貞操逆転異世界クラス転移譚~男女比が1:99の世界にクラスごと転移したら男子たちの貞操がピンチだし女子の目つきが怖くなってきた~
三つ眼の荒木
プロローグ
とある高校の一教室。時刻は8時29分。
教室の扉を開けたのはクラス一の遅刻魔、花田勝だった。
「おはー」
「え、珍しいな。勝が遅刻しないなんて」
「いや、今日の朝ホームルームだっただろ。何決めるか分からないけど興味あって起きた」
席に向かいながら他愛のない会話をする彼はちらりと反対側の席を見る。
その視線の先にあったのは同じ遅刻仲間の女子生徒だった。一瞬視線が合ったが彼女から視線をはなされる。
「分かった!今日は金岡がいなかったから早く来たんだろ」
「だから違うって。金岡とはそういうのじゃねぇよ」
「えー、本当にそうか?」
「偶々道中であって一緒に登校しただけでからかわれるのに、一緒じゃなくても言われるようじゃたまったものじゃないよ」
と平静を装って苦言を呈す彼の心臓はバクバクと鳴っていた。当たらずとも遠からず。あの日まで俺たちは時間を合わせていたからだ。
するとチャイムが鳴り先生が教室に入ってくる。席から立ち挨拶をした後出席を取った。
「あら、今日は全員出席ね。ちょうど修学旅行の班決めをしようと思っていたから良かったわ」
「え、マリちゃん先生マジ?!」
「桃山さん、マリちゃん先生はやめなさいっ!怒りますよっ!」
「怒りますよだって!マリちゃん先生かわい~」
「もうっ!」
いつものように先生がからかわれる。変わらない日常だった。
次の瞬間、教室の床が急に光りだす。
「きゃぁっ!」
「何だこれ?!」
女子生徒が甲高い声で悲鳴を上げ、男子生徒も驚いた声を上げる。生徒が全員その場から立ち上がり、何人かは教室の端の方へと寄って行った。
オタク男子の中島大夢は最初驚いた様子だったものの、心の中に表れた疑問をそのままつぶやく。
「これは……魔法陣?」
魔法陣はさらに発光し教室が光に包まれる。あふれる悲鳴も徐々に薄れ、光が収まるころには机や椅子、生徒たちの荷物と静寂だけがその場に残された。
☆
光が収まり生徒たちが目を開けると景色はがらりと変わっていた。教室ではないのは誰が見ても明らかだ。大理石で建てられている西洋風の建物であり、地面は魔法陣のようなものが描かれている。彼らの学校の体育館程度には広い部屋で、壁の端にはローブ姿の女性が立っている。
「どういうこと?」
「え、ここどこ」
「意味わからないんだが」
「みんな落ち着いて!」
「何これ?もしかして夢?」
状況を理解できず各々が話し出す。泣きそうになる女子生徒やドッキリを疑う男子生徒、皆に落ち着くよう声を上げるクラスのリーダーや、何もできずおろおろしている先生。三者三様の反応の中、金属がぶつかる甲高い音とともに女性の声が響いた。
「静粛にっ!」
誰もが声の主に注目する。2m近くある身長。大きな甲冑を着込んだ彼女が女性だと気づけた理由は、凛とした声と、顔の一部しか見えてなくともわかる美貌、後ろで結んだ美しい金色の髪からだろう。
「まず初めに名乗らせてもらう。私はクリスティーン・ファン・バイルシュタインである。魔導騎士団第01部隊隊長についている。
次に君たちの状況について説明する。君たちは王の命により私たちが召喚した勇者である。君たちはこれから勇者として魔王を倒すために働いてもらう」
「ちょ、ちょっと待ってください。勇者とか魔王とかどういうことですか。まずここは一体どこなんですか?!」
クラスのリーダー的存在である男子生徒が彼女の発言に返す。
彼女は穏やかな笑みを浮かべて答えた。
「質問に答える前に一ついいか。勇敢なる紳士よ、君の名前を聞いてもいいかな?」
「俺の名前は神宮寺千里です」
「なるほど、ありがとうジングウジ殿。私の説明不足だったようだ。
まずここは君たちがいた世界とは別の世界。つまり異世界だ。私たちが召喚魔法により君たちを呼び出した。
その目的は君たちに勇者として魔王と戦ってもらうためだ」
魔王と戦うという言葉にざわつくがすぐに静まり返る。
何人かが異世界クラス転移とつぶやいていた。
「この後は王との謁見がある。ひとまずそれまでは別の部屋で待機――「ちょ、ちょっと待ってよ!」
女騎士隊長の言葉を女子の一人が遮る。
「勇者とか魔王とか意味わかんないんだけど!私達を帰してよ!」
ギャルっぽい見た目生徒、桃山楓の言葉に女騎士隊長は顔をしかめて答えた。
「すまないがすぐに帰すことはできない。しかし――「はぁ?!意味わかんない。なんで私達が戦わないといけないのよ。そんなの戦いたい男子だけ残って勝手に戦えばいいじゃない」
女騎士隊長の顔はさらに険しくなる。
「君たちを異世界に召喚したことは勝手なことではあると思う。しかしそれに見合った褒賞も――「勝手ならさっさと帰してよ!女子達だけでもいいからさ!友達が怖がって――」
「黙らんかっ!」
女騎士隊長が大声で叫び辺りが静まり返った。
「人が話している途中で言葉を遮るのは止めたまえ。最後まで話を聞け。
それになんだその態度は。男子であるジングウジ殿がこれほどまでに勇気をもって丁寧に話すなか、グチグチと情けない発言をして。
貴殿も初潮を迎えた女だろう。覚悟を決めろ!女らしくあれ!」
温和な様子だった女騎士の突然の激昂に誰もが驚き口を閉じた。今まで感じたことがないほどの威圧感と緊張感に場が包まれる中、一人の男子生徒が大声を上げる。
「貞操観念逆転世界キタコレ!!」
声の主、中津影久が空気を読めないボッチオタクなのは火を見るよりも明らかであった。
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