰り返してきた手順だ。 呼吸を深く、長く、下腹部の底まで空気を送り込み、そして細く長く吐き出す。意識を肉体の内側から外殻へと広げ、皮膚という境界を溶かしていくイメージ。
体の底から、泥のように湧き上がってくる倦怠感と、節々の痛みを無視する。 肉体が悲鳴を上げている。「行くな」「離れるな」と、本能が警鐘を鳴らしている。だが、それは遠い国で鳴っている空襲警報のようなものだ。今の私には関係ない。
私は、この重く、冷たく、役立たずな『器』から、魂を静かに引き抜いた。 ズルリ、という湿った音が幻聴として聞こえるような感覚。 重力という鎖が、一本、また一本と外れていく。
肉体との絶縁は、最早日常の儀式となっていた。感覚の遮断。視覚が一度暗転し、砂嵐のようなノイズが走り、次に目を開けたとき、そこには見慣れた天井ではなく、無限に広がる色彩の世界があった。
いつもの、藤色の空気が、私を包む。 その藤色は、夕暮れ時の紫とも、夜明け前の藍とも違う。夢と現実の絵の具を大量の水で溶き、無造作に混ぜ合わせたような、曖昧で憂鬱な混色だ。 輪郭を持たない雲が、定まらない方向へと流れ、地面は頼りなく揺らいでいる。水面の上を歩いているような、不安定な足場。
ああ、この透明な冷たさだけが、私には唯一心地よい。 肺を満たす空気が、現実のそれとは違い、清涼で、わずかに腐敗したような甘い香を含んでいる。熟れすぎた果実と、古い線香が混ざったような香り。 魂が重力から解放される感覚。無重力の安堵。 私は水槽の中の魚のように、あるいはホルマリン漬けの臓器のように、この空間を漂うことができる。
私は意識を彷徨わせた。 目指す場所は、あの「奥」ではない。あの美しい洋館でも、庭園でもない。 鳥居の風化した柱のすぐ内側。 現実の音が、まだかろうじて聞こえる、極めて曖昧な場所。
車の走行音、遠くの救急車のサイレン、風が木々を揺らす音、どこかの家のピアノの音。それらが、水中で聞く音のように籠もり、歪み、エコーがかかって届く場所。 それは、現実の残響が届く、世界の薄い皮膜の領域。
そこは初めて、私がこの世界に迷い込んだ「始まりの場所」だった。 原点への回帰。
私は鳥居の下に立つ。 朱色は風化して白茶け、あちこちの塗装が剥げ落ち、木肌が覗いている。柱の根元には、現実世界では見かけない奇妙な青い苔が生している。だが、その存在感だけは圧倒的だ。ここが結界の入り口であり、出口でもある。 空気は濃密で静か。だが、完全なる「永遠の静寂」ではない。
時折、奥の方から、生温かい風が吹く。 その風には、微かな、しかし抗いがたい引力が含まれている。 『おいで、おいで』と、手招きをするような風。 この世界が、私を奥へと、響の元へと誘う微かな引力がまだ残っているのだ。それは響からの甘い誘惑の残響かもしれないし、この世界そのものが持つ「捕食」の本能かもしれない。世界は、私という異物を消化しようと、常に飢えている。
私はその風に抗い、鳥居の柱にしがみつくようにして留まる。爪を立て、自分の位置を固定する。木肌の冷たくザラザラした感触だけが、今の私のよすがだ。 微細な抵抗が、常に求められる場所。 気を抜けば奥へ流され、気を強く持てば現実に弾き出される。この絶妙なバランスの上に立つことだけが、今の私に許された唯一の自由であり、最後の砦だった。
ここで、私は何をするわけでもない。 ただ、存在すること。 現実の苦痛もなく、夢の恐怖もない。 無。 限りなく透明に近い、無。 思考を停止させ、感情を凍結させ、ただの観測点としてここに在ること。 それでよかった。それがよかった。そうして数百年、数千年、風化する石のようにここに在り続けることができれば、どんなに幸せだろうか。私は石になりたい。苔むし、誰にも顧みられない、路傍の石に。
その時だった。
背後に、誰かの気配を感じた。 それは風のそよぎでも、小動物の気配でもない。 物質的な重さを伴わない、しかし圧倒的な密度を持った「魂の圧力」だった。
凪いでいた藤色の空間に、鋭い波紋が広がる。空気の密度が瞬間的に高まり、ピリピリとした静電気が肌を刺すような痛みが走る。空間そのものが、その来訪者に畏怖しているかのように軋んだ。
振り返る必要はなかった。 この感覚を、私は知っている。 この冷徹で、研ぎ澄まされた日本刀の刃のような気配を。 肌を刺すような冷たい緊張感。 視界の端に映り込む、白銀の光の残滓。
――稲見朔。
彼の放つ白銀の光は、この曖昧で柔らかな藤色の世界では、あまりにも異物として際立っていた。 それは、混濁した泥水に落とされた一滴の水銀のように、決して周囲と混じり合わず、むしろ周囲を拒絶しながら、孤高に輝いている。
秩序が、無秩序に侵入する感覚。 彼が足を踏み出すたびに、曖昧だった地面が「在る」ことを強制され、硬質な音を立てるような錯覚に陥る。世界が彼の足元で、悲鳴を上げて修正されていく。
「……また、来たの」
私の魂は冷たい。 自分でも驚くほど、感情の起伏を失っている。怒りも、恐怖も、驚きさえも、薄い膜の向こう側にあるようだ。ただ、事実を確認するだけの、乾いた響き。 「来るなと、言ったでしょう」 私の言葉は、拒絶の意志を込めた振動となって空間を伝わる。魂の壁を築く。これ以上、私に近づくな。私の聖域を、私の「無」を汚すな。お前の光は、ここでは眩しすぎるのだ。
「……言われた通りに奥へ行かなかったことは、褒めるべきか」
朔の声は、感情の抑揚を欠いていた。 まるで難解な数式を解く数学者のように、あるいは病変部を冷徹に観察する外科医のように、論理的な判断を下している響きだった。 彼は私の拒絶など意に介さず、私の行動をあくまで「観察対象」として、あるいは「保護対象」として扱っている。その上から目線が、以前の私なら癇に障ったかもしれないが、今はそれすらどうでもいい。
ゆっくりと、私は振り返る。 そこにいたのは、いつもの制服姿の彼ではなかった。
朔は、あの簡素でありながら神聖さを感じさせる、奇妙な装束を身にまとっていた。 平安時代の貴族が着るような、白の水干にも似た上衣。そして、深い藍色の袴。 袖口や襟元には、銀糸で複雑な幾何学模様――おそらくは魔除けや呪術的な意味を持つ、古来の紋様――が、緻密に刺繍されている。
それは現代の高校生が着るにはあまりにもアナクロニズムであり、コスプレのようにも見えるはずだ。しかし、この異界においては、彼こそが正統な住人であり、この世界の管理者であるかのような、不思議な説得力を持っていた。 それは、儀式を行う者の正装であり、彼の並々ならぬ覚悟を視覚的に示していた。
装束の白の純粋さが、この藤色の空間で痛いほどに際立って見える。 彼は鳥居の反対側の柱に、静かに寄りかかっている。 腕を組み、私を見つめるその瞳は、深く、暗く、まるで夜明け前の最も深い闇のようだった。光を吸い込み、決して逃さないブラックホールのような瞳。
彼の周りだけ、世界の空気が少し違う。 澄んでいるのに、重い。 清浄なのに、どこか痛々しい。 呼吸をするたびに肺が凍りつくような、鋭利な清浄さ。 それは、純粋な力が、深い傷と結びついた時に生じる、矛盾した空気だった。彼の存在自体が、この世界の法則に対する異議申し立てであり、歪みを体現していた。
