第三話 『賭け事で一発逆転!?』──卑怯者には卑怯者の読みがある。
「おお、けっこういいサイズだな。 食われて死ぬともったが、これが代金だ」
店主は笑顔でそういうと、奥からじゃらじゃらとなる袋をだした。 中には銀の硬貨がはいっていた。
おれたちは店をでて町を歩く。
「ほらお金がはいったですわ」
「でも、モンスターはヤバいからな。 次もうまく行くとは限らない。 ほかにお金がもうけられて楽な仕事はないかな」
「そんなものないですわ。 さっさとモンスターを倒すですわ」
「さっきもたまたま勝てただけだぞ! あんなこと繰り返してたらおれは死ぬ。 この第二の
「そんな、都合のいいはなしはないですわ」
「あるかも」
「ええええ!?」
驚くミリアを背にして、おれは店にはいる。
酒の匂いと興奮の熱気が充満した酒場だ。 飲んだくれたちが管をまいている。
その一角で男たちがあつまっている場所がある。 カードゲームに興じているようだ。 勝ち負けで一喜一憂している。 銀貨を叩きつける音が勝負のたびに響く。
(やはり、賭け事か...... 今あの男がかってるな)
おれはそのいくつかのテーブルをみてまわり、しばらくゲームを覗いていた。
「くそっ! 全部いかれた! 最初勝ってたのに!!」
おれよりすこし年上の細い色白の若い男が天をあおぐようにいった。 テーブルにおかれた銀貨を相手の長髪の男がそうどりしている。
(こいつ......)
「お前もやるつもりかガキ」
小柄な男が声をかけてきた。
「あ、ああ」
(怖いが、モンスター相手よりはましだな)
「金は?」
「ここにある」
おれはもらった銀貨をみせた。
「ほう、ガキのわりにもってるな。 よしいいぞ」
椅子に座る。 一応のルールはきいた。 カードの数字を揃えるポーカーのようなゲームだった。
(このルールなら)
「本当にやるつもりですわ」
いぶかしげにミリアがいった。
「あ、あの。 ルールはさっききいたことでいいだろ」
おれは小柄な男にきいた。
「ああ、そうだ」
「イカサマは?」
「そりゃ、ご法度だ。 有無をいわせずしばって川に捨てる」
そう相手の長髪の男が酒瓶を片手にいった。
「......わかった」
「じゃあ、お前らイカサマがないようにカードを配ってくれ」
「わかったジェレミ」
観客の一人がおれと長髪の男ーージェレミにカードを配る。
「よし!」
勝負が始まるとそれから何回かかつ。 負けるとジェレミは少し不満顔だ。
「ほお、ついてるな坊主」
「まあな」
「まさか、イカサマをしてるんではないですわ」
そう小声でミリアがきく。
「............」
「次の勝負だ」
しばらくかって負けてを繰り返す。 ただ俺の方が圧倒的に勝っていた
「......こう負けるのか。 どうも今日は運が悪そうだ。 どうするこのままじゃたいした額にゃならん。 ここらでレートをあげねえか」
「......わかった」
「やめるですわ! 結構勝ってるですわ」
「じゃあ、今までのそうどりだ」
ジェレミはそういうと、銀貨の袋をいくつもテーブルの上にだした。 周囲から息をのむ音がした。
「それじゃあ、覚悟がいいか、これで勝負だ。 降りるなら今だぞ」
「......い、いや、勝負する」
おれも袋をテーブルにのせた。
「いい度胸だ......」
カードがくばられる。 ジェレミは手札をみて笑みをうかべる。
「おれのかちだな」
そういうと手札をテーブルにおいた。 周囲からはため息がもれた。 とても勝てないほどの手だった。
「残念だったな坊主」
「ひきぎわってのがあんのさ」
「まあ人生こんなもんだ」
「いい勉強になったと思えよ」
そう周囲がせせらわらったり同情している。
「じゃあこいつはもらっていくぜ」
ジェレミはそういって袋に手を伸ばした。
「まってくれ」
「なんだ...... いまさらなかったことにはできねえぞ」
「イカサマしたな」
周囲がどよめく。
「ほう...... お前、なにいってるかわかってんのか」
そうジェレミはこちらをにらんだ。 特にあせる様子もない。
「坊主、負けたからってイカサマ呼ばわりはいけねえ」
「そうだ。 その証拠があるのかよ」
周囲を不穏な空気がつつむ。
「......ある。 そのカードの残りを調べればわかる」
「もしでてこなければお前はしばって川に放り込むぞ」
「ああ、そうだ!」
周りの男たちがいきりたつ。
「まあ、まて、さっさと証拠をだしてもらおうか。 おいカードを確認しろよ」
そうジェレミは余裕しゃくしゃくでいうと、カードを配った男はカードをつかもうとした。
「うわっ!」
男の腕が引っ張られたようにのび、袖からバラバラとカードがおちた。
「なっ!?」
「こいつカードを隠し持ってたのか!」
「ジェレミ! てめえ! イカサマしてやがったのか!」
男たちがジェレミをみると、舌打ちしてジェレミはテーブルをひっくり返し店を飛び出ていった。
「でも、どうやって見破ったのですわ」
ミリアが不思議そうにきく。
「こういう所じゃイカサマするやつがいるだろうと思ったんだよ」
「それがジェレミですわ?」
「ああ、だから第二の
「だから配ってる男が仲間だとわかったですわ...... でもジェレミがイカサマをしてるかは確定してないですわ。 シュンの勘違いかもしれないですわ」
「ああ、途中までは半信半疑だった。 だけど、最後に大きな勝負を仕掛けてきただろ。 最後に巻き上げるのはイカサマの常套手段だからな。 おれのまえにやってたやつが最初は勝ってたっていってた。 多分賭け事をあまりしないやつから巻き上げてたんだ」
「それで確信したのですわ」
「そう、ジェレミがなにもしてないなら、それなら札を配る男が何かしているってことだ。 だからカードの残りを調べてくれといった」
「それで見えない腕で引っ張ったのですわ...... それにしてもよくわかったですわ?」
「ジェレミ、あいつの目は卑怯ものの目だ。 おれは卑怯で怠け者だからな。 同じ思考をもつもの考えは手に取るようにわかるのだ」
「なにいばっているのですわ。 最低ですわ」
ミリアはため息をつくと顔をしかめていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます