第五十三話 『戦争開始前夜。ギルドは退避。俺はドレスを着る羽目になった』──皇帝に会うために、なぜか俺が紅を引く。

「あんたたち!」


 おれたちが話していると、ナザリオが城にきた。


「どうしたナザリオ」


「帝国が全ての国に宣戦布告したらしい! 戦争が始まるよ!」


「あんたはやはり動いたのか。 だがいまなら逆にチャンスだ。 帝都に入る方法はあるか」


「帝都...... なくはないが、こっちにとっても危険すぎる」


「なら頼む。 ディムリアがとらわれているんだ」


「ディムリア嬢ちゃんが...... 仕方ないね。 ならついてきな」


「バスプットはどうする?」 


「全員に王都に逃げるようにラーク卿と王様に頼もう。 クルゼクスに王都の防衛もらえばかなり時間は稼げる」


 おれはすぐに王様に許可をえると、バスプットに向かいみんなをクルゼクス舘を退避させた。



「ここか......」

 

 そこはひと一人とおれるぐらいの崖の道だった。 ナザリオに帝国へと侵入できる経路として教わった場所だ。


「ああ、私たちが帝国から逃げるもののためにつくった脱出経路さ」


「なるほど、ナザリオはそんなこともしてたのか」


「まあね。 この道はかなり過酷だけどね」


「だが前のように見つかる可能性はあるんじゃないか」


 ワイズはそういう。


「もう魔鉱宝石オリハルコンジェムは残りひとつだ。 おれたちがもっていないのはグアレナがしっている。 わざわざ調べはしないだろう」


「だけどもうひとつは見つかりませんでした。 やはり帝国が手に入れているのでしょうか?」


 セリエスがいう。


「それなら帝国は魔鉱宝石オリハルコンジェムを皇帝を含めて三つもってるということですわ...... しかも皇帝一人でさえ、ディムリアを圧倒していたですわ」


「ああ、かなり分が悪いな」


 ミリアとルードリヒはとても硬い表情だ。


「......皇帝にさえ接近できれば勝機はある」


「ぼくはシュンさんをいつも信じています!!」


「まあ、なにかをやってくれる男ではあるな」


「ああ、頼むぞシュン」


「仕方ないですわ。 もう信じるしかないですわ」


 みんながそういった。


(ああ、やらないとな。 それに最悪の想定もしないと...... そのためには)


 そう思案しながらおれたちは険しい岩山を越え帝国へと入ることに成功した。



「さすがだなナザリオ、帝国にまで人を潜り込ませてるのか」


 おれたちはナザリオが帝国に用意していた馬車にのり、帝都を目指していた。


「まあね。 だけど、かなり高くつくよ。 こっちも命を懸けるんだからね」


「うっ...... わかった。 それはなんかゴニョゴニョする......」


「しかし、帝都に入りどうする? そうそう城の中にいる皇帝まで近づけるとは思えんが......」


 ルードリヒが不安そうにそういうと、ワイズがうなづいた。


「おれはなかには入れん。 顔をしられている可能性がある。 ディムリアがいない今、前のような工作も難しい」


「そうだな。 それに対策されててもおかしくはないな。 最悪、突っ込んで強引に進むしかないか」


「無理ですわ。 すぐ兵士に捕まるですわ」


「そうだな。 情報だと帝都だけで10万人は兵士がいるって話だ」


 ナザリオが考えながらそういう。


「さすがに正規兵10万人とは戦えませんね」


「ああ、セリエスのいう通りだろう。 おれたちがかつて工作したから余計に警備が多くなっているのだろうな」


 ワイズが眉をひそめる。


「でも、できるだけ皇帝に対面するまで体力やスキルを温存したい。 なにかないかナザリオ......」


「......ひとつだけ方法がある。 ただかなり運任せになるけどね。 やるだろ」


 ナザリオはそういって話し始めた。



「ナザリオ、本当にこんなんでいけるのか?」


 おれたちは女物の服を着せられ、化粧もされた。 


「皇帝は国威発揚のための戦争の式典を行う。 そのために式典を華やかにするために女性を集めているんだ」


「それにしてもセリエスは似合うな」


「そうですか?」


「似合うですわ」


「......ああ、そうだな」

  

 みんな意図的におれのほうをみないし、なにもいわない。


「......くすん。 これで皇帝に近づけるのか」


「もちろん、一応街から城へと続く地下水路がある。 だが剣など持ち込めないよ」


 ナザリオがいう。 


「ナザリオ場所を教えてくれ、おれは剣をもち帝都内に後からなんとか侵入するから、お前たちは皇帝に近づけ」


 ワイズがそういって武具をもち、馬車から降りた。


 そのままおれたちは帝都の検問にすすむ。 そこには大勢の女性たちが並んでいた。



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