03 ほんと男の描く女の子像ってこんなんばっかしなのよね!! 描いてる本人自身が、さらいたい&救いのヒーローになりたいのダブル欲求を剥き出し満たしてるだけなんでしょ??

 あ!


 そう言えば、今になって思い出したんだった!


 このアニメのタイトルは「バリバリ★バリアフリーズ」だったことを!


 あたしにとって道徳の授業に次いでつまらないタイトルだったなって覚えがあったわ!!! 道徳の授業で面白いのは「さわやか3組」が観れるときくらいのもんよ!!!!


 にしても、なにを喰ったら「バリバリ★バリアフリーズ」という、そんなおもんねえタイトルをひねり出せるのか?


 あたしの声の主である脚本監督編集作曲声優宣伝の人とは一生分かり合えないこと請け合いである!!


 


 あれから、あの男ふたりに会わずに済むようになってからだいぶ時期は経ったが、オオクシがこちらにやって来るたびに、山の上のお空にぶっ飛ばして「バイキン城」送りにさせているので、実質会ってないようなもんである。 あああ⋯ドキンちゃんの「待ってよー」の空耳が聞こえてきた!! 懐か死ぬ!!


 オオクシは、あたしが「自身の声にコンプレックスを抱えてる」という情報をどうやって知り得たのか、エスパーなのか? スパイなのか、スパイウェアなのか、フィッシング詐欺なのか、ほんとまじで気色悪いいい!!


 多量に喉にいいグッズを自宅宛てにやたら贈りつけて来やがるので、今では宅配業者各社に彼からの荷物は全て受取拒否すると連絡したけどもな!!!


 ほんとまじでこんなやつは危険生物である! こんなやつを全年齢対象のアニメ番組に出していいはずがない!!! それが例え、BSCSでも、深夜であってもだ!!


 


 今では何が悲しいか、みんなの声を区別できるようになってしまったので、慣れというのはおそろしいものだああ!!


 あるアナウンサーがボイチェンを使って、百歳超えの女性アナウンサーという設定のキャラに成りきってた時に発するあんな声を世界中の人間が一人残らず該当していた世界に安心して住むことになったら、時期に慣れてしまうという。「人間というのは無駄に適応能力のある気持ち悪い生物なのだな」と、この世界に転生して来て学びを得たけどさーーーー!!!


 なんとも一切合切知りたくなかった学びだったけどなーー!!!!


 あたしは相変わらず男性の装いであり、転生前のカタギリちゃんが持ってた服を着ることがなくなり、それらは大事に収納しておいてあげたよ!! なんか申し訳ないじゃない!! あたしは彼女自身の身体ではあるが、精神的には「彼女は赤の他人」ではあるのだから!!


 あたしは以前のカタギリちゃんにとって、カタギリちゃんの身体を奪って操る性悪な悪魔みたいな存在なのだから、いずれ正気に戻った時を考えてのことだ!! 敢えて別人格であることを周囲に知らしめて暴れまわることが、彼女への救いだと信じているからで、それはカタギリちゃん自身のためでもあり、あたし自身のためでもあるのだ!!


 異世界転生の物語では、自身が転生者であることを勿体ぶって明かさないことで、本来うまくいくこともうまくいかない展開にさせては、終わらせないよう延命措置のあのカンジを、自分が目の当たりにしたくはなかったからだ!!


 はよ言えよ! はよ告れよ! はよ結婚せいよ! はよ歯磨けよ! そんなんばーーーっかり!!!!


 あたしは前世でも、自分に正直で生きたし、この世界でも同じように生きていきたいだけ!!!


 まぁ、そんなクソ長い前置きと振り返りと思ってることのぶつけ具合とか、永遠に続けても誰もうれしくないでしょ?


 


 ところで、最近聞いたこともない知らない女性の声をどこかで聞いたのだ。あの死ぬほど聞き慣れた監督声でない美しい女性の声だった!


 テレビだったかな? ラジオだったかな? まあどこだっていいや!!!


 あの妬み殺したくなるほどの美しい声に、自分の理性が飛んで行かないように、正気を保つのがやっとな日々だ! 早いところ居なくなんねえかな!?


 そうだ。この手のアニメにはゲスト枠があり、ゲスト声優が登場するというイレギュラーなことがたまに起きる!!


 あたしがよく好きで観てた「ポンコツクエスト」もそう言う回があって、声優だけでなく、芸人に声優させるなど豪華だなと思ったものだ!!


