第二十話 『怠け者と蜘蛛の樹海』──アラクネ討伐、再生の森に挑む。

 おれたちは奥の建物へとすすんだ。


「回りにいる奴らは手をだしてこないですわ」


「ふふっ、こっちにはセリエスがいるからだ」


 建物につく、扉をたたいた。


「ナザリオはいるか。 セリエス先生がきたぞ。 あけやがれ」


「さっきまで怯えていたのに急に強気になったですわ」


「本当に見下げ果てた男じゃな」


「なんだ?」


 扉を開けられると、数十人の武器をもつ男女がいた。


「なんだい? あんたらは騒がしいね」


 その人混みがわれ、長身の女性があらわれた。


「ナザリオって女なのか」


「悪いかい」


「別に悪かない。 すこし話にきた」


「話、子供の話なんてきくきはない...... といいたいところだが、あんたらバジリスクを倒したっていうやつらだね」

  

 そうナザリオがいうと、周囲はざわざわとしだした。 おれたちは奥のソファーに招かれる。 


(どうやら優秀な顔役ってのは本当らしいな)


「モンスターを討伐できる人材がほしいんだ」


「モンスターを。 あんたらがたおしゃいいだろ」


「冒険者っていう職業をつくろうと思っている。 依頼をうけて様々な任務を受ける仕事だ」


「傭兵かい」


「まあ、そんなとこ。 うちは依頼人に冒険者を派遣してモンスターの買い取り、武具の販売なんかを行う」


「仲介業か......」


「ああ、どうも人が集まらないから、あんたらに協力してほしい」


「そりゃそうだ。 そんな聞いたこともない仕事に依頼するやつも所属するやつもいないさ」 


「まあ、そうなんだ...... このままモンスターが増えるとみんな困るが、おれたちは全てのモンスターとは戦えない。 うけられる仕事に限りがあるしな」


「......嘘だね」


(すぐばれた)   


「あたしはよく人を見てきたんだ嘘をつくやつはすぐわかる」


「どうするですわ! すぐばれましたわ!」


「そうじゃ、あほうめ!」


「まあそうだろうな。 おれもばれるとおもったよ。 あんたはおれと同じ種類の人間だからな」


「......ほう」


「でも、俺たちの話を聞こうとした。 ってことはそっちには話を聞く気があるってことだ」


「なるほど、同種ってのはそういうことかい。 それで目的は」


 こちらをうかがうようにナザリオはきいた。


「おれは楽して生きていたい。 できるだけうごきたくない働きたくない、ナメクジのように生きていたい」


「......指定災害モンスターを倒しておきながらかい」


 ナザリオは怪訝な顔をした。


「あれはいきかがり上やむなくだ」


「そうですわ! シュンは根っからの怠惰の塊ですわ!」


「うむ、だがどういうわけか、無駄に動くはめになっておる。 アホゆえにだ」


「誰がアホゆえにだ!」


「そんなことはありません! シュンさんはすごい人なんです!」


「や、やめて、セリエスそのキラキラした目で見ないで...... 罪悪感が爆発する」 


「ふはははははっ、どうやら誰も嘘をついてないようだね。 そんな馬鹿げたことを考えるなんて面白そうじゃない。 ただ依頼者がみつかるか?」


「それはこれから...... ゴニョゴニョ」


「その依頼者の件も引き受けてもいいぞ」


「ほんとうか!」


「......ただ、こっちの件もうけてもらうがな」


 そうナザリオはこちらをみすえた。

 

「ここがナザリオのいっていたアスルトって所か」


 目の前に樹海がひろがる。


「ええ、かつてはハリエル共和国の貴族バイジェルス家の領地だったのですわ。 それが二十年前にこんな感じになったそうですわ」


「いや、たった二十年でこんな感じにはならんだろう」


「......それがなったのさ」


 後ろの茂みからナザリオがきた。


「おれたちが本当にくるか監視か?」


「まあね。 それにここを久しぶりにみたかったんだ」


「久しぶり...... ここ出身ですわ」


「ああ、子供の頃さ」

  

 ナザリオはそうこたえながら空を見る。


「それでナザリオさん、ここにそのモンスターがいるのですか?」


「ああ、指定災害モンスター、【アラクネ】だ。 やつが現れてこの国は樹海になった」


「ナザリオよ。 アラクネとは蜘蛛ではなかったか?」


「そう、蜘蛛の下半身に上半身が女性のモンスター。 樹木を魔法で操るんだ」


「なるほど、それならミリア魔法で焼いてやればいい。 人もいないんだ。 燃やしても構わないだろう。 なあナザリオ」


「そう思うならやってみればいい」


「わかりましたですわ。 ファイアボール!!」


 炎の球体が森に火を放つ。 しかしすぐに火が消えた。


「火が消えた?」


「ああ、ここの樹木はアラクネの魔法がかかっていて火がつかない。 それに切っても再生する」


「なるほど、それでこんな広がっていったのか」


「ああ、それでどうする? 帰るか? おまえは面倒なことはやりたくないのだろう。 下手をしたら死ぬぞ」


「当然帰りたいが、やめればここまで投資したお金が無駄になる。 やるしかない」


「やりましょう! アラクネを倒せばこの樹海はなくなるはず!」


「しかし再生する樹木とは厄介じゃ」


「燃やせない、切っても再生...... か。 前の蒸気の作戦はつかえんな。 ディムリアなにか弱点をしらないか」


「ふむ、アラクネか。 本体には魔法がきくはずじゃ。 ただ鋼のような糸も操るうえ、強靭な子グモたちをはなつな」


「鋼の糸か...... 厄介だが捕らえれば倒せそうだな。 セリエスその木を切りたおしてみてくれ」


「はい!」


 セリエスが空まで届くような木を大剣できる。 木は倒れるがすごい勢いで木られた場所から木々がはえてきた。


「倒してもすぐ再生か。 でもこれ建材として使えるんじゃないか」


「よくみな」


 ナザリオがいう。 みると倒れたほうの木はすぐに枯れくだけ落ちた。


「......枯れた」


「アラクネはこの大地に魔力を放ってるんだ。 だから切られた木は枯れる」


「それでこんなすぐ成長や再生するのですわ」


「なら直接本体をやるしかないな」


「やれるですわ?」


「おれとセリエスで子グモをやるから、ミリアとディムリアの二人でアラクネ本体をやってくれ」


「わかりましたですわ」 


「まかせろ」


「ナザリオはどうする?」


「そうだな。 私も魔法とこれを使う」


 そういって個人的にまいたムチをしならせた。


「似合うな。 ん? 魔法を使えるのかよ」


「......ああ、まあな」


「そうか、ならディムリアとミリアの護衛をたのむ」


「わかった」


 おれたちは森へとはいっていった。

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