超低物価の世界で恋愛運上げるために慈善活動を始めることにしました!九州編
加藤 佑一
第一章 月野姫華、金遣い派手過ぎて引かれる!
第一話 月野姫華、有明海に向かって叫ぶ!
陽が西に移動し始めてからどれくらいの時間が経ったのだろう。夏空に広がる厚雲のせいで陽の正確な位置を把握することはできない。が、もう明らかに待ち合わせの時間は過ぎていることだけは確実だった。
有明海の干潟、ガタリンピック(干潟で泥だらけになりながら行う運動会)が行われるこの場所で「一緒に干潟体験をしよう」そう言ったよね?
干潟の縁まで降りてきては堤防の方へ戻る。私はこの動作を、何度繰り返したことだろう。
堤防に戻る時、ラフな格好の一組の家族とすれ違う。全員満面の笑みを浮かべていて、私の存在など気づきもしてない様子だった。
いいな〜、幸せそう!
堤防を登り切ると腰を下ろし、スマホを取り出すと連絡アプリを開く。そこには画面いっぱいに既読の付いていない私のメッセージだけが並んでいた。
「ふぅ〜〜」
夏の暑さが体にまとわりつき、気怠さを増長させる。落胆しながら大きくため息を吐き、上にスクロールしていくと『月野姫華さん、あなたは俺が出会ったどの女性より美しい』なんてクサいセリフが文字として表示されていた。
「嘘つき!」
苛立ちを隠そうともせずスマホをバッグに投げ入れるように放り込むと、目の前に広がっている干潟に向かって、そうボソリと呟いた。
干潟の上では潟スキーと呼ばれる板に乗った漁師が長い竿を振り、むつかけ漁と呼ばれるムツゴロウ釣りをしている姿が目に入ってきた。
それと先程すれ違った家族が、干潟の縁で足を伸ばしたり縮めたりしながらキャッキャ、キャッキャと声をあげ始めている様子が映る。
楽しそうにしやがって!後ろから泥の中に突き飛ばしてやろうかな!と不謹慎な考えが沸き上がってくる。
私も今日、ああなるはずだったのにな……。
一緒に干潟体験しようって約束して、ここの道の駅で待ち合わせをしたはずの男は一向に姿を現さない。連絡も来ない。
どうやらすっぽかされてしまったようだ。
「はぁ〜、まーたフラれたかぁ……」
男にデートをすっぽかされるのはこれで何回目だろうか。私と2回目のデートを約束した男は大体こうなる。「何で?」と問い詰めると大体「なんか違うから」って言葉が返ってくる。
なんか違うって何よ!
あなた達は女に何を求めているのよ!
私は自分で言うのもなんだが、ハイスペック女子だ。ハイスペックで一軍女子、カースト上位女子で万能女子!
勉強も運動も得意、見た目も誰にでも「美人さんですね!」と言われるほどのレベル。同世代の女子から頼られることも多く、人気も常にトップ!
当然男子にもメチャメチャモテる。高校3年間でコクられた数は三桁をいっている。私がデートを承諾すると飛び上がって喜ぶのだが、2回目を誘ってくる男は今まで誰一人として現れなかった。
私は男子に「守ってあげたい感ゼロ女子」なんて陰で揶揄されていた。
守ってあげたい感ゼロって何よ!
なんか違うって何よ!
私のことなんだと思ってるのよ!
私の顔を見ると男なんてすぐに鼻の下を伸ばして近づいてくるくせに、1回デートしただけで、すぐになんか違うとか言い出して私から離れていってしまう。
どーせ、なんでも卒なくこなしてしまう私に劣等感を感じているんだろ!
どーせ、男なんてなんだかんだ言って、女性のことを下に見ているんだろ!
何かあったときは強く言えば黙るだろうとか思っているんだろ!
だから、私と接してみて敵わないと思ったから避けるようになってるんだ!
「きゃ〜〜!」
「あっぶね〜な〜!コケるなよ〜!」
いつの間に降りて行ったのだろうか?縁の部分にカップルが現れ干潟に足を踏み入れ、大騒ぎし始めていた。女性が足を取られ転びそうになっているのを、男性が女性の体を支えるようにしていた。
私は万能女子。私があの場にいたらきっと立場は逆だったことだろう。私は要領よく歩き、男性が転びそうになってるところを支えていたかもしれない。
あんな風に甘えられたらな……。
「ありがとう。なんでこんなとこでちゃんと歩けるの〜」
「体幹には自信あるんだー、俺について来いよ!人生もな!」
チッ!私の前でイチャつきやがって!
幸せそうなその姿に嫌気がさした私は、気怠い体を無理矢理立たせ、人気を避けるように堤防の奥へと歩を進める。
あいつら全員泥に足を取られて抜け出せなくなってしまえばいいのに!