 このアニメは絶対「ポンコツクエスト」などの優秀な少数陣制作作品を観て、「こんなん俺でもできるわーー」と息巻いて、えっらそーにイキったクソ監督が考えたアニメだと言うことはなんとなく察せられるが、そういうのやめて欲しい! せめて自分にできる役割だけやってほしいのよ!!


 できないのだから作曲者表記しといて、BGM3曲以外は「ナッシュミュージックライブラリー」から持ってきてるのは、ほんと姑息な手段だから!! そういうチートみたいな技をやってる人も居るんだろうけどもね?


 あたしは初回しか観てないけど、その状況は初回から変わらなかったのか、だいぶ経ってもそういう書き込みをSNSで何度か見たし!!


 


 まあ、話は戻すけど、ゲストが声優ということは、今のあたし含めたこの監督声ではない声を発するという「しゃべる個性」が現れたということで、この世界で言うならばチート声という姑息で超ずるいやつだ!!なんて腹立つ!!しねよって思うよね!?


 視聴者からすれば、ゲスト声優枠のキャラというのは、豪華だし、特別視だし、さぞかし喜ばしいことだろうなあああ!!!!?


 しかしここは男性監督一人がボイチェンを駆使して、百歳のババア声にだって百種類あるんだぜ的な理論のバリエーションだけが頼りの世界であり、それが常識であるから誰もが違和感を持たない! 持たないのは前世で人並みの女性の声だった前世の記憶を持つこのわたしだけである!


 しかし、その違和感を思い知るための声の珍しき羨むべき人物が降臨するという要素とともに、そいつはレギュラー陣と仲良くなった良きところでもう二度と現れることもない。豪華タレントの起用であれば「今生の別れ」が発生する。


 のちに、あのとき好評だったからとか、そのアニメのファンだから友情出演だからとかで、再登場することも無くはないが、特別が続くと特別でなくなるため、せいぜい「今期(今シーズン)の別れ」になるだろうが、そんなレアケースなど羽振りが良い話など低予算のクソアニメには無い!!


 しかしながら、そうはならなかったと言うか、意外なことが発生したのである。


 そのゲスト声優の女性キャラ曰く、あたしが男性の格好で街を出歩き、すごく目立っているという噂を聞いたらしく「お会いしたい」と人づて連絡が来たのである!!


 はああああああああああああああ?


 おいおいおい! 近寄ってくんなよ! チート属性声が!!!


 貴女に対する憎悪の貯蓄預金がたんまりあるこんなあたしに会ってしまったら、過剰な嫉妬でそのほっぺた餅にして、焼いて食べちゃいたくなるなるほど憎いんだけどおおおおおおおお?


 まぁ、早く会わないと豪華なゲスト声優は去るのは先ほどの説明した通り、去っていくのは早い。どんなに妬ましき存在であっても、去ってしまう前に会ったほうが良いだろう。


 さっさとどこかの知らない国だか惑星に行ったきり登場してこなくなると言う都合の良い展開は、今ではもう若い子は知らないであろう某ご長寿ドラマみたいなものを彷彿とするのだけどーー?


 久々に戻ってきた時は素知らぬ顔で「ただいま帰って参りましたーー」と普段聞いたことのないバカに丁寧な言葉遣いと長ぜりふのバーゲンセールだったけな、あの鬼ドラマ。まあどうでもいいかこんな古臭い話。


 


 結局、タグチがあたしの連絡先を彼女に伝えていたことが明らかになり、これだから主人公キャラって「個人情報保護」の観点などありゃせず容赦がないのだなあと!!!


 なぜそれが明らかになったのかと言うと、アミカ氏の居る待ち合わせ場所に行ったら、主人公タグチと、もはや危険生物オオクシを引き連れてあたしを待っていたからだっっ!!! 何故居るうううううううううううう?


 ゲスト声優が喋る彼女の名前はアミカと呼ぶそうで、あたしが聴いたカンジでは、どこかのアニメの主役の声で聴いたことあるような若々しい女性声優たるような声だったと思うが、残念ながらあたしは声優オタではないので、名前など分かるはずもなければ、何の役を担当していたのかもさっぱり分からん!!!


 なにせ、あたしは声優にこれっぽちも興味ないしな!!! 声優知識がなかったところで、アニメ本編に差し障りなどあってたまるかあああ! まあ本編に声優知識の必要があるような声優オタのためだけのアニメもおそらくありそうかもね!! あるのか知らないけどさーーー!!


 うわああっ! 番組レギュラーって権力つええええええええ!!!! そんだけ権力あるならさぞかし悪さし放題なんでは???


(こんなところで、しゃれにならない時事ネタなど⋯! 全ッ然ッ! 笑えないんだけどー!? 何のこととは言わないけどー?)