「私を、救いに来たの」
私は嘲笑う。口元を歪め、棘のある言葉を投げる。 その嘲笑は、彼に向けられたものであり、同時に愚かな私自身に向けられたものでもあった。自己憐憫の表出。「どうせ私なんて」という卑屈な響き。 「椎名燈のお願い通りに? 私をあなたの妹の代わりとして? 可哀想な迷子を連れ戻して、ヒーローごっこでもするつもり?」
その言葉が放たれた瞬間。 朔の無表情な仮面に、ピクリと亀裂が入った。
それは怒りでも否定でもなく、もっと根源的な、胸の奥を錆びたナイフで抉られたような、生々しい苦痛の色だった。 瞳孔が揺らぎ、呼吸が一瞬止まる。 私が彼の最も深い傷、触れてはならない逆鱗に、土足で踏み込んだことを如実に示していた。 その苦痛は、あまりにも人間的な感情であり、私の無機質になりかけていた魂に、わずかな熱を伝えた。彼はロボットではなかった。痛みを感じる、ただの人間だったのだ。
「代わりではない」
彼は静かに答えた。 その声は低く、しかし空間全体を震わせるような重みがあった。 それは私への反論というより、自らに言い聞かせているようにも聞こえた。自己への肯定。迷いを断ち切るための、呪文のような言葉。 「君は君だ。槙原琴葉だ。……だが、俺は君に妹の面影を重ねてしまうという事実を、否定することはできない」
彼は私から視線を外し、遠く、藤色の空の一点を見つめた。 その視線の先には何もない。ただ、永遠に続く黄昏の色があるだけだ。終わりなき停滞。 しかし、彼には何かが見えているのだろう。私には見えない、過去の残像が。失われた時間が。
「その償いのために。俺は今日、君に全てを話さなければならない」
彼は告白を選んだ。 これまで頑なに閉ざしてきた彼の内面。なぜ彼がこの世界を知っているのか、なぜあれほどの力を持っているのか、そしてなぜ、あんなにも悲しそうな目をしているのか。 それは、彼の内なる葛藤を、敵対者であるかもしれない私に開示する行為だった。自らの弱さを晒すことは、彼にとって最大の賭けだったはずだ。
彼はゆっくりと語り始めた。 その語り口は、独白のようであり、懺悔のようでもあった。 彼の声は静かだったが、その言葉一つ一つに、世界の重力が乗っているように感じた。それはまるで、苔むした石畳に刻まれた古い碑文を、指でなぞりながら読み聞かせているかのような、厳粛で冷たい響きだった。彼の声は、歴史と呪いを運んでいた。
「俺には、双子の妹がいた」
彼は過去の幻影を見ているようだった。彼の視線は、この空間の座標ではなく、時間軸の彼方に固定されている。 「名前は朔良(さくら)。俺と違って明るく、快活で、誰からも好かれる子だった。よく笑い、よく走り、世界にあるすべての光をその身に集めたような……そんな、向日葵のような少女だった」
その描写は、痛いほどに椎名燈にそっくりだった。 私とは正反対の、光の存在。 太陽の下を歩くことが許された、選ばれし者。 私の「悲しみ」を慰めようと必死だった燈に、彼は妹を見ていたのだ。光の純粋さ。無垢なる善意。疑うことを知らない心。
「だが、彼女も君と同じだった。この現実という『器』と、世界との間に、一枚の薄い膜を感じていたんだ」
朔の声が少し低くなる。 「彼女の明るさは、繊細さを隠すための仮面だったのかもしれない。彼女は時折、誰にも見えないものを見ていた。空の彼方を、何もない空間を、じっと見つめていた。……そして、この『まどろみの世界』に魅入られた」