あ“〜なんだか腹立ってきた!
「海の〜、バッ、キャ、ロ〜〜っ!」
「ふっ、ふふふ、お前、面白いやつだな!海に向かってバッキャローとか言うヤツ初めて見たぞ」
!?
え!?
見られた?
醜態を晒してしまったと思い、全身に熱が駆け巡った。
声の主を探し周りを見渡すが、近くに人の気配は感じられなかった。
え?今の声……何?
どこから聞こえてきたの?
私が海に向かって大声を上げた後、間違いなく不思議な声が聞こえてきた。耳に音として聞こえてくるような声ではなく、骨伝導イヤホンから伝わってくるような、頭に直接振動を与え響かせてくるような不思議な声だった。
??
え?もしかして今の声?幽霊ってやつ?
私は不思議な現象に恐怖を感じたが、動揺している様子を誰かに見られるのは腹立たしかったので、平静を装いながら周囲を探るようにしながら後退りした。
「待て待て、どこに行くんだ、こっちだこっち」
!?
え!?
また聞こえたんですけど??
再び声が聞こえてきたような気がした。聞こえてきた方に目を向けるが誰も見当たらない。視線の先にあるのは白くフワフワしたタンポポの綿毛の塊のようなものだけ。綿毛がバラバラにならず、球体のまま浮いているのが一つ見えるだけだった。
「ここだよここ、もっと近づいて私のことちゃんと見てみろ!」
え!?
白いフワフワしたものから声が聞こえてきたような気がした。私はまさかとは思ったが、白いフワフワしたものの方へと歩を進め目を凝らす。
!!
「きゃあ〜〜っ!何コレ〜ッ!!ちょ〜〜、可愛いんですけど〜〜♡」
白いフワフワした物体にはチョンチョンチョンっと目と口のようなものが付いていて、体から僅かに伸び上がっている三角状の羽のような突起物をちょこちょこ上下に動かし舞い上がっている様子だった。
な!な!なん、なんなの〜!
この、ちょ〜可愛い生き物は!?
なんだろう、この心のざわめきは!
私はあのフワフワしている物体を、無性に抱きしめたくて仕方がない気持ちになっている。
私は恐る恐る白い物体に手を伸ばしてみる。逃げ出すような様子は見られなかった。人間が怖くないのだろうか?
このまま伸ばしていったら触れることができる。白い物体に触れるかどうかという距離まで近づいたと思った瞬間だった……。
目の前が真っ白になり、真っ白は私の体を一瞬にして包み込んでしまう。真っ白に包み込まれるとジェットコースターに乗っている時のような、心臓がスゥーっとする感覚が胸から体全体へと広がっていった。
え!?
何この感覚!?
視界に色味が戻ってくると目の前に白いフワフワしたものが現れ、ちっちゃい羽をちょこちょこ動かし、お飾りのように付いているちっちゃい口をちょぼちょぼ動かし言葉を発してきた。
「月野姫華よ。喜べ、お前を素敵な世界に誘ってやったぞ!お礼に私の言うことを聞くんだ」と、言ったみたいだが私の耳には届いてこなかった。
だって、この白いのが可愛すぎるんだもん♡
「きゃ〜っ!可愛い〜〜!な〜に、これ〜〜♡。喋ってる〜♡」
興奮を抑えることができず、拳を軽く握り顎の下に持ってきて、甘えるようなポーズをしながら小刻みに何度も何度も体を震えさせる。
「はぁー、これだから若い女は嫌いなんだよ!おーい!私の話聞いてるかー!目がイっちゃってますよー!」
はっ!私としたことが……ついうっかり理性を失ってしまっていた!
その言葉を聞いた私は少し冷静になり、見たこともない白い物体の正体を探ろうと顔を近づけゆっくりと手のひらの上に乗せた。
う“〜〜、可愛い……何これ〜♡
握りつぶしたくなるくらいに可愛いんですけど〜〜♡
「コラコラお前、何か変なこと考えているだろ!てか、いつまで体をくねくねさせているんだよ!いい加減、私が何者なのかとか、何で喋れるの?とか聞けよ!」
あ!そうだった、すっかり忘れてしまっていた!
この子は一体何者なのだろうか?
※月野姫華のイメージ画像です(^^)
https://kakuyomu.jp/users/itf39rs71ktce/news/16818792436766505345
※月野姫華が見ていた有明海の干潟とむつかけ漁の風景です(^^)
https://kakuyomu.jp/users/itf39rs71ktce/news/16818792436822938434
※白いフワフワした物体のイメージ画像です(^^)
https://kakuyomu.jp/users/itf39rs71ktce/news/16818792438129492483
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