第五話 『トレント討伐成功! でも次はダンジョンですって!?』──ミリアの忠告は聞かない主義。

「さて、あまり動きの機敏じゃない遅いモンスターと戦おう。 なんか手頃なのある?」


「そうだな。 速くはないが、すこし固くてなかなか取ってこれるやつがいないモンスターがいるな。 だがそもそも見つかるかどうか......」


「すこし固いなら試すのにちょうどいい。 それにしよう」


 おれたちはモンスター屋で依頼をうけると早速でかけた。


 

「ここか、本当にモンスターがいるのか?」


 依頼のあったフレドの森へとやってきた。 そこは特に木漏れ日がここちよく、木やくさばなの香りがする普通の森だった。


「そうですわ。 モンスターが現れたのを木こりが見つけたらしいですわ。 ここは町が近いから速く倒さないと町の人々が危険ですわ」


「ふむ、それは大変だな。 がおれの興味はモンスターを倒して金をえることだがな」


「......最低ですわ」


「まあな」


 ミリアの忘れるぐらいいわれていたののしりを軽く受け流した。


「とりあえず魔法での援護を頼む」


「わかりましたですわ。 でも本当にその弓でなんとかなるんですわ?」


「ああ、四本の腕なら安定してはなてる」


 おれたちは森を探索する。



「特に異変はないな。 そもそも、ここいらには結界が張られてモンスターがいないんじゃなかったのか?」


「そうですわ。 ですから兵士たちは信じず動いてないですわ」 


「ならみまちがえとかかもな」 


「どうやらそうではないようですわ......」


 向こうの茂みに大きな影がうつる。 それは人の形をした木のようなモンスターだった。


「あれがトレントか」


「ええ、ここでは炎の魔法はつかえないですわ。 延焼して危険ですわ。 風の魔法で牽制するですわ。 トレントは頭が弱点ですわ」


「ああたのむ。 その間におれは弓をつかってねらう。 第二の器官セカンドオーガン


「ウィンドシクル!」


 ミリアが唱えると、風がふきトレントに無数の傷をあたえた。


「ギギギィ」


「やはり固くてあまり効いてないですわ!」


「よし、まかせとけ」


 おれはつくりだした腕二本に弓をもたせると、両腕で弦につがえた矢を引いた。


「いけ!!」


 放った矢は一直線に飛びトレントの胸にささった。


「ギィィィイ!!」


 トレントがこちらに向かってくる。


「だめか!」


「いえ効いてるですわ! 頭をねらって放つですわ」


「そうか! 当たるまで何発もやってやる!」


 おれは何度も矢を放つ。 腕や足をいぬき動きが鈍くなった。 ただ外れるのも多い。


(照準が定まらない! おれの筋力だとこれ以上はきつい! よくねらってはなつ!)


 その一本が頭を貫くとトレントは倒れた。


「やりましたですわ!」


「ふぅ、なんとか倒せた...... でも簡単じゃないな」


「威力はあるですわ。 でも正確にあたってないですわ」


「ああ、何回も両手で弦をひくと、どんどん精度が落ちるな」


「非力ですわ......」


「わかっとるわ! なんとか鍛えなくてもいい方法を考えねば」


「鍛えればいいですわ!」


「いや! できるだけ楽するの!」


「あきれ......」


「どうしたミリア」


「なにか妙な魔力をかんじるですわ...... あれ、なんですわ」


 茂みの奥に洞窟のようなものがみえる。



「ただの洞窟だろ」


「いいえ、なにか人工物ですわ。 それにこの魔力......」


 近くにいくと確かに人が掘ったようなあとがある。


「なんだ? 鉱物でもでんのか?」


「......もしかしたらダンジョンかもしれないですわ」


「ダンジョンって迷宮?」


「そうですわ。 かつての魔法使いなどがつくった遺跡や迷宮ですわ」


「なんのために?」


「魔法の研究や隠れ家、宝物を隠すためにつくったものですわ」


「宝物!! ほんとか!」


「ただダンジョンには魔力が濃くて、強いモンスターが多く生息しているですわ。 だからこの森にあんなモンスターがいたのですわ」


「なんでだ?」


「モンスターは魔力を浴びた生物やら無生物やらが変異した存在ですわ。 ダンジョンは大抵、高魔力に満たされていてモンスターが生まれやすいですわ。 この事を国に伝えれば報償がでるですわ」


「なるほど、だが国に伝えるのはやめとこう」


「どういうことですわ?」


「危険だからと封鎖されるとこまる。 宝物があるんだろ」


「はいるつもりですわ! 正気ですわ!!」


「怖いのは確かだが、もしお宝が手にはいればもう働かなくてすむ。 どちらにしろ、このままモンスターを倒す危険をおかすなら、一回の危険で生涯いきられる方を選ぶのがいい......」


「あほですわ!? 絶対死ぬですわ!」


「いや、そうとも限らん。 このスキルを、うまく使えば可能だ」


「やめるですわ! 私はついていかないですわ!」


「おれはいく! この後の楽な人生のために! おれはいくんだ!」


「かっこ悪いことをかっこよくいうのはやめるですわ!」


「働きたくないから危険な道を選ぶ、これは逆に努力だろ」


 おれは止めるミリアをおいて洞窟へと向かった。

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