朔の声が微かに震えた。 感情の堰がわずかに緩む。それは、鉄壁の理性を誇る彼が、制御を失いかけた力の兆候だった。 「君と同じように。あの響の甘い言葉に誘われ、彼の見せる偽りの安息に溺れていった。現実は辛いことばかりだ、ここでは誰も傷つかない、永遠に遊んでいられる……そんな、甘い毒のような言葉に、彼女の純粋な魂は絡め取られていった」
妹の運命が、私の運命と鏡像関係にあることが示される。 私は背筋に冷たいものが走るのを感じた。私が歩んできた道は、すでに誰かが歩み、そして破滅した道だったのだ。私は特別な存在などではなく、繰り返される悲劇の再演者に過ぎない。
「……響は、私の前からいなくなった」 私は問う。私の不安を、確認せずにはいられなかった。 「あなたが、あのお札で私を助けた夜から、ずっといないのよ。私の呼びかけにも答えない。彼は私を捨てたの?」
「彼は消えてはいない。君の魂が一度深く拒絶したことで、彼も容易に君に接触できなくなっただけだ」 朔は吐き捨てるように言った。 その声には、響への根深い憎悪が混じっていた。それは単なる敵対心ではなく、個人的な、骨の髄まで染み込んだ復讐心だった。
「妹もそうだった。最初は甘く囁き、徐々に現実との絆を断ち切らせ、孤立させる。親とも、友人とも、俺とも話さなくなった。そして、魂が十分に熟した時……彼は妹を奥へと誘い、そして妹は二度と、この現実の『器』へと戻ってはこなかった」
最悪の結末が、彼の言葉によって示される。 肉体の死ではない。魂の消失。 永遠に「あちら側」に取り込まれ、自我を失い、世界の構成要素として溶かされてしまうこと。存在の抹消。
朔は目を閉じ、深く、重い息を吐いた。 その呼吸は、自分自身を罰する重い誓いのように聞こえた。 「俺は必死だった。妹の体が、病院の白いベッドの上で、徐々に枯れていくのを見ながら。原因不明の昏睡、衰弱。医者は匙を投げた。『医学的には異常がない』と繰り返す彼らを、俺は殴りたかった。俺は、君の親友・椎名燈が君を案じているあの『真心』と同じ熱量で、俺も妹を追いかけたんだ」
彼の行動の原動力が、燈の愛と比較される。 純粋な願いの同質性。 「だが、俺の力は足りなかった。俺はただの高校生だった。この世界の理も、響の正体も、何も分からなかった。見えないものを相手に、どう戦えばいいのかも分からなかった。ただ、妹の手を握って祈ることしかできなかった」
無力感が彼の言葉を重くする。 その無力感が、彼に大きな代償を払わせることになったのだ。無力であることは、時として罪となる。
そして彼は、ゆっくりと胸に手を当てた。彼の白く細い指先が、装束の繊細な布地に触れる。その下にある、心臓の鼓動を確かめるように。 「俺の家系は、代々神社の家系だった。だが、もう久しくその『神聖』な力は途絶えていた。形式だけの神主、観光地化した神社。神のご加護なんてないものを売るだけの商売。……だが、家の蔵の奥、埃被った葛籠の中に、かつての先祖たちが封印した『禁忌』の書物が眠っていた」
彼は、禁断の扉を開けたのだ。 「妹を連れ戻すために、俺はその途絶えた回路を、無理やりこじ開けた」
それは命がけの禁忌だった。 正当な修行も、段階も踏まず、ただ「救いたい」という一心だけで、錆びついた魂の回路に高電圧を流し込むような行為。 「それは儀式と呼べるような生易しいものではなかった。古い呪具を使い、自分の血を触媒にし、寿命を削り、魂の一部をこの世界に差し出すことで、無理やり『視る目』と『干渉する力』を手に入れた。のたうち回るような苦痛の中で、俺は人間であることを半分やめた。血を吐きながら、それでも俺は力を求めた」
彼は自己犠牲の壮絶な過去を語った。 代償を支払うことでしか得られない力。 等価交換という冷徹な法則。血には血を、魂には魂を。