 そう思いながら、あたしは喪黒福造よろしくというか、クローバーのスキマお埋めしますってカンジに、黒のスーツに中折ハットを被った格好で出向き、ハットを外して着席した。 ドーンとかやんないよ? あたしがやんなくてもロバートの秋山さんがやってくれるんでしょ? あー死ぬほどジョイフル行きたい! あたしはジョイフルで鶏料理だけしか頼まないけども!!


 この世界ではパロディで「シーシャモ」って、ジョイフルにそっくりなファミレスがあるのだけどさ! 今まさにそのファミレスに居るのだが、待ち合わせになぜこのファミレス?


 で、なぜ「シーシャモ」? ちなみに「じょいふる」を歌ったのは「いきものがかり」であって、「SHISHAMO」ではないのだけれど? うわーこの監督、いろいろとやべーな!! まじであたおかなアニメ監督だよっ!! 早急にほかされろ!!


 


「はじめまして、アミカですぅ! 本当に男装されているのですね! とってもお似合いですッ!」


 アミカ氏は両手を口に当ててウットリするようにこちらを観た。うぐぐっ! 女子だ! あたしより女子らしい女子が居る! くぅー!


 コーラルピンクのワンピースを着ており、ゆるふわな栗色の髪のまさに絵に描いたようなシンボルみたいな乙女がそこに居た。 そこから発せられて当然のような可愛らしい声!!


 その姿は、まるでこの前やった「蹴マリシスターズ」の元ネタのゲームで続編が出るたびに毎回さらわれるお姫さま系な装いである! ほんと男の描く女の子像ってこんなんばっかしなのよね!! 描いてる本人自身が、さらいたい&救いのヒーローになりたいのダブル欲求を剥き出し満たしてるだけなんでしょ??って、はっ倒したくなってくるほど、腹立たしいったらありゃしない!!!


 しーかーもー!! なんてかわいらしい声なの!!! んなああああ! にくたらすぃぃッ!! あたしが極悪非道の魔女だったならば、あなたの声を1000回保存して、1001回目の保存であたしの声にしたいッ!!!

 

「どうも。カタギリと言います。はじめまして。あたしにとってこのスタイルが日常ですわ? それにしても貴女の声!! 素敵すぎてうらやましすぎてつらいんだけど??」


 あたしってば、あまりのうらやましさに、真顔で本音を投げ飛ばすようにして差し上げた!! そもそもが、こんな監督声だったからこの格好になったんだけど? しかもおじさん声っぽいから喪黒福造あたりが丁度良いのではとなってきたんだけど? 別にオーホッホッホとわざわざ笑いませんけど??


 


 しかし、彼女はこのあと意外なことを言い放ったのだ!!!


 アミカ氏は、口元を手で隠しながら。


「わたし、その⋯ 前々から、あなたの声やりたかったのです⋯。 あなたの声になれるよう、かっこよく演じたいですね!」


「な、どういう? えええええええええ?」


 この時の叫びによって、突然あたしの声が変化した。 なにこれ? どういう仕組みよ??? どうしてそーなんのよ!!?


「ふぇええ?! あっ! 声がキレイに⋯」


 その可憐のある女声が自分の口からでたことで、あたしはこの異変に精神が追いつかなかった。


 なんなのよこの世界は? あたしがぶっ壊そうと決意表明した以前に、とっくにこの世界って相当ぶっ壊れてんじゃん!?


 このアミカ氏とあたしは同じ女性声優の声になったと思われるのだが、アミカ氏とは少し系統が違う。妙にハスキーかかったカンジに演じ分けられているのだが、声優さんってこんなにもすごいなと関心させられたが、よりにもよってアニメの中の世界で関心することになろうとはな!! 全ッ然ッ! 意味わからない!!


 でもこういう展開は突然すぎるでしょ!! こんな展開がもし小説だったらクソすぎるでしょ!! 理解に苦しむ理屈だからだ!


「カタギリさんの声が変わった! すごく合ってる! アミカさんとお会いして良かったじゃん!」


 あれからタグチくんは、あたし転生前はカタギリちゃんで、あたし転生後はカタギリさんと、律儀に区別して呼ぶようになったらしい。 ほんと主人公って物分り良いよね。 主人公補正による性格イケメンすぎて悔しいのだけど! おい見習えよ! そこの危険生物!


