第8話

 東京駅発・深夜特急バスの最前列で、タイジは静かに目を閉じていた。


 向かう先は、大阪・ミナミ。

 賭博テニス界の“原罪”とも言われる、非公式の施設――**ラストクラブ**。


 そこに、すべての元凶・**比嘉錬司**がいる。

 タイジの過去を奪い、仲間を壊し、そして――**雪野ミナ**を裏切った男。


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## シーン:大阪・ミナミ「ラストクラブ」跡地


 ネオンと酒の香りが渦巻く歓楽街。

 だが、その地下深くに広がる闇は、街の喧騒を吸い込み静まり返っていた。


 ラストクラブ。

 もとは財界人たちが私的に建てた「遊戯スポーツ施設」。

 今では“命を賭ける選手”だけが入れる地下球技の迷宮。


 扉を開けると、まるで巨大な美術館のような構造。

 螺旋階段、バロック装飾、赤い絨毯。そしてその中心に――黒土のテニスコート。


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## 登場人物:雨宮レイジ


 そのコートに立っていた男は、かつてタイジと同じジュニア強化合宿にいた選手。

 **雨宮レイジ**――かつての親友にして、今は比嘉の部下。


 背中には刺青、右腕は義手。

 その義手は**特注のカーボンラケット内蔵型義肢**。

 彼は、比嘉の「処刑試合(ジャッジメントマッチ)」専門選手。


「……タイジか。お前が来るのは分かってた」


「レイジ……お前まで、比嘉についたのか」


「ちげぇよ。……俺は、“ここ”にしか生き場所がなかっただけだ」


 タイジがラケットを構える。

 レイジも、義手からガシャリとラケットを展開した。


「一発で終わらせる。お前がまだ“人間”なら、止めてみろ」


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## 試合開始:処刑試合ルール


* ノーアンツ(ミスなし)形式、3ポイント先取。

* ラケット破損・出血・転倒などの**事故的要素**も失点対象。

* どちらかが「立てなくなる」まで、審判は口を挟まない。


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### 1ポイント目


 レイジの義手ラケットがうなりを上げ、**超重量スピンボール**を撃ち込む。


 「……チッ!」


 タイジが一度は受け止めるも、球の重みによって足を滑らせ、体勢を崩す。


 **1-0 雨宮レイジ 得点**


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### 2ポイント目


 今度はタイジが反撃。

 “無拍”からのジャンピングボレーで逆サイドを突く。


 義手では追いつけない距離――と思いきや、


 「見えとるわァ!!」


 レイジが逆手に持ち替え、**左腕のナイフラケット**でカウンター!


 だが、タイジは――


 **ボールをフェイクした**。


 振り抜いたのは空振り。その直後、本命のショットを“遅らせて”打ったのだ。


 **1-1 タイジ 得点**


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### 3ポイント目


 レイジが義手の出力を最大化。

 右肩の筋肉がバチバチと痙攣し、人工腱がきしむ。


 「この一撃で終わらせるッ!!」


 まっすぐなスマッシュ。

 タイジのコート半面を粉砕するほどの威力。


 タイジは――動かない。


 「何やってやがるッ、よけろタイジ!!」


 レイジの声。

 だが次の瞬間、タイジはその場で微かに“傾く”。


 球がタイジの髪をかすめ、背後の壁に**炸裂**。


 静かに踏み込む。

 そして、“静の間合い”から放たれる一撃。


 **「心打(しんだ)」**


 真芯で捉えた球は、レイジの胸元へ。

 その勢いに、義手ごと弾き飛ばされたレイジは、コートの外壁へ激突。


 **2-1 タイジ 得点**


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## 試合終了


 レイジはうずくまり、咳と共に血を吐く。


 「クソ……あのときと、変わってねえ……お前は……本物のプレイヤーだ……」


 タイジが膝をつき、手を差し伸べる。


 「目を覚ませ、レイジ。俺たちは、こんな場所で終わる選手じゃなかったはずだ」


 レイジは涙を流し、拳を叩きつけた。


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## 暗闇の扉の先に


 試合後、コートの奥の扉が開く。


 奥に現れたのは、スーツに身を包んだ美青年。

 だが、その瞳には一切の感情がない。


 **比嘉錬司**


「よう。久しぶりだな、タイジ。俺の“処分品”を、ずいぶん大事に扱ってくれたようだ」


「……お前だけは絶対に許さない。ミナを返せ」


「ミナ? あの女なら、“もう一度試合に出たい”って言うからさ。

 最終戦の対戦相手にした。……お前の、最後の壁ってわけだ」


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