その言葉と共に、朔の身体から白銀の光が静かに、しかし力強く湧き上がり始めた。 それは、以前私を助けた時に放った、影の怪物を打ち払う鋭い閃光とは違っていた。もっと穏やかで、しかし底知れぬほど深く、重い光。 それは、魂そのものの輝きだった。
彼の装束に刻まれた銀の紋様が、脈打つように微かに輝く。 その光に包まれて、私は初めて彼の本質的な「痛み」を感じた。 肌が粟立つ。 その光は暖かいのではない。痛いのだ。 無数の針で刺されるような、あるいは極寒の氷原を素足で歩くような、鋭敏な感覚。 その痛みは、彼が背負う世界の重さだった。
彼は、世界の境界線の番人となったのだ。自らの意志で、この過酷な役目を引き受けたのだ。
「この世界の理。響の正体。この世界が成り立つ法則……その全ては、妹を追うその『犠牲』の過程で、俺の魂に直接刻み込まれた」
朔の声が途切れる。 知識は、苦痛と引き換えだった。 書物を読んで覚えたのではない。世界の裏側に触れ、焼かれるような痛みと共に情報を脳に焼き付けられたのだ。彼の瞳の奥に、無限の情報、数式、呪文、歴史が渦巻いているのが見えた気がした。 「この装束は、その暴走しそうな力の制御装置だ。……そして、俺が持つこの『神聖』な知識は、妹を助けることのできなかった俺の、罪そのものの刻印だ」
彼は、自身が持つ圧倒的な力を、誇るべき才能ではなく「罪」と認識している。 自己否定の深さ。 妹を救うために手に入れた力は、妹を救えなかった後では、ただ彼を苛む呪いでしかない。
彼のいつもの静けさ。 彼の影を帯びた雰囲気。 全てを見透かすあの冷たい瞳。 それらは、彼の天性の資質ではなかったのだ。クールな性格なのではない。 妹を救うという強い「犠牲」の願いと引き換えに、彼がこの世界から背負わされた「呪い」によって、感情を表に出す余裕さえ奪われているのだ。
彼は、この世界と現実の全ての境界の軋み、歪み、悲鳴そのものを、常に魂のノイズとして感じている。24時間、365日、止むことのないノイズ。 だからこそ、彼は常に目に見えない痛みに耐えているかのように静かで、そして全てを諦めたような顔をしているのだ。彼の冷たさは、他者を拒絶するためではなく、自分自身が崩壊しないための防御壁だった。 それは、自己防衛と自己犠牲の、あまりにも悲しい矛盾した結果だった。
私は息を呑んだ。 私の「悲しみ」とは違い、彼の悲しみは、他者を愛した結果背負った、あまりにも重すぎる荷物だった。 私の悲しみは、自己中心的な逃避。 彼の悲しみは、他者への愛が生んだ犠牲。
その質の圧倒的な差が、私の自己認識を激しく揺さぶる。私はなんて矮小な理由で、この世界に逃げ込んでいたのだろう。私の傷なんて、彼に比べれば擦り傷のようなものではないか。
「俺は、君に妹の姿を重ねている」
朔は認めた。 それは率直な告白だった。 「妹が奥へと進んでいった道筋を、君が今、正確になぞるように辿っている。……そして、君の親友・椎名燈が君を想うあの『真心』の光は、妹を救おうと必死だった俺の、あの時の無力な願いとあまりにも似ているんだ」
彼の瞳に、微かな涙の光が浮かんだ。 それは水晶のように美しく、そしてすぐに乾いた。 感情の表出は一瞬で理性によって抑え込まれた。彼は泣くことさえ許されていないのかもしれない。泣いている暇があれば、戦わなければならないから。涙は、彼にとって弱さの証明でしかない。
「俺はもう、誰にも『犠牲』を払わせたくない。燈にも、そして君にも、これ以上の代償を払わせるつもりはない」
