遥、誰に恋してるの?
hal39
第1話 出逢い
目の前には、私の心を壊した機械。
本来、人を助けるはずの、あの機械。
「じゃあ私、あなたに恋してたんじゃなかったってこと……? バカみたいじゃない?」
こぼれたその言葉に、彼は何も答えなかった。
ただ、力無く俯いて黙っている。
その沈黙が、すべてを物語っていた。
どんな慰めの言葉よりも。
どんな言い訳よりも。
その沈黙こそが、すべてを壊してしまった。
ひとすじの涙が、頬を、伝う。
「そう。わかったわ・・・。もう、いい」
「違うんだ、聞いてくれ・・・」
「何が違うのよ!」
思わず、感情が爆発した。
こんなに大きな声を、人に向かって浴びせたのは初めてだった。
彼はまた、力なく黙り込んだ。
私は涙を拭った手で、カバンから彼の部屋の合鍵を取り出す。
音を立ててテーブルの上に置かれたそれは、関係の終わりを告げていた。
私は理解していた。
この恋はもう、戻れない場所まで来てしまった。
”さよなら”
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「影踏橋って知ってる?」
同期の綾香がふいにそんなことを言い出した。
スーツの襟元を風に煽られながら、駅に向かって肩を並べて歩く。
立ち寄ったカフェのアイスコーヒーを片手に、肩掛けカバン。ヒールの音が夕暮れのビル街に響く。
綾香は続ける。
「あそこ、たぶん遥の地元じゃない?地味に有名らしいよ。テレビとかSNSでも出てて、“恋が叶う橋”とかなんとか」
「へえ」
私・・・桜井遥は曖昧に相槌を打ち、ストローをくわえる。
コーヒーの苦味が舌を通っていく。その苦味の奥に、小さな記憶がひっかかった。
影踏橋。
聞いたことのある名前。
「・・・私、もしかしたら行ったことあるかも」
「ほんと?デートで?」
「まあ、そんな感じ」
ごく自然な表情を心がけて。
「でもね、全然ダメだったよ。そのときの彼とは、すぐ別れた。
確か、橋を渡った三日後くらい」
「うわ、ひょっとして御利益、無かったってこと?」
「だね。
ああいうのってリアルな話、結局本人同士の問題だよね。
願掛けとか、ジンクスとか信じたところで、結果が伴わなきゃ意味ない。
信じる方が間違ってるんじゃないかな」
そこまで言って私は、自分の言葉に棘が混じっていた気がした。
そんな心配をよそに綾香は「そっかー」と軽く笑い、話題を切り替えた。
いつも通りの、他愛ない会話。
綾香は本当に気遣いがうまい。
感謝しながらも、遥の胸の奥には、わずかなざらつきが残っていた。
影踏橋(かげふみばし)。
それは、郊外の古い神社のそばに架けられた小さな橋。
地元では「縁結びの橋」として知られており、今もカップルがたまに訪れる ”隠れた恋愛スポット” 。
この橋にはこんな伝承がある。
江戸時代、橋の近くにあった神社に仕える巫女と、武家の青年が恋に落ちたが、身分の違いから引き裂かれそうになった。
二人はある日の夜、人目を忍んで橋の上で逢瀬を交わしたが、その後、青年は遠征先で命を落としてしまう。
巫女は彼の影を追い続け、毎夜橋の上に立った。
涙で頬を濡らし青年を想い続けたという。
この悲恋がもとになり、お互いが影を重ね合わせた事から影を踏む=影踏橋、と呼ばれる様になり、いつしか正式名称となったらしい。
影とは心の影、不完全さ、転じて真実の思いを象徴するものである。
日本においては、”影を踏む”という行動は”縁起が悪い”と考えられるケースが多い。
しかしこの橋においては、「影を踏む=影を重ねる=心の距離が近い」と考えられ、恋愛面で縁起物とされていた。
橋は僅か全長10メートルに満たない。
体感として写真で見るより小さく、訪れたカップルが拍子抜けする事もあるらしい。
しかも山の麓に位置するので、橋と神社以外は取り立てて周囲に何も無く、ここ最近は特に毎年の酷暑も手伝い、わざわざ好んで訪れる人が少なくなった。
詳しい伝承は橋のそば、朽ちた看板に書かれているのみとなり、風雨に晒され文字も一部読みにくくなっている。
地元民でも詳しい伝承を知る者は少なく、学生たちの間では、以下の噂が一人歩きしている。
夕暮れ以降に影踏橋の真ん中を、手を繋いで渡る。
手を繋ぐと、影が重なる。