「ややや!! いいですねえ! いいでヤンスねー! この愛らしい声で、アッシはますますカタギリちゃんの虜でヤンスァー!!」


 なんとなく誰でも想像通りザコキャラたるや所以のつまらんセリフすぎたので、あたしからは特になにも言うことも頷くこともなく、シカトして、話を続けることにしてやった。


「どうして、あたしの声を? 大人な話的に毎回出演してギャラとか大丈夫なんですか?」


「この回から、その⋯。女性キャラ全員を担当することになったので、それは大丈夫みたいですよ。」


 すると、アミカ氏は耳打ちを促すようにあたし顔に近づいてきたが、あのクソアニメ監督とは言え、女の子の顔はかわいい。あんなおっさん声なのに!!


「今まで男みたいな声で嫌だったでしょ? わたし担当の声優があなたの男装姿を見て⋯」


 顔が近いアミカ氏が、癒やしのある満面の笑みであたしを見つめてきた。


「あ、わたしはフリーで声優をしております、カワムラ・カオルーンと言います。監督に連絡して交渉を──。」


 その声は、彼女の素の声なのだろう。アミカ氏やあたしの声とまた違う、ごく普通の大人女性の声だった。


 


 え?


 じゃあ、アミカ氏 イコール 女性声優?? カワムラ・カオルーン どゆことーーーー?


 カワムラ・カオルーン? なんか聞いたことある⋯前世のポッドキャストで、そのひとのラジオがあったような⋯ないような⋯もう前世の記憶が遠い──。


 どうして、声優がアニメ世界の登場人物とこうやって介入できるのか? あたしには理解不能だったのだ。だって普通に考えてそんなこと、なるかああって!!!


 確かに、いつだっけ? 「せめて男女二人で揃えろや!!」って、言っていたけども、⋯⋯こうも早く望み通りにはなるとは思わなかったわ!!


 あたしは、一人の良き女性声優、カワムラ・カオルーンさんによって、とても救われた気がした!!


 ありがたい!! 感謝っ⋯! 圧倒的感謝っ⋯である!!


 これは感謝していかないといけない⋯。そう思うと少し目が潤んできたので、顔を両手で隠した。


 あたしがこんなごときで泣くだなんて!! 無様すぎ!! 弱すぎ!!!


「あたしぶっちゃけ⋯。実は男の声だからって思って男装してたんだけどーー。これなら女性らしい格好もしようかなと」


 あたしは潤んだ涙を手の中に隠すように、拭いながら顔をあげて起立してやった。


「あの! アミカさん!! あと みんなありがとうーーー!!」


 あたしはみんなには泣いてると思われないように、とびっきり元気に感謝してやった!! しかしアミカ氏的には、不正解の選択肢のような表情をされた!! あたし、どこを間違えた??


「えー! もっと男装を見せて下さいよーー! 眼福です! 眼福!! 是非わたしとお友達になってください! だって、わたしと同じ声ですから!!」


 この「同じ声ですから!」ってセリフどうなのよ⋯! 声優としてその発言はどうなんだよ!!


 わたしは、この世界にはいろいろと言うか、全てに対して思うところはあったけど、でもこういう出逢いがあって、大きな変化があるならそんなに悪くはないなと少し思ってしまった!! 悔しい⋯!! 悔しい⋯!! だがそれでいい!!


 それから、女子トーーークが捗っていったわけなのだが⋯。


「ところで、カタギリさんって、下のお名前なんですか?」


「ハナです。 この男装でらしくないでしょう? アミカさんの苗字は?」


「いえいえ、とてもおかわいらしいお名前ですッ! わたしはウエブです。 上に音符の符って⋯」


「珍しい苗字なのですね⋯ あたしそんな苗字初めて知りましたよ⋯」


 あたしたちの女子トークをこそばゆい顔して、聞き耳立ててるそこの男子たちは、やけに静かであったことは言うまでもない!


 ちょっと男子ーーって、前世も今世も何度思ったことか測りし得ないが、これからもずっとそう思うのだろう。


 


 むしろ、このアニメ監督がまず筆頭だろうがな!!!!


 


 てか、この男どもなにし来た? もうレギュラー降りろよ! タコども!


 主人公とかレギュラーとか権力振りかざして、気取るなら、なんかしゃべれや!! 役立たず!!


 まあ、一人の男性監督声の男子たちのトークよりも、一人の女性声優が演じ分けられた二人の女子トークのがウケいいだろうね? だから黙ってるのか、この男ども!! 職務怠慢だし! 変態反対!!


 はあ⋯。それにしても、貼り付けた笑顔で女子トークってちょー疲れるわああああああ!!!!


 こんな世界、あたしが、ぜーーんぶ、ぶっこわーーーーーーすっ!!!

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