彼は私を真っ直ぐに見つめた。 その瞳には、もう響への憎悪はなかった。 あるのはただ、切実な願い。 それは贖罪の願いだった。妹を救えなかった過去を、私を救うことで浄化したいという、エゴイズムとも取れる、しかしあまりにも純粋な願い。
「響は君の魂を必要としている。ただ一緒にいたいからじゃない。彼に愛などない。この世界は、常に新鮮な魂を燃料として燃やし続けなければ維持できない、歪な構造をしているんだ。君という生きた光、強い感受性を持つ『核』を世界の中心に組み込むことで、この崩壊しかけた夢の世界を永らえさせようとしている」
響の目的が、明確にされた。 愛ではなかった。選ばれたわけでもなかった。 私は、燃料だ。薪だ。 響が愛しているのは私ではなく、彼自身の孤独な王国なのだ。世界を維持する代償として、私の魂を求めている。あの甘い言葉も、優しい笑顔も、すべては私を焚べるための儀式だったのだ。
「君は、君のままで、響の孤独の代用品にされてはならない」
私という個の尊厳を守るための言葉。 それは、私の両親さえも言ってくれなかった言葉だった。「あなたのままでいい」と、誰が言ってくれただろうか。
朔は静かに手を差し出した。 ゆっくりと、私に向かって。 彼が纏う白銀の光が、その手のひらから溢れ出し、私に触れる。
それは痛いほどに清浄で、冷たかった。 冬の朝の空気のように、細胞の一つ一つを引き締める冷たさ。 彼の冷たさは、不純物を一切許さない純粋さの証だった。私はその清浄な冷気に触れ、魂の表面にこびりついていた澱みや甘えが、洗い流されていく感覚を覚えた。
「椎名燈が、君を連れ戻すための『真実』を持ってきた。彼女は君のために、現実世界で走り回っている。汗をかき、泥にまみれ、君の手がかりを探している。俺は、それをこの世界に持ち込むための道筋を知っている」
燈が道具を、朔が道筋を用意した。 太陽と月。 光と影。 正反対の二人が、私という一点のために協力関係を結んでいる。奇跡のような連携。
「だが、俺たちだけでは奴に勝てない。響はこの世界の神だ。この空間の法則そのものだ。外部からの干渉だけでは、彼の支配を覆すことはできない。この世界の法則を乱すには、この世界の鍵を持つ君自身の、確固たる『意志』が必要だ」
彼は私に、能動的な選択を求めた。 助けられるだけのお姫様ではいられない。 眠っているだけでは、王子様のキスでも目覚めない。 私の主体性が、戦いの鍵となる。
彼は静かに、しかし断固として言い切った。 「これは君の選択だ。君はここで、妹と同じように逃げ出し、世界に喰われて消滅するか。それとも、現実の痛みを受け入れ、俺たちと共にあの偽りの楽園を打ち破るか」
「……俺は、二度目の『犠牲』を払う覚悟はできている。今度こそ、救うために」
彼の言葉は、揺るぎない決意だった。 彼は自己の破滅を厭わない。私を救うためなら、彼は自分の命さえも再びチップとしてテーブルに乗せるつもりだ。傷だらけの魂を、さらに削るつもりだ。
朔の言葉は、私にとって重すぎた。 響の美しい世界を否定し。 私の逃げ場を完全に奪い取り。 私に「戦う」という、あまりにも過酷な「犠牲」を要求している。 受動的な存在から、能動的な戦士への変容。そんなこと、私にできるはずがない。私はただの、弱くて、逃げ出したくて、泣いているだけの女子高生なのに。
しかし。
彼の、双子の妹への深い愛。 その愛が生み出した「神聖」な力と、痛々しいまでの「犠牲」。 そして、私を代用品にさせないという強い意志。 何より、あの燈が、私のためにまだ走っているという事実。