そうするとカップルの恋愛は成就する。
手を繋がずに渡ると影が重ならず、別れる事になる。
影踏橋に伝わる、恋のおまじない。
そう、あの橋を渡ったのは、もう10年以上も前のことーーー。
高校生でまだ何も分からなかった頃。
付き合っていたのは、たしか“マコト”という名の男性だった。
手を繋いで橋を渡った記憶はあるが、顔も声も霞がかかった様にハッキリ思い出せない。
というのも、それ以上思い出そうとする事を体が拒否していた。
いつも通り、私はそれに抗うことなく、記憶の引き出しをそっと閉じた。
私はいつも、”嫌なことは完全に忘れる”事を心がけている。
人に言わせれば切り替えが早いとか、気持ちの整理が上手いとか、そんなふうに言ってくれるけれど、実際のところはただの防御反応なのだと思う。
そうでもしないと、飲み込まれてしまうから。
自分の意思をもって、不要な記憶を抹消してしまうのだ。
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私は、広告代理店勤務の29歳。
仕事でも、恋愛でも、”完璧”を求めてしまう癖がある。
白か黒か。
0か10か。
それ以外の“グレー”や”5”はどうにも気持ち悪くて、落ち着かない。
いつからこんな性格になったのかは、覚えていない。
幼稚園の頃、せっかく作った紙粘土の出来が良くないと泣きながら壊して、納得いくまで作り直しをしていたらしい。
大人になった今、プレゼン資料で少しでも改善点があると夜中でも起きて修正する。
毎朝のトマトジュースだってもう5年も続いてる。
でも世の中、あえて半分くらいで止めておいた方が良いことも沢山ある。
この性格のお陰で何度も失敗と後悔をしてきた。
就職の面接じゃ「欠点だけど努力してるんです」って言い方するしかなくて、いつも言い訳みたいで苦しかった。
わかってるけど、簡単には変えられない。
その反面、綾香はソツなく何でもこなす。
入社した時からそうだった。
同期の中で一番上司受けが良く、周りにもいち早く馴染んだ。
プレゼンでは資料が多少間違っていても致命的なものでなければ当日の説明でうまく乗り切ってた。
よく彼氏の愚痴を言うけど、もう4年も付き合っていてそろそろ結婚の話が出てきてもおかしくない。
私とは、何もかも真逆。
でも衝突しないのは、いつも綾香が危険を感じたら察して引いてくれるから。
口に出してなかなか言えないけど、感謝してる。
先週別れた彼氏とは正直なところ、結婚の話も出ていた。
きっかけは相談所での出会いで、綾香には”友人の紹介”と言ってある。
出会った時にときめく様な感じはなかった。
けど彼は優しく、私の事を気に入ってくれたので交際は続いた方だと言える。
でも、なんか違う。
おそらく、彼は私の”10”ではないからだと思う。
結局、私のそんな態度が表に出てしまったのか、彼の方から「もうここまでにしよう」と言われてしまった。
自分でも驚くくらいすんなり受け入れられたから、ずいぶん無理してたんだなぁと思う。
実際、別れてからたった2日で立ち直った。
その時も、察した綾香がクリームたっぷりのパンケーキをご馳走してくれたんだった。
あのまま結婚してたら、どうなってたんだろう。
結婚といえば年下の従姉妹、真理ちゃんが昨年、入籍した。
披露宴でブーケを取ったのは、私。
だから期待してた。
でも今は見ての通り。
30歳を目前にして、だんだん親からのプレッシャーもキツくなってきた。
前のお正月は最悪だった。
実家に帰省したとき、親戚の叔父さんたちから気にしている事を尋ねられ、逃げるのに精一杯。
デリカシー無さすぎ。
でもこのままで良いのかな・・・という気持ちがあるのは確かだ。
そんな私は一昨日から婚活を再開することにした。
マッチングアプリを始めようかと思ったけど、なんとなく中途半端な気がして、せっかくだからと思って登録した結婚相談所。
カウンセラーの女性、則子さんにはこう言われた。
「遥さんは妥協を許さないタイプだね。
しっかりとしたお相手希望を持ってるね。
誠実かつ堅実、価値観がピッタリ合って。
とにかく優しい男性が合うんじゃないかな」
私についての分析は良いとして、希望条件はどうなんだろう?
誰でもそんなものじゃないのかな、とも思う。
「でもね遥さん。せっかく相談所に入ったんだから、柔軟に考えてね。
相談所とは、あなたの価値観が本当に正しいかどうか確かめるところでもあるのよ。
自分でこうだと思っていても、その価値観が間違っていることもある。
相談所での活動は、それに気付けるチャンスなのよ。
人生って、予想外の事も起きるでしょう?それと一緒」
則子さんはそう言って、黒縁眼鏡をキラリと光らせた。
大きな体格、黒髪ボブカットで占い師みたい。
言いたい事はわかるけど、そんな選び方で結婚なんて・・・私は怖くてできない。
ただ、苦笑いするしかなかった。
※ ※ ※
「ねえ遥さん。この人、好みじゃない?」
則子さんは私の交際が終わったことをふまえて、次に会う人を提案してくれた。
ネット上で確認すると、なるほど写真は決して悪い感じじゃない。
というより、かなり好みに近い気がする。
同い年で身長は高め。
都内で証券会社に勤務している。
趣味は”旅行、テニス、読書”とあるけど、私も学生時代にテニスをしていたから話が合いそうな気がした。
旅行も読書も得意なジャンルだ。
アピール文章は至って平凡な感じだけど嫌味が無く、サッパリしていて嫌いじゃない。
思わず偉そうな意見になってしまったけど、かいつまんで言うと”会ってみたいと思った”。
「じゃあ、一度彼に聞いておくわね」
則子さんは満足そうに電話を切った。
かなりの好条件と言って良い。
もし会える事になったら、彼とどんな話をしよう。
交際まで進めたら、綾香にはどこで知り合ったと言おう?
我ながら、現金。
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「初めまして。藤原淳といいます。
遥さんですね。お会いできて嬉しいです。
今日はよろしくお願いします」
日曜日の14時、待ち合わせ場所のホテルラウンジは駅から距離があるせいか、人がまばらだった。
お店にはカウンセラー則子さんの名前で予約が入っており、店員さんに席まで案内されると既にプロフィールで見た男性が待っていた。
男性は私の目をまっすぐ見て挨拶をし、軽く会釈をするとニッコリ笑った。
私は対面1秒で後悔した。
ーーーーーーもっと、可愛くしてくるべきだった。
なぜ、買ったばかりのあのワンピースにしなかったんだろう。
写真で見るよりもずっと端正な顔立ち。
涼し気だが冷たい感じがない二重。
ゆるやかなウェーブの髪は肩を過ぎ、鎖骨のあたりまで滑り落ちるほどの長さがあったが清潔感を感じる。
ネイビーのダブルのスーツの胸元には純白のハンカチ。
細身でシュッとしたスタイル、足元まで気を配っており靴はおろしたての様だ。
染みわたる様な優しい声のトーン。
まさに非の打ちどころがない。
「初めまして、こちらこそ今日は有難うございます。
桜井遥といいます。よろしくお願いします」
私は自分の声が普段より高くなっている事に気が付いた。
思わず照れくさくなり目を伏せると、彼の手が目の前に差し出された。
「よろしくお願いします」
彼はもう一度そう言って微笑むと、私が手を出すのを待っていた。
少しだけ躊躇したけど、決して嫌な感じはない。
彼の手を握り返して、握手。
少し、暖かい。
初対面だけどスッと距離が縮まる。
「どうぞ先におかけください」
そう言われて、お互い立ち尽くしている事に気が付いた。
慌ててイスに座り、それを見届けた彼が遅れて着席する。
その瞬間、彼の髪がフワリと揺れ、左耳にほんの小さな補聴器らしいものが見えた。
私の一瞬の視線に気付いた彼は耳にかかった髪を指で上げ、バツが悪そうにこう言った。
「これですか?気になる様でしたらすみません。付けていないとちょっと不都合で」
「いえっ!全然気にならないです。こちらこそすみません」
心の中を見透かされた気がして思わず謝ってしまった。
「良かったです。中には怪訝に思われる方もいますので。先にこちらからお伝えしておくべきでした。遥さんは優しい方ですね」
人には色んな事情があり、触れてほしくない事もたくさんある。
ここはあまり掘り下げない方が無難だろう。
そもそも、彼の髪型のために補聴器を付けている事はジックリ見ないとわからない。
彼は飲み物を聞いてくれた。
私はアイスコーヒーを希望すると、店員さんを呼んでスマートに注文をしてくれた。
「遥さんは写真で見るより素敵ですね」
先制パンチがこれだったので、頭のてっぺんからつま先まで電気が走る。
心の中で落ち着け、落ち着けと何度も繰り返す。
相手のペースに飲まれてはいけない。
ただの交際相手を探している訳ではなく、目的は、結婚。問題は、中身。
「恥ずかしいです。でも、褒めて頂けて嬉しいです」
どうやら”私”という引き出しには無難なセリフしか入っていないようだ。
「お仕事は具体的に何をされているんですか?」
彼は言葉を選ぶように穏やかに、けれど着実に私の懐に入ってこようとする。
「広告代理店で企画営業をしていて、クライアントへの企画提案や進行管理などを担当しています。
忙しいですが、クリエイティブな仕事なので楽しいです。
藤原さんは・・・?」
アイスコーヒーが2つ運ばれてきた。
店員さんが席を離れるのを待ってグラスの氷がカランと涼し気な音をたてる。
「良かったら淳・・・ジュンって気軽に呼んでください。
名前で呼んでもらえた方が嬉しいです。
遥さんはとても素敵なお仕事なんですね。
お客様に夢を届ける。羨ましいな。
いっぽう僕は、しがない証券会社勤務です」
あくまで礼節を守り、こちらを立てつつさりげなく自分の事も話してくれる。
キャッチボールも完璧だ。
流れる様な仕草で内ポケットから名刺を出してくる。
「藤原 淳(ふじわら じゅん)
Axiom Securities Japan
投資戦略部 コンサルティングマネージャー」
外資系だ。上質な紙が使われている。
思わず「格好良い」と彼に聞こえないくらいの声が漏れてしまった。
しかし動揺を見せてはいけない。
あくまで、冷静に。
「有難うございます。私、あいにく今日は名刺を持ってなくて」
「気にしないでください」
「ふじ・・・淳さんは、お休みの日に何をされているんですか?」
「休日ですか?本当はゆっくりしたいところなんですが最近は勉強に追われてしまって。
いや、計画的にしていない自分が悪いんです。
勉強しなくちゃいけないのはわかってるんですが、僕のダメなところで。
気が付いたらいつの間にか、旅行雑誌を見てしまったりしていますね。現実逃避でしょうか」
そう言って彼は照れ臭そうに微笑んだ。
良かった。人間臭い所もあるっぽい。
「旅行がお好きなんですね、私も」
「最近、どこかへ行かれましたか?」
「先日、大学の友人と北海道に行ってきました」
「北海道!良いですね。北海道のどちらですか?」
テンポ良く会話が進む。
絶妙なバランスで質問、同調。質問、同調ーーー。
補聴器による不都合など全く感じない。
気がつけば予定の1時間を過ぎようとしていた。
「・・・遥さんがこんなに楽しい方だと思いませんでした。
初めて会った気がしませんでした。僕ばかり喋っちゃってすみません。
今日はもう時間が来てしまいましたが、あっという間でした」
「とっても楽しかったです。
私は是非、またお会いできたら嬉しいです。
あの、先日買ったばかりの可愛いワンピがあるので、良かったら今度見てもらえませんか。
本当はそれを今日、着てくるつもりだったんです」
