第31話「病院の処刑人」

「がうがう! 見つけたぞ!」


 ディンは様々なセキュリティを突破して、クリス病院の最奥まで来ていた。


 明らかに厳重な扉、この向こうに聖者の針があるかもしれない。


 そう考えてディンが扉に触れようとした瞬間だった。


 絶対的な死を獣人の直感で回避した。


 ディンが後方に飛んで何が自分を襲ったのか確認すると、巨大な大鎌おおがまを持った黒衣の少女が立っていた。


「あ、あれ? 確実に死んだと思ったのに、なんで生きてるのですか?」


「がうがう! 生きてたら悪いのか?」


「悪いですよぉ! ボク、ここを守るように言われたのに……う、うぁぁぁん! 侵入者を殺せなかったよぉぉぉ! ボクはダメな死神だぁ!」


 死神、それを聞いてディンは、まさかと思った。


「がうがう、お前、ゴーストの中でも最上位のカオスゴースト『死神』なのか?」


「ふぇぇん、ボクの正体もバレてるぅ、ボクは死神の『ラカ』と申しますぅ。あ、あのぉ、ボクは何も見てなかった事にしますので、このまま帰ってくれませんか?」


「がうがう、嫌だ」


「うわーん! この後ガラハンお姉さんと飲みに行く予定だったのにー! 残業は嫌だー!」


 死神のラカは大鎌を構えてディンと対峙した。


「うぅ、カオスゴーストだから負ける事はないけど、でもボクの『絶死ぜっし』を避けられたからなぁ……でもやらないと怒られそう」


 瞬間、再びディンに向かって絶対的な死が迫って来たが、ディンはあっさり避けた。


「あーもう! 避けないで死んでくださーい!」


 ディンは避けながら思考する。絶死とはなんだ?


 それが目の前のラカの能力なのか?


 ディンは避けながらラカに打撃を叩き込んだが、手応えがない。


 カオスゴーストと戦うには僧侶を連れて来ないと勝てないのだが、ディンにそんな能力はない。


 隙を見て僧侶の獣人を召喚しようと考えたが、絶死の正体が分からない以上、下手に召喚して仲間を死なせるわけにはいかない。


「がうがう! まずは、その邪魔な鎌を破壊するのだ!」


ーー獣王拳『滅壊めっかい』!


「え? ぎゃあ!?」


 獣王となったディンの身体速度が見えなかったのか、ラカは簡単に吹き飛んだ。


 ここでディンはある違和感を感じた。


 大鎌を攻撃したのに、なんでラカ本体が体をくの字に曲げて吹き飛んだのだ?


「い、痛い〜」


「……がうがう、もしかして、その鎌が弱点なのか?」


「ぎくっ!? な、何のことでしょうか?」


 何となくラカの弱点が分かったので、ディンは僧侶の獣人を召喚した。

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