その重さが、私の魂の空虚だった部分を、熱い鉛のように満たそうとしていた。 愛と犠牲が、私の逃避を打ち破る。 私の心が、軋みながら動き出す。錆びついた歯車が、悲鳴を上げながら回転を始める。
私の名前。 槙原、琴葉。 「琴」は、琴線に触れる繊細な心。風に震える弦。悲しみを受け止める器。 しかし、「葉」は? 植物の葉は、ただ揺れるだけではない。光を受け止め、光合成を行い、養分を作り出し、木全体を支える力強さを持っている。
そして、「槙」の花言葉。 ――『慈愛』。 ――『苦難に耐える』。 ――『高潔』。
槙原琴葉の「悲しみ」は、もう十分だ。 自分のために泣く時間は終わった。 絶望の終焉。自己憐憫の幕引き。
――次は「慈愛」を、使え。
心の奥底で、私の苗字に宿るもう一つの花言葉が、静かに、しかし力強く囁いた気がした。 悲しみから、慈愛への転換。 自分を守るためではなく、彼らの想いに応えるために。 傷ついた朔を、これ以上傷つけないために。 走っている燈を、迎えに行くために。 他者への意志の覚醒。
私は、震える手をゆっくりと上げた。 指先が震えている。それは恐怖からくる震えだった。けれど、それだけではない。 武者震い。決意の振動。 私はその手を、朔の差し出した冷たい手に重ねた。
ヒヤリとした感触。 まるで氷を握ったようだった。 だが、その瞬間。 彼の魂の冷たさと、その奥にある燃えるようなマグマのような熱情が、電流のように私の魂に流れ込んできた。 私の体温が彼に伝わり、彼の冷徹さが私に伝わる。 二つの魂が、物理的な接触を超えてリンクする。 契約を交わす。 連帯感の発生。共犯関係の成立。
彼は、私の手を強く握り返した。 痛いほどに。骨がきしむほどに。 その痛みこそが、現実への回帰の第一歩だった。
「……分かった」
私の声はかすれていた。長く使っていなかった声帯が軋む。 だが、そこには確かな力が宿っていた。 「……私は、私でありたい」
自己の確立。 それは、響の甘い否定と、朔の冷たい肯定を超えた、私自身が選び取った真実の自己肯定だった。 私は、私のままで、この痛みに満ちた世界を生きたい。傷ついても、裏切られても、それでも私は私として在りたい。
その覚悟が決まった瞬間。 鳥居の向こう側。 現実世界で、微かに開いていた私の部屋のドアが、ゆっくりと、音もなく閉まる気配がした。
パタン、という幻聴。 それは、現実との物理的な決別ではない。 逃げ道としての「ドア」が閉ざされたのだ。 もう、行ったり来たりはできない。曖昧な態度は許されない。 私は自らの意志で、この二つの世界を繋ぐ境界線に立ち、運命を受け入れた。 逃避から、直面へ。
朔は頷いた。 一つだけ、深く。 その頷きは、無言の承認だった。信頼の証。
「では、準備を始めよう。椎名燈が今、必死で集めているあの真実を待って始めよう」
彼は私から手を離すと、その神聖な装束を纏ったまま、翻るようにして再び闇の奥へと向かった。 彼の背中から放たれる白銀の光が、藤色の霧を切り裂いていく。 彼の姿の消失は、試練の始まりを告げる。 後に残されたのは、私だけ。
鳥居の下、私は一人佇む。 だが、もう孤独ではなかった。
魂の奥底に、朔の「犠牲」と「約束」という重い錨が、しっかりと打ち込まれていたからだ。その重みが、私を繋ぎ止めている。
私は、あの憎悪と愛の間で揺れる美しい青年、響を打ち破るために。 そして、響の孤独と向き合うために。
初めて、この「まどろみの世界」を、逃げ込むための安息の地としてではなく、戦うべき「戦場」として見据えた。
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