「光栄です。是非拝見したいです。
きっと、よくお似合いだと思います。
それを楽しみに仕事頑張ります」
こうしてお見合いは終わった。
帰りの支払いもスムーズで、淳さんは何から何まで完璧すぎて怖いくらいだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「遥って、そんなにわかりやすい子だったのね?」
絢香はアイスコーヒーに付いていたストローの袋を何回折れるかチャレンジしつつ、続けた。
「さすがに”次、ワンピ見てください”は無理があるよ。
初対面なのに。遥にしては珍しいね」
「自分でも何を言ってるのかよくわからなかった。
とにかくこのまま終わらせたらダメだ!って。
まずかったかな」
「まあ良いんじゃない。引かれなかったみたいだから。
でもさ、ちょっと完璧すぎない?彼。
不自然だよ。欠点無くない?
ホントにリアルの人間なの?」
お見合いの翌日、昼休み。
今日は絢香とタイミングが合ったので一緒に会社の近くのカフェでランチをしていた。
「欠点かぁ・・・たしかに、欠点らしい欠点は無かったよね」
「補聴器くらい全然良いじゃん。そもそも片耳は元気なんだし。」
「会話が不自由とは一度も思わなかったね。
お店が静かだったからかも?自然なテンポだったよ」
「で、その後どうなったの?」
「次回の約束をして、お開きになったんだけど、家に帰ってからLINEでお礼を送ったら返事が届いて。
それから毎日やりとりしてる」
言い終わるや否や、テーブルの上に置いてあるスマホの通知が光った。
淳さんだ。
確認したいけど、今はちょっと。
スマホを裏返しに置く。
絢香がジッと見て微笑んだので、おそらく誰からの連絡かバレている。
私はふと窓に自分の顔が映っている事に気が付いた。
私、今、こんな笑顔で喋ってたんだ。
「でも本当に良かったね、遥。
そんな出会いもあるもんだね。
紹介してくれた友達に感謝だね」
絢香はもうこれ以上折れなくなったのか、ストローの袋をお手ふきに重ねた。
淳さんはいったん、友人からの紹介という事にしておいた。
相談所で出会った事を隠したいわけではないけど、あえてわざわざ自分から伝える必要もないと思ったから。
絢香と別れてから、すぐにスマホを取り出す。
<”早く遥さんのワンピース姿を見てみたいな”
彼からのLINEには可愛らしい絵文字が1つ、ついていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「昨日はどうだった?」
仕事終わりに立ち寄った相談所。
則子さんは大きな体を揺らして、既に私の心の内を知っているかの様に自信タップリに聞いてきた。
「もう本当に完璧でした。写真より全然素敵でした」
「そうよね。彼って、優しさが顔に滲み出てるでしょう。
今回、遥さんに紹介したのは、実は彼の方から遥さんに会いたいって言ってきたのよ。
内緒だけど、彼、遥さんを見つけてからすごく積極的でね。
他の女性のことは考えてないみたい。相当気に入られてるみたいね」
「そうですか。私の何が良かったんでしょうか」
「彼も遥さんと同じ意見で、もう全部理想的だって言ってたよ。
まだ一度も会って無いのに?って聞いたら、”僕の勘は当たるんです”だって。
彼、紳士的でマナーも良いから、遥さんならピッタリだと思う」
正直なところ、このまま淳さんが淳さんであり続ける限り、私はこれからも向き合っていきたいと考えている。
きっと、大丈夫。うまくいく。
自分にそう、言い聞かせる。
私は則子さんによくお礼を言って相談所を後にした。
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